第三話:頼れる仲間
警戒しながら二階層に向かっていた僕たち三人はなんということはなく、二階層への階段に辿り着いた。
「最初の一匹だけだったね。僕の強さに恐れをなして逃げたんじゃない?」
「ゴブリン共が使ってる棍棒やナイフが落ちてました、先行している他のパーティが倒したんだと思いますよ。」
相変わらずノエインはつれないやつだ。
面白みの欠片もない。
「でも、ゴブリンを倒した時の一振りはお見事でしたよ?」
不貞腐れた僕を見て、イオスが優しくフォローしてくれる。
僕みたいに潜ってすぐモンスターを倒せる人もいないだろう、もっと褒めて欲しい。
僕は褒められて伸びるタイプだ。
ついでにそのまま膝枕してヨシヨシしてくれると最高だけどね。
そんなことを妄想していると、イオスが少し遅めの昼食にしないかと提案してくれた。
僕はもちろん賛成、ノエインは危険を減らすため、階段前ならとしぶしぶ許してくれた。
たっぷり?運動してお腹も空いていたのでこの食事休憩はありがたい。
早速僕はバックパックを降ろし、近くのちょうど良さそうな岩に腰掛ける。
そんな僕を尻目にイオスはどこからともなく紅茶セットを取り出している。
あれ?ここ迷宮だよね?
冒険者が迷宮で優雅に紅茶を飲むなんてことは聞いたことがない。
だが、突っ込んだところで勝てる気がしなかったので見なかったことにした。
ノエインはというと、右手に刃渡り20cmほどの短剣を持ちながら左手を魔法袋に突っ込み、中から僕とイオスの分のサンドイッチを取り出している。
サンドイッチはトマトとレタス、それにハムが挟んであるみたい。
僕は食べるのは初めてだが、もう既に楽しみだ。
迷宮で軽食だなんて、冒険者の食事そのものだろう?
ノエインは見張りをするつもりのようだ。
まぁ、全員が休憩して全滅なんて洒落にならないもんね。
僕はノエインから手渡されたサンドイッチに早速かぶりつく。
「…美味しい!こんなみずみずしいトマトとレタスは初めて食べたよ!」
あまりの美味しさに思わず叫んでしまった。
いつも食べていた食事といえば、冷めたスープやシナシナのサラダだった。
まぁ、毒見もあるので仕方ないことではある。
味付けは何もない、強いて言うならハムの塩味が味付けだろうか。
シンプルだが、迷宮で食べているという最高のスパイスがさらに味を引き立てている。
そんなことを考えていると、あっという間に食べ終わってしまった。
すると、見計らっていたかのようにイオスが紅茶を渡してくれる。
ほのかに香るいい匂いを堪能しつつ、紅茶を一気に飲み干す。
「ふぅー、美味しかった。」
そういやイオスは食べたのだろうか?
