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第十話:君の力になりたい-3

装備を受け取り、僕たちはギルドに向かう。


先日の事件の説明のためだ。

本来ならば聞き取りなんて問題ないはずだが…。


何かあれば後で衛兵長(ノクス)に聞きに行こう。


聞けばなにか分かるかもしれない。

まぁ…素直に教えてくれるかは分からないが。


なんせ、彼は衛兵だ。

そんなペラペラと話す方が問題だろう。


そんなことはさておき、ギルドの二階にあるギルド長の執務室に着いた。

ピカピカに磨きあげられ、褐色の肌を光らせる木製扉を開ける。


中は執務用の机と、来客に応対するためだろう…長机を囲うように椅子が置かれていた。


そして、窓際に一人の森精(エルフ)が窓の方を向いて部屋に立っていた。


僕には見覚えがあった…なぜこんなところにいるんだ!?


「お久しぶりですね…殿下?」

大臣(フェアラート)が何故ここにー!?」

「先日の事件…この国を揺るがしかねない出来事ですので。

ささ、皆さんお座りください。」


ノエインとイオスは素早く座る。

僕とファロスは少しもたつきながら席に着いた。


そんな僕たちを見てフェアラートはクスクスと笑いつつ、皆に紅茶を振る舞う。


「殿下の行動はノエインからの報告で聞いております。

随分と…頑張っておられるようですね?」

「あぁ…しょっちゅう死にかけてるけど、城にいた時よりよっぽど楽しいよ。」

「それは結構…それでは本題に入りましょう。」


フェアラートは僕たちの向かい側に座ると、この国周辺の地図を出す。

どこから取り出したのか分からないが、おそらく収納魔法だろう。


「さて…先日、殿下を襲ったのは反逆の拳(レ・ベル)という犯罪組織だと裏が取れました。

彼らは隣国から流れてきた連中だということも、私の部下たちからの報告であがってます。

そして…連中が迷宮(ダンジョン)を利用しようとしていることも。」

「フェアラート…僕たちに何をさせるつもりだい?」

「簡単な話です…もう少し鍛えてからでいいので、殲滅してきてください。」

「フェアラート様、私たちがしなければならない理由はなんでしょうか?」


これまで黙って話を聞いていたイオスが手を挙げ質問する。

僕としても、そこは気になった。


わざわざ帝都からフェアラートが出てきているのだ、自分で解決してもいいだろう。

だが…彼が告げた理由を聞いて納得せざるを得なかった。


「実は…昔、少しあってこの迷宮(ダンジョン)に、私は()()入れないのです。

そこで、私の知っている中で唯一冒険者をしている殿下たちに依頼をしに来たのです。」

「もっと強い冒険者たちに依頼するのもダメなのか?それに、君の部下たちは?」

「強い冒険者たちも、私の部下たちも予定がありすぐに動けませんので。

それに…この国を守るのでしょう?

練習だとでも思ってください。」


相変わらず掴みどころが見えないな。


だが…将来この国を導くのならば、これもいい経験なのかもしれない。

そんな気持ちが湧きつつあった中、フェアラートはファロスのことをまじまじと見ていた。


「このお嬢さんは?お仲間ですか?」

「あぁ…彼女の名前はファロスだ、うちのパーティーの回復師(ヒーラー)だよ。」

「…は、はじめまして。」


ファロスは俯きながらカタカタと震えていた。

酷く怯えているようだ…おそらくフェアラートのせいである。


僕はよしよしと彼女の背中をさすりつつ、フェアラートと目を合わす。


「あぁ…怯えさせるつもりはなかったのです。

その…昔の馴染みに似ていまして。」

「だからって、初対面の相手を観察しないでくれるかい?

彼女は僕の大事な仲間だ。」

「そりゃすいません、次からは気をつけますよ。」


フェアラートは気まずそうに言い訳を垂れていたが、しっかりと言ってやる。

冒険者として染まってきたのだろうか…ここで黙っていられなかった。


だが、冷静に考えるとフェアラートの言う人物と親戚とかはあるかもしれない。


フェアラートはエルフだ。

彼の昔の馴染みなんて何年前のことか分からないが、似ることはあるだろう。


そういえば…僕はファロスのことをあまり知らない。

彼女の今は知っているつもりだが、過去のことは全くだ。

今度聞こうかな…なんて考えるとフェアラートに話しかけられる。


「それでは…皆さん、頼みましたよ?」

「本当は受けたくないけどな?」

「殿下に同意です、そもそも衛兵たちの仕事でしょう?」

「私も同じく。閣下、なにか隠していませんか?」


ノエインとイオスが切り込んで行く。

いいぞ、もっとやれ!


心の中で応援していると、フェアラートは立ち上がり帰る仕草をし出す。


「時期が来たら…話しましょう、それでは。」


一方的に語りかけたあと、フェアラートの足元を中心に魔法陣が広がる。

青く光るその紋様は、幻想的な雰囲気さえ感じるような美しさだ。


光と同時に、彼は姿を忽然と消した。

彼は転移魔法で帝都に戻ったみたい。


言うだけ言って…こっちだってまだ聞きたいことがあったのになぁ。


だが…まぁ仕方ない、依頼を受けるとするか。


ゆっくりと腰をあげ、立ち上がろうとすると三人の溜め息が聞こえてきた。

僕はサッと振り返り、優しく話す。


「三人とも、大丈夫かい?」

「「「大臣と喋ったら緊張するもんです!」」」


総ツッコミを食らってしまった。

でも…昔からあんな感じだし…。


そんなことを思いつつ、僕たちはノクスに会うために衛兵詰所へと向かった。


──────────


「…ということがあったんだ。」

「なるほど…わかりました、こちらで調査を開始します。

殿下も、御協力お願いしますね?」


ノクスは嫌な顔一つせず、動いてくれることになった。

どちらかと言うと、協力をしてくれるか心配があったようだが、もちろん協力するに決まっている。


僕はフェアラートからの依頼もあったとはいえ、既に巻き込まれているのだ。

相手は犯罪組織、おそらく数は我々の比ではないだろうから最初から協力して動かないと…。


「もちろん協力させてもらうよ、ねぇみんな?」

「後輩を助けるのは当然です。」

「私はちょっと怖いですが…頑張ります!」

「モゴ…モゴモゴ!」


ノエインとファロスは即答だった。

ファロスが少し怖がりながらも決意を示しているのは可愛いので和んでいたが、イオスを見て頭が痛くなる。


なんでこんな時まで食事をしているんだ…。


頭を抱えていると、食べ物が詰め込まれまるでリスのように膨らんでいた頬が小さくなり、食事を終えたイオスが大きく声を張り上げる。


「騎士として当然です、犯罪者なんて生かしてはおけません!」

「もうちょっと穏便に行こう…ね?」


イオスは使命感が強いのもあってか、連中を全員斬りかねない勢いで話しかけてくる。

だが、僕もイオスの意見には賛成したいところだ。


犯罪組織の連中は隣国から来たと言っていた。


連中はこの国に…この都市に明確に悪意を持って来ているのだ、遠慮なんて要らないのかも知れない。

僕は人の醜い部分をそれなりに見てきたつもりだが…まだ変われると信じたいのかもしれないな。


僕がまた一つ…強くなるために、特訓が必要かもしれない。

今の強さでは、二十層より下に行くのは自殺行為と変わらなだろう。


四人が迷宮(ダンジョン)の地図を見ながら今後の方針を話すのを見て、ふとそんなことを思いついた。

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