第五話-1:頼りになるヤツ
目を覚ますと、真っ白の知らない天井が広がっていた。
どうやら、ベッドに寝かされていたようだ。
周りを確認しようと体を起こすと、体の節々が痛む。
迷宮に潜っていた時は気づいていなかったが、どうやら落とし穴で落ちた時に相当痛めていたようだ。
やっとの事で体を起こすと、ノエインとイオスが椅子に座っているのが見えた。
ノエインはイオスに懲らしめられたのだろう。
ブッサイクな顔になっている。
それともう一人、誰か分からないが鎧をつけた青髪の青年が立っているのも見えた。
僕が体を起こしたことに気づいたのか、二人が駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか!?ノエインから一人で潜ったと聞いて驚きましたよ!!」
「…殿下、ご無事で何よりです。イオスには説明しておきましたので…ご安心を。」
僕はノエインがボコボコにされている方が驚きだよ。
助けに来てくれた時のカッコ良さが何処かへ行ってしまっているじゃないか。
まぁ、そんなことよりそちらの方は誰かな?
僕が目をやると、一礼して丁寧な挨拶をしてくれた。
「お初にお目にかかります。迷宮都市テオの衛兵長を務めております、ノクスと申します。」
「こいつも元冒険者でねぇ、俺の後輩なんですよ?」
へぇー、元冒険者なのか。
…ノエインが今30歳ぐらいじゃなかったか?
それなのに衛兵長って出世早すぎじゃ?
疑問に思ったが、ノエインが教えてくれた。
どうやら冒険者だけでなく、この街全体が基本的に実力主義らしく、衛兵長は衛兵全員を倒して衛兵長に就任したらしい。
そんな人がなんの用だろうか?
「あなたと共に救助された彼女に関してお聞きしに来ました。」
あーなるほど…。
というかこういうのはギルドの仕事じゃないのね。
僕は経緯を全て事細かに説明した。
「ふむ…嘘はついていないようですね。ご協力ありがとうごさいます。
しかし…三人組は逮捕が難しいかもしれません。」
ノクスは少し残念そうに話す。
まぁ捕まえられないのは仕方ないだろう。
僕が顔を覚えていたとして、この迷宮都市から三人組を探し出すなど不可能に近い。
「それでは、私はこれで。」
ノクスは僕に一礼して、部屋を出ていった。
ふぅー、と僕はベッドに倒れ込む。
別に悪いことをした訳ではないのだが、取調べを受けてガチガチに緊張してしまった。
「そういえば、あの子は!?」
ふと思い出し、僕はガバッと体を起こす。
…が、一気に動いたせいで体が悲鳴をあげ僕は思わずうずくまった。
「隣にいますよ、まだ目は覚ましていませんが。」
イオスはそっと、仕切りを開ける。
そこには、僕が助けたあの少女が眠っていた。
だが彼女の金髪は酷く痛み、あちこち包帯が巻かれており痛々しい姿だ。
「自分のことを顧みず助けたこと、誇りに思ってください。」
僕が落ち込んだのを見て、イオスはそういった。
イオスなりに僕を励まそうとしてくれたのだろう。
だが、僕にはそうは思えなかった。
僕がもっと強ければあのカマキリなんて一撃で屠れただろう。
何より、彼女をこんな目に合わせたやつもとっちめられたに違いない。
自分の情けなさに涙が出てきた。
「これから強くなればいいんですよ。」
ノエインがまた僕の頭を撫でながら言った。
僕は、小さく頷く。
もう二度と…後悔しないために。
「そういえばあのバカ、【真実の証明】って魔法をこっそり使ってたんですよ?信じられませんよね?」
覚悟を決めたあとにとんでもない爆弾を投下された。
あの衛兵長、やはり油断ならないぞ。
──────────
夜になり、宿に戻った僕は眠れずに夜空を見上げていた。
ちなみに助けた彼女はまだ目を覚まさないのでギルドで預かるらしい。
彼女はこれからどうなるのだろうか?
僕が心配することではないのだろうが、やはり気になって仕方ない。
モヤモヤする気持ちを吹き飛ばそうと、僕は魔法で夜空へと羽ばたく。
春の少し肌寒い風を受けながら、迷宮都市を見下ろす。
この都市は夜でも活気がある。
あちこちの建物から灯りが見える、眠らない都市。
それを夜風に当たって見ていると、僕の悩みは大したことないように感じられてくる。
僕が悩んでいたところで、彼女がどうにかなる訳でもない。
さっさと宿に戻ろうと街に降りようとした時、見覚えのある連中を見つけた。
彼女を突き落とした、あの三人組。
僕の悪いクセだ、考えるより先に体が動いていた。
三人組に向かって一直線に飛び、勢いそのままに無警戒の相手に背中から蹴りを入れる。
僕が蹴りを入れた一人は見事に吹っ飛び、民家の壁にぶつかって動かない。
残る二人が振り向き、ナイフを引き抜く。
「なんだテメェ!ぶっ殺してやる!」
「こいつ…昼間の迷宮にいたガキだ!」
どうやら相手は僕のことを覚えていたみたいだ。
僕を殺そうと必死に向かってくる。
返り討ちにしてやる!そう思ったとき、一つ問題に気がついた。
「…ダガー忘れた。」
僕が投げ捨てたダガーはノエインが拾っていたらしく渡してくれたのだが、宿から出る時に持ってくるのを忘れていたのだ。
まさか外で戦うなんて思っていなかったし、今は防具すらつけていない。
何も持ってきていないことを思い出した僕は、迫り来る二人の攻撃を何とか躱す。
(何とかしないと…)
そう思っていたが、突如後頭部が痛む。
あまりの衝撃で、思わず地面に倒れ込んでしまった。
(何が…)
何とか把握しようと辺りを見渡すと、最初に吹き飛ばした一人がいないことに気づいた。
僕は倒したと思っていたが、どうやら勘違いだったようだ。
「よくもやってくれたな、このクソガキめ!」
ちくしょう…しくじった。
薄れゆく意識の中で完全な判断ミスだったと後悔した。
こんな…こんなクズどもにやられるなんて!
ここで僕は意識を失った。
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