僕だけ食べてしまっていたのではないかとイオスの方へ目をやると、サンドイッチでは飽きたらなかったのだろう。
串焼きを両手に三本ずつ持ち、頬張っていた。
「み…見ないで下さい!」
イオスはどうやら見られたくなかったようで、食べ終わって近くに置いていた串を投げつけてきた。
風切り音をたてながら串は僕の頬を掠めた。
掠めたあとから、血がつたって僕の手の甲に落ちる。
イオスを怒らせないようにしよう。
僕は深く心に刻んだ。
ちなみにノエインは彼女の大食いを知っていたが、見ないふりしていたのだとか。
こんなに大事なことは教えて欲しかった。
──────────
食事を済ませた僕たちは二階層へ到達。
ちなみにだが、ノエインは階段を降りている間に干し肉を頬張っていた。
イオスが干し肉を狙ってヨダレを垂らしていたが、ノエインは気付かないフリをしてさっさと食べてしまった。
イオスは残念そうに諦めていたが、サンドイッチだけでなくいつの間にか買っていた串まで食べていたというのにまだ食べられるみたい。
干し肉一つで済ませているノエインを見習って欲しいものだ。
そんなことを考えつつ三階層に向かって歩く。
ノエインが先頭、僕が真ん中でイオスは最後尾で後方からの奇襲に備えている。
ちなみに三階層までも一本の道が続いているので楽だ。
なぜ道があるのかと不思議に思っていたが、他の冒険者たちも同じところを歩くため、獣道と同じように自然と道が出来ているらしい。
イオスがコソッと教えてくれた。
いつも通りの優しいイオスに戻ったようで良かった、まだ怒っているようなら食べ物で機嫌を取らなければならないところだったからね。
そんな、下層まで続いている道を歩きつつ、偉大な先人たちもここを通ったのかと思うとワクワクしてくる。
だが、やはりここは迷宮。
妄想もさせてくれないらしい。
四方からゴブリンの群れが襲いかかってきた。
前から五匹、後ろからは3匹。
「皇子、一匹は任せましたよ?」
最後まで言い切らずにイオスが飛び出して言った。
いつの間に抜いたのか、イオスの右手には青白い光を放つ剣が握られている。
そんな僕は慌ててダガーを構える。
もちろん、今度は片手で強く握っている。
さすがに二度も同じミスをするほどアホじゃない。
僕は後ろから来るうちの一匹と対峙した。
今度の相手は右手にナイフ、左手には木で出来た盾を装備している。
ゴブリンが鋭い牙を見せつけて威嚇してくるなか、ジリジリと間合いを詰めていると後ろからノエインの声が聞こえた。
「氷結する剣」
ノエインは短剣を構えつつ、魔法を唱える。
すると、空中に何本もの氷で出来た剣が現れゴブリンたち目掛けて飛んでいく。
あっという間にノエインは五匹いたゴブリンを片付けてしまった。
「僕も負けていられないな!」
覚悟を決め、ゴブリンに向かってかけ出す。
ゴブリンはカウンターを狙っているようで、体を盾ですっぽりと覆う。
だが、そんな見え見えのカウンターに乗ってやるほど僕はお人好しじゃない。
「どりゃー!」
『グギャァア!!』
こちらから盾で見えないならゴブリンからも見えないだろうと、僕は突っ立ってたゴブリン目掛けて飛び蹴りした。
ゴブリンの体重は僕の半分ほどなので耐えられなかったようだ。
僕の蹴りは木で出来た盾を真っ二つに折り、見事にゴブリンを吹っ飛ばした。
僕はサッと立ち上がり、ゴブリンを追撃する。
ゴブリンはどうやら吹っ飛んだ衝撃でナイフが飛んで行ったようだ。
起き上がるのもようやくといったゴブリンの胸元に僕はダガーを突き立てる。
ゴブリンは最後の抵抗をしようと腕を伸ばしてきたが、反撃する前に息絶えた。
「今の蹴り、お見事でした。皇子にはどうやら戦闘センスがありますね!」
「俺は見ててヒヤヒヤするから辞めて欲しいけどな。」
後ろからイオスとノエインがそんなことを言っていた。
僕からすれば二人にはまだまだ及ばないが、少しでも近づけただろうか?
そんなことを思いつつ振り返るとイオスは返り血を浴びて真っ白な鎧が台無しになっていた。
もう少し気を使って欲しい、なんて思いつつ僕はゴブリンの胸元から魔石を取り出すために切っては取り出していった。
ちなみにノエインが倒したゴブリンたちは氷のせいで取り出すのが大変かと思ったが、ノエインがものの数秒で取り出しているのを見て技術の差を痛感することになった。
何はともあれ、パーティはやはり一人とは違い頼りあえる。
そこが素晴らしいと改めて感じる戦いだった。
僕一人なら逃げるのがやっとだっただろう。
今のままなら英雄なんて夢のまた夢。
やはり、まだまだ鍛えなければならないようだ。
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