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第十話:君の力になりたい-4

外に出ると、もうすっかり夜になっていた。


だが、人々は街に繰り出し酒を飲み交わしている。

今日もまた、生き延びたことに感謝をしつつ…。


そういえば僕たちもまだ晩御飯を食べていない…宿に戻ったらすぐに食事にしようか。


そんなことを考えているとノエインがコソコソと話しかけてくる。


「今回の件、大臣(フェアラート)はあぁ言ってましたが絶対何かありますよ。

あの大臣の私兵団、ぶっちゃけ近衛騎士より強いのですぐに解決出来るはずです。」

「だが、考えても何も分からないだろう?

それに…考えるのは性にあわないんだ。」


ノエインはヤレヤレといった感じで僕から離れていく。

だが…彼の意見には僕も同意したいところだ。


私兵云々の前に、大臣ならば騎士団を動かして解決出来るはず…。

出来ないというのは…()()()理由があるに決まっている。


問題は…その理由が全く見当がつかないことだ。

まぁいいさ…僕たちは冒険者、未知への探求は僕たちの専売特許だからね。


歩いていると、迷宮(ダンジョン)前の広場に出た。

広場にはあちこちに灯りが照らされており、その下で冒険者たちが行き交っている。


そんな冒険者たちを相手に商売するものも、よく見る光景だ。

なにかないか…辺りをキョロキョロと見渡していると、串焼きの出店が目に飛び込んでくる。


この前は色々あって味わって食べられなかったこともあり、一目散に駆けつける。


「タレを二本ください!」

「じゃ俺は一本。」

「私は十本!」


僕に続いてノエインとイオスも注文する。

いつの間についてきていたんだ…。


そして、ファロスはというと…必死に走ってこちらへ向かってきていた。

自身の身長程もある杖を必死に握りしめてこちらに来ているためか、そこまで早くはない。


ファロスが着く頃には串焼きが手渡された。


串焼きは牛肉とネギが交互に挟まれている、比較的シンプルなものだ。

だが…このシンプルなのが美味しい。


僕は受け取った串の一本をファロスに手渡す。


「はい、これファロスの分ね?」

「はぁ…はぁ…あ、ありがとう。」


ファロスは肩で息をしながら、僕から串焼きを受け取る。


だが…彼女に今必要なのは水分だということに遅まきながら気づいた。

僕はしまったと思い、持っていた水筒を慌てて彼女に差し出す。


ファロスは少し戸惑っていたが、しばらくすると水筒から水を一気に飲んだと思えば串焼きを一口、また一口と味わって食べていった。


そんな彼女を見つつ、僕も食べていると後ろからノエインとイオスが話しかけてくる。


「なんで二本頼んだかと思えば…そういう事ですか。」

「私みたいに沢山食べたくなったのかと思ったら違ったんですね…。」


イオスは両手の指の間に食べ終わった串を挟みながらガックリとしていた。


僕は君みたいに食べられないからね?

なんなら、君より食べる人ほぼ居ないと思うよ。


そんなことを思っていると、ファロスが食べ終わりお礼を言ってきた。

だが、もちろんそんなものは受け取れない。

それに…少し言わなければいけないことがあったので、ファロスの耳元でコソリと呟く。


「口にタレがついているよ、これで拭いたらいいよ。」

「…ッ!?」


僕は彼女だけに聞こえるように話しつつ、懐からハンカチを差し出す。

だが…ファロスは恥ずかしかったのだろう。

顔を真っ赤にしながら受け取ったと思うと、ハンカチで顔を隠してしまった。


そんな僕たちを見てノエインとイオスが笑っていると、ファロスが照れ隠しとばかりにポカポカと優しく叩く。


そんな光景を見て僕もニヤリと笑いつつ、食べ終わった僕たちは再び宿まで歩く。


幸いにも、迷宮(ダンジョン)前の広場から、宿まではほんの少し歩くだけ。

僕たちは宿の入口で別れ、各々の部屋に戻る。


部屋に戻った僕は早速ベッドにダイブした。


「今日も色々あったねぇ…。特に、犯罪組織の件。」

「そうですね…あって共同調査ぐらいかと思っていたのですが…。」


ノエインは戻ってくるなり、早速武器の手入れを始める。


というのも、ノエインは使える武器が多い。

本人はただの器用貧乏で、全て二流だと言っていたが…僕からすれば羨ましい限りだ。


そんな彼を尻目に、僕は起き上がり窓から顔を出す。

夜風が当たると、まだ肌寒い時期ではあるがそれを打ち消すほどに眼下では冒険者たちが騒いでいる。


賑やかな光景を楽しんでいると、遠くから爆発音が聞こえた。

僕は慌てて身を乗り出し、何があったのか状況を把握しようとする。


どうやら、迷宮(ダンジョン)の方で爆発があったようだ。

僕は装備をつけようと急いで振り返ると、そこには既に武装したノエインがいた。


「殿下、絶対に外に出ないでください!」

「ダメだ…僕も行くよ!」

「ダメです!危険すぎます!!」


ノエインはどうやら一人で行くつもりのようだが、僕だってこんな所でジッとしていられない。


僕だって…冒険者なんだ!


「たしかに僕は弱いかも知れない…それでも、僕は君の力になりたいんだ!」

「しかし…。」


僕の必死の思いが伝わったのだろうか…ノエインは左手で両目を覆うように抑えて少し悩んでいたが、僕の同行を許可してくれた。


「わかりました、すぐに準備を。私は下で待ってます。」

「ありがとう…わがまま言って。」

「いつもの事ですから。」


言い終わると、ノエインはさっさと部屋から出て行ってしまった。


イオスたちと合流するためだろうか?


そんなことはさておき、僕も置いていかれないように、サッと装備を付けていく。

もちろん、今日受け取った剣も忘れずに背中に担いでから部屋から飛び出す。


入口には三人が各々準備をしており、いつでも戦えるように備えていた。

僕は遅れたことに謝罪をしたが、三人とも気にする必要は無いと言ってくれる。


「それじゃ…行こうか?」


遅れてきて音頭を取るのは気まずいが、僕が決めたことなので仕方ない。

三人は何も言わず、頷くと広場に向かって走り出した。


まぁファロスはイオスに抱えられているけど。


広場につくと、辺りには悲惨な光景が広がっていた。

迷宮(ダンジョン)の蓋の役割を果たしていた建物ごと吹っ飛び、中から見たこともないモンスターがワラワラと這い出ている。

おそらく…僕がまだ潜ったことのない、深層のモンスターだろう。


近くにいた冒険者は必死に抵抗しているが、一般人を庇いながらなので上手く戦えていない。


だが…もうしばらくすればあちこちから援軍が来るだろう。


僕たちの役目はそれまでの足止めだ!


僕は、買ったばかりの剣を背中から引き抜き構える。

ダガーと違い、スラッと長いもののそれほど重さは変わらないみたいだ。


僕はふー…と深呼吸をして、覚悟を決める。

僕たちは冒険者だ…困難には立ち向かうものだ!


「行くぞ、街を守れー!」


街に響き渡る程の怒号をあげつつ、僕たちは乱戦の中に突撃した。

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