1 片想い
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静まった校舎から外に出ると、生暖かい空気が頰を撫でた。茜色の空には、夕陽がきらきらと浮かんでいる。
「あ、凪先輩お疲れ様です」
筆を片手に持った後輩が、会釈をして校舎へと消えていく。部室に向かったのだろう。
凪は正門を通るため、グラウンドの横を通り過ぎる。野球部のボールを撃ち飛ばす金属音と共に、話し声が聞こえてきた。
視線を向けると、ジャージ姿の女子生徒たちが、地面に座っていた。
「月島のやつ、また後輩から告られたらしいよ」
「え!? 後輩って中一? 中二?」
「中二だって。でも振ったんだってさ。好きな人がいるからって」
「水菜は彼氏とか作らないの?」
「私は別に」
水菜と呼ばれた少女に目を向ける。
白い素肌に、くるりとした瞳。夕陽に赤く彩られた頰。
後ろで縛られた髪の毛が、風に揺れている。
「えー? 月島の好きな人って絶対水菜じゃん」
「それな! どうなの水菜?」
水菜は、頰を赤く染めて視線を下に向けた。きゃー、と黄色い叫び声が湧く。
凪は、小さくため息を吐くと、帰ろうと足を踏み出す。
「月島告ればいいのに。水菜と両思いじゃん」
「水菜は月島に告られたら付き合うの?」
「し、知らないし」
「誤魔化すなー!」
水菜は立ち上がる。白い線で引かれているレーンの中まで駆け足で行くと、グランドを走り出した。
風に煽られた髪の毛が、揺れている。地面を蹴り上げ、一生懸命腕を振る。太陽の下でなびく姿は、堪らなく綺麗で。
息を吸うと、肺がちりちりと痛む。凪は拳を握りしめると、その場から立ち去った。
『片里水菜』。
中学三年生。女子。毎日教室で顔を合わせている、クラスメイト。
そして――凪が想いを寄せている生徒。
だが、この恋は、決して実らない。
空を見上げると、灰色の雲が渦巻いている。今にも雨が降りそうだった。
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