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母の羽の下で――ある雛の話  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


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第三話「声を覚えた」


声があった。


温かさには、声があった。


雛が声を出すと、温かさも声を出した。



温かさの声は、低かった。


柔らかかった。


繰り返した。


同じ音を、繰り返した。


雛はその音を聞いた。


聞き続けた。



雛も、声を出した。


温かさの声と、違う声だった。


高かった。


細かった。


しかし出した。


温かさが、また声を出した。



それが続いた。


温かさが声を出す。


雛が声を出す。


温かさがまた声を出す。


会話ではなかった。


しかし、音が行き来した。



腹が減ると、雛は声を出した。


大きな声だった。


すると、温かさが動いた。


外へ出た。


しばらく、温かさはなかった。


雛は待った。



温かさが戻ってきた。


くちばしが来た。


何かが来た。


柔らかいものだった。


温かいものだった。


雛はそれを飲み込んだ。


腹が満ちた。



また声を出した。


また来た。


何度も来た。


温かさは、何度来ても来た。


来ない時はなかった。



夜になった。


温かさが戻ってきた。


羽の下に入れられた。


雛は眠った。


温かさの声が、低く、繰り返した。


その音を聞きながら、眠った。



(第三話 了)

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