第11話:強力な味方-3
階層を駆け上がり地上を目指す僕たちだが、モンスターの殲滅に加えてすべきことがある。
それは、道中のあちこちにいる冒険者たちの手助け。
下層でモンスターたちが食い止められているのなら、助けた方が良い。
もし、モンスターが上がってくるのなら助けてもすぐに蹂躙されてしまうが…一部でも助ければその冒険者たちが他の冒険者たちを助ける好循環が生み出せる。
今はとにかく人手が足りない、見て見ぬふりをしておいて助けるなんて身勝手な話ではあるのだが…。
覚えていないことを祈ろう。
「冒険者たちは仲間が助けるので、我々は道中のモンスターを片付ける程度にしましょう。」
「そうだな…地上も心配だしな。あの数をノクスだけでは対処出来ないだろうし…。」
「殿下、人より自分のことを心配してください。今溢れてきているモンスターは殿下より強いですよ?」
たしかに人より自分のことを心配した方がいいかもしれないな。
そして、ノエインとネロはやはり知り合いなのだろうか?
話の節々からお互いに信用し合っているように感じられる。
その時、草原を駆け抜ける僕たちを大きな衝撃が襲う。
「…っ!これは…地上からか!?」
「地上はかなりまずい状況かもしれませんね…我々Sランクパーティーが大勢出払っていなければこんなことには…。」
「ネロさん、悔やむ必要はありませんよ?」
ネロは下唇を噛み締め、冷静沈着だった顔が赤く染まっている。
そんなネロにイオスはそっと囁くように宥めるが、あまり効果は無さそうだ。
「頼むから、無事でいてくれよ…!?」
僕は祈ることしか出来なかった。
──────────
地上に戻った僕たちの目に飛び込んで来たのは、広場を囲う衛兵と冒険者たちだった。
『人だ…モンスターじゃないぞ?』
『もうモンスターは上がってこないのか?』
僕たちを見た冒険者たちは驚いているようで、目の前の光景に信じられないといった様子だった。
「私は信念を貫く者たち副リーダーのネロ。誰か、今の状況を説明してくれ!」
「ネロさん、私から説明しましょう。」
人を掻き分け奥から出てきたのは衛兵長だった。
ヨタヨタとおぼつかない足取りではあったが、彼の鎧は返り血で赤く染まり激戦であったことを物語っている。
だが、鎧にはそれほど目立つ傷が見られなかったのでモンスターたちを圧倒していたようだ。
「現在周辺のモンスターは討伐、しかし残党が市街地へ散りました…。」
ノクスは申し訳ないと頭を下げ、暗い声で報告する。
だが、僕は彼に責任があったとは思えない。
たしかにモンスターが一部逃げたのは問題だ。
だが…彼自身全力を尽くした結果だと思う。
そう確信した理由は…彼が頭を下げた時、背中がバッサリと斬られていたから。
「僕はノエインと残党狩り、イオスとファロスは負傷者の手当を頼む。」
「私もお供致しますよ、殿下?」
ネロもついてきてくれるようだ。彼の実力はよく知らないが、おそらく圧倒的に強い。
ファロスがイオスに抱えられ、衛兵の案内で救護所に走り去ったのを見届けると僕たちも動き出す。
「諸君!
下層でSランクパーティーたちの奮闘により、モンスターによる侵略はこれで終わりだ!
余裕のある者のみ残党狩りに協力してくれ!」
ネロはその細い体のどこから張り上げているのか分からないほどの声量で話す。
彼に拡声器は必要ないな…と考えていると、包囲していた冒険者たちはお互いに顔を見合い、少しの沈黙の後歓声をあげた。
『やったぞ!勝ったんだ!』
『さすがSランクパーティーだ!』
周囲の冒険者たちが歓声に湧く中、僕たちは残党狩りに出ようと歩き出すと、ノクスに呼び止められた。
「三人とも、私も連れていってください。魔法も使えませんがなんとか役に…」
「休んでろ。」
なんとか話すノクスの言葉を遮り、ノエインがなにかの入った袋を投げつけた。
ノクスは抗おうとしたようだが、すぐに眠ってしまう。
どうやら袋の中には眠らせるなにかが入っていたようだが、僕には何が入っていたのか検討がつかなかった。
近くの衛兵に肩を支えられ眠るノクスに、ノエインは腕につけたホルダーから試験管のようなものに入ったポーションをノクスの傷口にかける。
かなりの高性能ポーションだったようで、彼の傷口はみるみる塞がっていった。
「そこの衛兵、そいつを安全なところに。」
『ハハッ!皆さんご無事で!』
衛兵はサッと挨拶だけしてノクスを連れ救護所に向かった。
ノエインはなんだかんだ優しいな…そう思い彼の方を見ると、ポリポリと頭をかいていた。
「あいつの魔法が使えないとなると、モンスター全て倒すのは手間だな。」
「いくら市街地に逃げたとはいえ、それほど数もいないと思います。幸いにも、冒険者たちはここに大勢いるので彼らと共に別れて探しましょう。」
ネロの提案に、僕とノエインは頷くとそれぞれ別の方向へと散っていった。
僕は北へ、ノエインは南へ。
ネロが他の冒険者たちの指揮はしてくれるだろう。
それより、さっさと終わらせねば被害が拡大するだけだ。
僕は剣を抜き、市街地の細い路地へと入って行った。
──────────
細い路地は少しの光が建物の間から射し込むだけで、ジメッとしている。
この辺りの建物に人がいる気配はするものの、モンスターを恐れてか出てくる気配はない。
だが…一般人が戦えと言うほうが無理があるので仕方ないのだろう。
あちらこちらから視線が飛び交い、居心地も悪いのでさっさと抜けようと走っていると、少し広い場所に出た。
周囲の建物は相変わらず高いが、スペースがしっかりと取られておりきちんと日が差し込んで来ている。
中央には噴水があり、ここは憩いの場なのかもしれない。
あまり長居すべきではないな…引き返そうとしたその時、背中に猛烈な悪寒が走る。
「なにか…来る!」
辺りを見回すが、何も見当たらない。
そんなはずはない、そう思っていると日が差していたはずなのに暗くなったことに気づく。
「上か!」
空を見上げると、近くの建物から飛び降りて来たのだろうか?
なにかが降って来るのがわかったので、今来た通路へと逃げ込む。
その直後、ドーンという轟音と共に大きな揺れが発生した。
着地の衝撃で発生した土煙が晴れるとそこには猿のような…全身が白い毛並みの2m程もあるモンスター、シルバーバックがいた。
「なぜこんなところに!?」
辺りは全て建物で、こんな図体のモンスターがなぜ僕をわざわざ狙って飛び降りて来たのか?
だが、考えても答えが出るはずなどない。
僕は助けを呼ぼうと通路を走って逃げる。
だが、シルバーバックも逃げる僕を黙って見逃すはずがない。
当然ながらシルバーバックは僕を追いかけてきたので、捕まったら即死亡の鬼ごっこが幕を開けたのだった。




