第五話-2:頼りになるヤツ
どれぐらい気を失っていたのだろう…。
後頭部がズキズキする。
どうやら、椅子に縛り付けられているみたいだ。
頭をあげると、例の三人組の中の一人がいた。
「うっ…ここは?」
「起きたか、クソガキめ」
どうやら相当お怒りな様子。
まぁ当たり前だ。勢いつけて蹴った挙句、壁に激突してたのだから痛いに決まっている。
そしてそんな原因を作った、縛られて動けない僕。
うーん、これはボッコボコにされますね。
僕が逆の立場でも、絶対に生かして帰さない。
どうやら僕は個室に閉じ込められているようだ。
周囲に窓はなく、石壁とこいつの後ろにドアが一つあるだけ。
こんなチンピラと二人っきりとか嫌なんですけど。
だが、今の僕に出来ることはノエインとイオスが助けに来てくれるのを待つばかり。
ここが何処かも分からないしいくらノエインでも僕を探し出すなんてことは探し出すことは困難だろう。
おそらく迷宮都市内ではあると思うので、しらみつぶしに探してくれたらいつかは見つけてもらえるだろう。
「お前、皇子なんだってな?身代金がたっぷり取れそうだ。
殺すのは金を受け取ってからにしてやる…よ!」
顔面に一発、もろにパンチを食らってしまった。
パンチの衝撃で何処か傷ついたのだろう。
鼻からボタボタと血が流れ、頭はクラクラしてきた。
だが、彼らがお待ちの身代金なんて用意出来るはずがない。
僕は強引に飛び出してきて冒険者になったのだ。
そんな僕にわざわざ身代金出してくれるほど父は優しくないだろう。
ノエインとイオスは大金持ってるとは思えない。
ノエインは自分への投資は惜しまないし、イオスは食費で消えてそうだ。
第一、払ったところで帰してくれると二人は思わないだろう…。
…あ、イオスは抜けてるとこあるから思うかも知れない。
まぁ実際、こいつらは生きて帰す気ないけど。
(あっ、ちょっとマズイかも…)
僕は昼間、迷宮に潜ったときにかなり血を流していたのが原因だろう。
どうやら貧血気味なようで、意識が朦朧としてきた。
(丁度いい、このまま起きていてもいいことは無さそうだ。)
僕は意識という綱から手を離し、暗闇に沈んでいった。
──────────
「敵襲!敵襲ー!!」
「お前ら、酔っている場合じゃないぞ起きろ!!」
ザワザワと声が聞こえる。
たまに聞こえる怒声に鼓膜を破壊されそうになる。
どうやら気絶している間に何かあったらしい。
僕も何とか動こうとしたが、やはり縛られていて動くことは出来ない。
そんななか、一人がドアを強引に蹴破って入ってきた。
「さっさとこいや、このクソガキ!!」
…いや、縛られてるから動けないんですが。
そう思ったが口に出すのはやめておいた。
ここで機嫌を損ねても殴られるのがオチだろう。
どうやらここは地下室だったらしく、チンピラが僕を担いで勢いよく階段を駆け上がる。
そして乱暴にドアを開け、外に出るとチンピラが言った。
「こいつの命が惜しければ俺たちを見逃すんだな!」
どうやら僕を人質にして強引に突破するつもりのようだ。
見えるだけでイオスを筆頭に衛兵たちが何十人と取り囲んでいる。
その中には先程出会った衛兵長もいた。
どうやったのかは知らないが、助けに来てくれたみたい。
だが、僕は圧倒的な違和感を感じた。
ノエインの姿が見当たらないのだ。
ノエインがノクスは後輩だと行っていた。
もしノエインが彼を頼ったのならばいなければおかしい。
だいたい、イオスが来ているのにノエインがいないというのは随分とおかしな話だ。
「おい、早く道を開けろや!」
チンピラがうるさく騒ぐ。
だが、パーンという乾いた音が聞こえた次の瞬間彼の頭が吹っ飛んだ。
これは間違いなく狙撃。
しかし、この世界の銃は基本的に使い物にならない。
というのも魔法で身体強化が出来てしまうので、対モンスターにはほぼ効果がなく、対人ですら上位層の冒険者ならば撃つ前に倒せてしまうのだ。
そんな訳で、銃を持っているものは少ない。
そんな貴重なもので、誰がどこから?
担いでいたチンピラは僕を離すことなく倒れ込む。
僕は巻き添えで地面に直撃することを覚悟し、目をギュッと閉じていたが痛みが来ない。
むしろ、柔らかい感触が伝わってくる。
そーっと目を開けるとイオスと目が合った。
地面に直撃する前に、イオスが抱き抱えてくれたみたい。
「人質の心配は無くなった。総員、突撃せよ。
一人も生かすな。」
衛兵長の号令で、何十人といる衛兵たちが僕の隣を駆け抜けて建物に突撃していく。
そんな中、遠くからノエインが駆け寄ってきた。
僕はまた、彼に助けられてしまった。
助けられるのはこれで何度目だろう、もう数えきれない。
「本当にありがとう、助かったよ。」
「言ったでしょう?もっと頼ってくださいと。私はあなたの騎士なのですから。」
フフッ、もっと自慢してくれてもいいのに。
衛兵たちが出張って来ているのならもう僕たちが手を下すまでもないだろう。
帰ろうとするとイオスにノエイン共々座らされた。
どうやらずっと蚊帳の外だったことがお気に召さなかったらしい。
小一時間説教を食らってしまった。
しかも、ノクスが助けに入ってくれてこれなので助けて貰えなかったらとんでもないことになっていた。
ありがとうノクス、君は良い奴だね。
勝手に怖いと誤解してたよ。
だが、彼女の言うことが間違っているわけではない。
たしかに彼女は食いしん坊で、ポンコツな面もあるが実力は確かなのだ。
今度から、もう少し彼女にも頼ってみよう。
立ち上がると夜明けの光が見える。
本当に…長い一日だった。
「さぁ…帰ろうか?」
「「はい、殿下!」」
どうやら機嫌は直ったようで、元気な返事を聞いた僕は宿へ歩いて帰ろうと歩き出した。
…何も考えないのが本当に僕の悪いところだ。
帰り道が分からなかった。
「殿下、もしかして道が分からないのですか?」
「…うん。」
「では、私が道案内しますね!」
頷くしかない、ここが何処か分からないのだから帰り道が分からないし。
カッコつけられると思ったのになぁ…。
イオスのあとをついて歩いていく。
僕の隣には殴られすぎて顔面が膨れ上がったノエインが一緒に歩いてくれている。
「ありがとう、僕のことを庇ってくれたんだよね。」
ボソッとイオスに聞こえないように呟く。
彼は何も言わなかった、なので勝手に庇ってくれたのだと解釈しておく。
「もう夜明けなので、このまま寝ずに朝食にしませんか?」
「いいねぇ…僕もお腹が空いていたんだよ!」
「…相変わらず食いしん坊だな。」
ノエインが余計なことを言うものだから、またイオスが怒っている。
だが、こんな光景を見ていると日常に感じられて思わずクスッと笑ってしまった。
今日は本当に色々起こった。
一歩間違えば生きて帰れてなかっただろう。
本当に…何気ない日常のありがたさを噛み締めつつ、僕は二人の腕を引く。
「これからもよろしくね、二人とも!!」
「…はい、殿下。」
本当に、二人は素晴らしい…。
こんな僕にはもったいない騎士だ。
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