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第11話:強力な味方-2

モンスターたちを切り伏せていくと、冒険者たちの声が大きくなってきた。


「おい、誰か来たぞ!」

「我々は助かったようだ!総員攻勢に転じよ!」


包囲の中で怒声が飛び交っているのが分かる。

向こうもこちらに向いていた冒険者たちは気づいたようで、こちらに呼応するように攻撃に転じる。


幸いにも、モンスターたちが挟撃に戸惑っている間にかなりの数を削れた。


あと少し…そう思いとっくに悲鳴をあげている体に鞭を打つ。

何度も何度も目の前のモンスターの背中を斬り続け…ついに包囲網の一角を切り崩すことに成功する。


僕が冒険者たちに辿り着くのと同時に、左右からもノエインとイオスが突破してきた。


「はぁ…はぁ…これで…ぐぁっ……!?」


防具をつけていたはずの脇腹にモンスターの一撃が炸裂する。

視界がブレたと思った次の瞬間、僕は近くの壁に叩きつけられていた。


背中にも痛烈な痛みが走るとともに、カラーンという甲高い音が迷宮(ダンジョン)内に響き渡る。

あまりの痛みと衝撃で手放してしまっ剣を再び握ろうとするが、悶え苦しむことしか出来ない。


何とか痛みに堪えて目を開けると、真っ向から冒険者たちが半包囲状態のモンスターたちに攻撃を仕掛け足止めし、ノエインとイオスがそこを粉砕する勢いでそれぞれ左右からモンスターの群れに進撃している。


それなのに僕は一体何をしているんだ?


「僕も…戦わなければ!」


あまりの痛みに涙を流しつつも何とか立ち上がる。

しかし、産まれたての子鹿のようにプルプルと震える足では支えきれずガクりと崩れてしまった。


立ち上がれぬ自身に嘆いていると、眩い光が足元から照らすのと同時に痛みがスーッと引いていく。

ハッと来た道に目をやると、杖を構えて魔法を行使しているファロスが見えた。


ありがとう、と心の中でお礼を言うとともに床に落ちた剣を拾いモンスターたちに向かって駆け出す。


モンスターの群れはもうあまり残っていないようだ。

だが、普通ならば蜘蛛の子を散らすように逃げるはずだがモンスターたちは逃げ出さない。


目を凝らして観察すると、影のようなモンスターが指示を出しているのが見えた。


狙いは…ボスっぽいあいつだ!


そうと決まった僕の行動は早かった。

影のようなモンスターに向かって一直線に走り出す。


途中には冒険者たちがいたが、そんなものは関係ない。

寸前で乾いた地面をエグれるほど思いっきり蹴って空中に大きく飛び上がった僕は、全力で剣を振り下ろす。


幸いにも、体はファロスが回復してくれたので今持てる全てを出し切った。

影のようなモンスターはさすがに空中まで気が回らなかったようで、直前になり僕に気がつく。


咄嗟に手で防ごうとしたようだが…もちろん防げるはずがない。

僕の剣はモンスターの身体を魔石ごと真っ二つに斬り裂くと同時に周囲を薙ぎ払う。


「さぁ…次は誰が相手だ?」


起き上がると同時に、モンスターたちに向かって剣を突き出す。


剣先からは今までに斬ったモンスターの血が滴っていたのもあったのだろうか…?

それともボスとおぼしきモンスターを斬り捨てたのが効いたのだろうか?


ともかく、モンスターは我先にと言うように…蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


だが…もちろん逃げられるはずがない。

ノエインとファロスの魔法が背を見せ逃げるモンスターたちを無慈悲に貫いていきモンスターの残党は全滅。


周囲のモンスターは文字通り全滅したのだ。


「うおー!生き残ったぞー!」

「助かったんだ!」


歓喜の声が迷宮(ダンジョン)全体を揺らす。

僕らとモンスターの戦いを見守っていた、ボロボロの冒険者たちが雄叫びをあげたのだ。


これまで防戦一方だった三十人ほどの冒険者たちはそれまでの姿勢とは打って変わって、次々と歓声を上げる。

自分たちを称える周囲の喝采に包まれ、僕とファロスは照れつつも笑みを浮かべた。


惜しみない称賛を受けていると、冒険者たちの間を掻き分けて一人の男性が抜けてきた。


細身の体にオレンジ色の髪の毛。

鎧はあちこちに傷痕があり、もはや防具としての働きは見込めないだろう。

武器は腰のベルトに吊るされたサーベルだろうか?

身体のあちらこちらから出血しており、立っているのもやっとのはずなのにそんな様子は一切見せなかった。


「救援感謝する。私の名前はネロ、【信念を貫く者たち(マルティリオ)】の副リーダーをさせてもらっている。深層からスタンピードを追ってきていたんだが、体力も魔力も尽きて本当に危なかった。助けてくれて本当に助かったよ。」

「私はクロウ、駆け出し冒険者です。貴方たちSランクパーティーの助けになれたことを誇りに思いますよ。」

「駆け出し?駆け出しがこんな所まで来れるとは思えないけどね?」


ネロと名乗る男は僕が駆け出しだということを信じていないようで、ケラケラと笑っていた。


「さて…まだモンスターたちが残っているはずだがわかるかい?」

「モンスターは……地上に溢れ出しました。」


俯きながらも僕の口から語られた事実に冒険者たちはざわつき始める。

だが、副リーダー(ネロ)は違った。


「ならば…今すぐ地上に戻らなければならないな。君たちも来てくれるかい?下層のモンスターたちは僕のリーダーを始め、他の冒険者たちが殲滅してくれているだろうから心配いらないよ。」


その言葉に、思わず安堵してしまった。

地上は火の海だと言うのに、これ以上モンスターが溢れて来ないことに…下層で命懸けでモンスターたちを食い止める必要がないことに。


覚悟していたつもりだったが、やはり死にたくないと願ってしまっていた自分がいた。

だが…これ以上モンスターが来ないなら共に帰還すべきだろう。


(ネロ)の提案を受け入れ、僕たちは信念を貫く者たち(マルティリオ)と共に地上へと戻ることに決めた。


──────────


帰還する前に、僕たちは彼らにポーションなどを提供して準備を整える運びとなった。


それらはどこから来たかと言うと、ノエインの魔法袋(マジックバック)に詰め込まれた彼の私物である。


どうやら昔から貯め込んでいたものだったようで、冒険者たちの傷を全て治療してもなお余るほどの量だった。


「ノエインさん、すまないね。」

「気にするな、後できっちり返してもらうけどな?」

「生きて帰れたらですけどね?」


そんな会話と共に二人の笑い声が聞こえてくる。

ネロなんか軽口を叩いており、さっきまで死にかけていたとは思えない。


少し呆れていると、全員の準備が整ったとの報告が上がってくる。

彼らはSランクの名に恥じぬ早さで準備を整え、わずか三分で完了したのだった。


これから帰還する上で、信念を貫く者たち(マルティリオ)のメンバーが他の冒険者たちを見つけた場合救護することになった。


地上にも他の冒険者はいるので、既にモンスターたちは鎮圧されているかもしれないが、逃げてくるのもいるかもしれない。

不意に遭遇して、疲弊した冒険者たちで対処出来るか怪しいので余裕のあるものが先頭集団に入ることになった。


もちろん、僕たちも先頭集団に加わっている。


「さぁ、行くぞ!」


ネロの号令と共に、三十人あまりの冒険者たちが一斉に地上に向かって走り出した。

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