第11話:強力な味方-1
下層に向かって走っていたが、やはり道中にいた冒険者たちはモンスターにやられてしまったようだ。
いつものゴブリンが襲ってくるぐらいしか危険のなかった平原は見る影のない凄惨な光景を見せつけてくる。
誰かの魔法だろうか…引火したようで平原は空高くまで赤く燃え上がっている。
そして、いつも吹いていた爽やかな風が煙を運び負傷した冒険者たちにトドメを刺さんとしていた。
だが…僕らには彼らを救いに行くことなど出来ない。
深層のモンスターたちの侵攻を食い止めなければどの道この街は終わりだからだ。
燃え盛る中、走り抜けた僕たちは九階層と十回層を繋ぐ階段へと辿り着く。
意外にも、ここまで来るのにそれほど時間はかからなかった。
いくら魔石の回収などをしていない強行軍とはいえ、最初に潜った時と比べれば成長を感じられる。
だが…今はそんなことを考えている暇はない。
モンスター共の侵攻を何としても止めなければならない…たとえ自分たちが犠牲になろうとも。
階段を降りようとしようとしたが、全員の足が止まる。
モンスターたちが階段を埋め尽くすほどの大群で駆け上がって来ているのが見えたのだ。
「クソッタレ、なんて数だ!」
「俺が先行します。ファロス、君は横に隠れておきなさい。」
僕らが話している間にイオスはモンスターに肉薄していた。
ファロスが慌てて下がったのを見て、イオスと共に突撃する。
「出し惜しみはなしだ、やるぞ【翼を生やす魔法】!!」
「わかっていますよ、【氷結する剣】!!」
「私だけ魔法使えないからただの突撃になっちゃってるじゃないですか~。」
僕とノエインが魔法を発動しつつモンスターの群れに突撃するのをみて、イオスがぼやく。
階段から飛びかかったことで勢いのついた僕たちは先頭のカエル共の眉間に蹴りを入れつつ、後続のモンスターたちに襲いかかる。
モンスターは四方八方から襲いかかるが、そんな攻撃を躱し、カウンターを決める三人の攻撃は恐ろしいほど正確だった。
今までのオールスターのようなモンスターの群れをそれぞれの武器で切り伏せ、怯んだところにトドメを刺していく。
二人とも普段はあんまり頼りにならないが、いざという時は頼りになる騎士だ。
階段に溢れんばかりにいたモンスターたちが肉塊へと変貌するまで1分もかからなかったことが実力差を示している。
全て倒したことを確認した僕たちは階段を降りつつ、次の戦闘に備える。
「かなり魔力を消費してしまったな。」
僕含め三人ともモンスターの返り血を浴びていたことと、短期決戦のために魔力の大半を消費したこと以外は問題ない。
身体はそこそこ傷ついていたが、後から階段を降りてきたファロスに回復してもらったので気にする必要がなくなった。
「皆さん…本当にお強いですね?」
「当たり前じゃない、私は貴方のお姉様だからね?」
嬉しそうに笑うイオスにファロスは苦笑を返す。
「殿下、イオス。これを…足りなければまだあります。」
「これは…魔力回復ポーションか!」
ノエインは腕に巻き付けたベルトからポーションを引き抜き、僕たちに投げ渡す。
ポーションは試験管のような物に入っているのだが…割れたらどうするつもりだと思いつつ受け取った。
ノエインめ…いつこんなものまで買い込んでいたんだ?
だが、今は気にしている場合ではない。
走りながらポーションを飲むのは難しかったが、飲み終えると身体の芯から魔力が湧き上がって来るのが分かる。
今ならなんでも出来そうだ。
「二人とも…まだいけるな?」
「もちろんです、殿下。」
「こんな所でへばるような鍛え方はしていませんよ?むしろ殿下こそ大丈夫ですか?」
「こんな所でへばっていられないよ!」
二人を気にするが、余計なお世話だったようだ。
僕も何度か攻撃を受けたが、動けることを確認してさらに走り出す。
その直後、遠くから戦闘音が聞こえた。
甲高い金属音と辺りを揺らす爆発音。
おそらくほかの冒険者たちだろう。
「近くに別のパーティーがいるようだ、合流しよう!」
「「了解!!」」
辺り一帯に広がった血溜まりを突き進み、音の聞こえた方へと走る。
途中で待ち構えていた蜘蛛が襲いかかってきたが、今更こんなのにやられる僕じゃない。
冷静に蜘蛛の魔石を一突きし、灰に還す。
魔石を失ったモンスターは生きては行けない。
理由は解明されてないが、魔石を失ったその時から身体が崩壊する。
だからこそ…魔石を突いて倒すのは冒険者にとって最終手段だ。
トップレベルの冒険者たちならばいざ知らず、モンスターを倒すのもやっとのような冒険者たちにとって魔石を砕くというのは…無駄に傷つき、疲弊し、明日生きる為の収入を捨てるということだから。
僕だってわざわざ砕くことはしたくない…だが今はそんなことを言ってられない。
消えゆく蜘蛛だったものを振り返ることなく僕たちは走り続けた。
強行した甲斐が有ったというものだろう…辺り一帯に響く戦闘音が大きくなっていくのが感じられる。
前方、T字の形をした通路の右手から音が聞こえてくる。
通路に飛び出し、減速しないために壁走りをする僕らの目に交戦中の冒険者たちが見えた。
正確には冒険者たちが見えた…というより大量の敵だが。
辺り一帯のモンスター全てが集まっているのではないか?と思わせるような包囲網が敷かれている。
僕たちが駆けつける前から戦闘が続いているあたり、包囲されても負けないぐらい強い冒険者たち…おそらく僕たちより強いだろう。
救援なんて要らないような気がしたが、下層から来た冒険者ならば情報交換も出来るかもしれない。
「二人とも、左右は任せたよ。ファロスは防御魔法をあのパーティーの周囲に展開してくれ!」
「わ…わかりました!」
「かなりの敵ですが…久々に全力で行きますかね。」
「さっさと始末して、美味しいご飯を食べに行きましょう♪」
なんか戦闘に集中していないのが一人いた気がするが…気のせいだよね?
気を落ち着かせるために目を閉じて大きく深呼吸。
右手に握られた剣を強く握りしめ、モンスターの群れに向かって突撃する。
そんな僕にノエインとイオスも続く。
包囲網の後ろで順番待ちをしていたモンスターにそれぞれ襲いかかり、あちこちでモンスターが空を舞った。




