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第七話:新たな仲間

夜になり、ファロスがパーティに加盟することになったので僕とノエインで手続きをする。


彼女との出会いは偶然だったが、同じパーティに所属することになったことに…なんとなく運命を感じる。


ノエインに手伝ってもらいながら、何とか手続きを終えた僕たちは入口で待っていてくれた二人と合流する。


「それじゃ…帰ろうか?」

「…はい、これからよろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしく。」


ファロスはどこか他人行儀ながらも丁寧な挨拶をしてくれる。

僕もぎこちなく挨拶を返すと、宿に向かって歩き出す。


僕とノエインが前で、イオスとファロスが後ろだ。


明日の冒険が楽しみだ、あっ…帰ったら歓迎会を開こう!

そんなことを考えつつ、夜の街を歩く。


窓から見てる景色とはまた違い、今日も無事に帰ってきた冒険者たちの楽しむ姿にこちらも釣られて楽しくなってくる。


そんななか、後ろから二人の話し声が聞こえてくる。


「ファロス…ちゃん?なんて呼べばいいかしら?」

「呼び捨てでいいですよ、それより…お姉様とお呼びしても?」

「お姉様…ファロスちゃーん!」


興奮したイオスが、ファロスに抱きつく。

僕たちのことを忘れているな?


僕とノエインは、後ろに広がる光景を見たい気持ちを押さえる。

ちょっと話しかけるのが気まずかったが、宿に着くとイオスは抱きつくのをやめファロスの手を引く。


「二人とも、また明日ね!」


そういうと、イオスは自分の部屋へとファロスを連れ去った。

ファロスは何とか別れ際に言おうとしたようだが、イオスが思ったより早かったようで聞き取れなかった。


放置された僕とノエインはお互いに向き合う。

目の前の出来事に、思わず苦笑するしか無かった。


僕たちは大人しく部屋に戻り、明日に備え就寝した。


──────────


壁に掛けられた時計がカチカチと刻む音が部屋の中に響く。

目が覚めた僕は、時計の針を確認すると朝の五時。


少し、目覚めが早かったようだ。

だが、もう一度寝直す気にはなれなかった。


ノエインを起こさぬように寝巻きから着替え、冒険者として必要な装備を身に纏う。


ノエインが起きていないことを確認し、ドアノブに手をかけ廊下に出る。

ほかの冒険者たちもこの時間にはやはり起きていないようだ。


がらんとした静けさの中、ギシギシと軋む音を鳴らしながら一階に降りると朝食を準備するアイリスさんの姿が見えた。


「おはようございます、アイリスさん。」

「あら、もう起きたの?」

「えぇ…冒険が楽しみすぎて少しばかり早く目が覚めてしまって。」


僕は、近くのテーブルに座る。

少し早く起きたので普段ノエインがしてくれている道具の手入れや補充をしようと思いついた。


たまにはしてもいいだろう…そう思ったが、魔法袋(マジックバック)はノエインが管理している。

仕方なく、自分のダガーの手入れをすることにした。


ダガーは昨日の連戦にも耐えて僕を守り続けてくれていたが、少し刃こぼれを起こしていた。


どうしたものか…腕を組み悩んでいるといつの間にかアイリスさんが真向かいに座っていた。


「君…昔のノエインに似ているね。」

「そうなんですか?」


僕は、ノエインの過去を知らない。

いつの間にか、僕の騎士になっていたことは覚えているが冒険者時代のことは話してくれないのだ。


少し…いや、かなり気になる。


「…あのっ!」

「…ダメよ、本人に口止めされているから。」


彼女は指を口に当て、喋れないアピールをする。


残念に思ったが、そんな彼女は僕にボソッと呟く。


「あなたが強くなれば…教えてくれるとは思うけどね?」


捨てられた仔犬のように項垂れていた僕だったが、その言葉を聞いて顔をあげる。

だが、アイリスさんはもういなかった。


僕は話の続きをしたかったが、他の三人も早く起きたようだ。

ノエインはいつも通りだが、イオスとファロスは昨日の夜になにかあったのだろう。


昨日とは打って変わって、まるで姉妹のような距離間でやってきた。

イオスとファロスは同室になったこともあり、話しているうちに仲良くなったのだろう。


僕は一人一人挨拶を交わし、三人はテーブルを囲うように座る。


みんなが席に着いて、話を切り出したのはイオスだった。


「一気に二十層まで潜るのはどうかしら?

殿下(クロウ)が一人でもそこそこ潜れることがわかったし、下層に行くのも問題ないと思うのだけど…。」

「ふむ…まぁ、下層の方が経験も積めるし行ってみるか。」


どうやら、今日はいきなり二十層まで潜るらしい。

いきなり昨日の倍潜ることに少し不安を感じるのと同時に、ワクワクしている自分がいる。

そんななか、ファロスが申し訳なさそうに手を挙げる。


「あのー…クロウさんって…何者?」

「そういや言ってなかったか。クロウはこの国の皇子だ。」

「え…えぇーーーー!!」


ファロスの声が朝の街を駆け巡る。

どうやら、相当驚いたらしい。

ファロスは慌てて席を立ち、僕に頭を下げる。


「ごめんなさい、私とんでもない無礼を…。」

「いいって…気にしないで?」


僕は諭すように、優しく語りかける。

それに追随するかのようにイオスもファロスに話しかける。


「あなたの皇子様が本当に皇子様だっただけじゃない。

それに、今の私たちはただの冒険者。

礼儀なんて気にする必要ないわ。」


ん?皇子様…???

僕とノエインは同時に首を(かし)げる。


そんな僕たちを見てか、ファロスは顔を真っ赤にして顔を両手で押さえる。

彼女が無礼だと思っていた焦りが、恥ずかしさで上書きされていくのがハッキリと分かった。


どうやら、イオスのフォローは逆効果だったようだ。


僕はなんと声をかけて分からなかった。

僕自身も、こんなことを急に聞かされてどうしたらいいか分からないのだ。

そんな僕を横目にイオスはファロスに抱きつき謝罪する。


「ごめんね?私もわざと言ったわけじゃないの!」

「わかってます…でも…恥ずかしい。」


恥ずかしがるファロスと、慰めるイオス。

その横でアタフタしている僕をずっと見ていたノエインは堪能しているようだった。


ちくしょう…コイツ楽しんでやがる!

だが、僕にはどうすることも出来ないので黙って俯いていた。


そんな僕たちを見てようやく満足したのだろう。

しばらくして、ノエインはようやく助け舟を出してくれた。


「それじゃ…迷宮(ダンジョン)に行こうか?」

「えぇ…そうね。ファロス、行こう?」

「はい…。」


ノエインはサッと席を立ち、スタスタと歩いていってしまった。

ファロスはまだ両手で顔を押さえていたが、指の間から前を見ながらイオスに連れられ歩いていく。


僕は、一人でついて行くのが少し気まずくなったので先に行ったノエインに走って追いつくことにしたのだった。

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