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好きな人には、好きな人がいて。  作者: 座闇 びゃく


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1 片想い

■□■□




 静まった校舎から外に出ると、生暖かい空気が頰を撫でた。茜色の空には、夕陽がきらきらと浮かんでいる。

 

「あ、凪先輩お疲れ様です」


 筆を片手に持った後輩が、会釈をして校舎へと消えていく。部室に向かったのだろう。

 凪は正門を通るため、グラウンドの横を通り過ぎる。野球部のボールを撃ち飛ばす金属音と共に、話し声が聞こえてきた。

 視線を向けると、ジャージ姿の女子生徒たちが、地面に座っていた。


「月島のやつ、また後輩から告られたらしいよ」


「え!? 後輩って中一? 中二?」


「中二だって。でも振ったんだってさ。好きな人がいるからって」


「水菜は彼氏とか作らないの?」


「私は別に」


 水菜と呼ばれた少女に目を向ける。

 白い素肌に、くるりとした瞳。夕陽に赤く彩られた頰。

 後ろで縛られた髪の毛が、風に揺れている。

 

「えー? 月島の好きな人って絶対水菜じゃん」


「それな! どうなの水菜?」


 水菜は、頰を赤く染めて視線を下に向けた。きゃー、と黄色い叫び声が湧く。

 凪は、小さくため息を吐くと、帰ろうと足を踏み出す。


「月島告ればいいのに。水菜と両思いじゃん」


「水菜は月島に告られたら付き合うの?」


「し、知らないし」


「誤魔化すなー!」


 水菜は立ち上がる。白い線で引かれているレーンの中まで駆け足で行くと、グランドを走り出した。

 風に煽られた髪の毛が、揺れている。地面を蹴り上げ、一生懸命腕を振る。太陽の下でなびく姿は、堪らなく綺麗で。

 息を吸うと、肺がちりちりと痛む。凪は拳を握りしめると、その場から立ち去った。

 『片里水菜』。

 中学三年生。女子。毎日教室で顔を合わせている、クラスメイト。

 そして――凪が想いを寄せている生徒。

 だが、この恋は、決して実らない。

 空を見上げると、灰色の雲が渦巻いている。今にも雨が降りそうだった。

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