29.キ・カイの戦艦
『翌朝』
ザザー ビシャビシャ
女盗賊「明るくなって来たけど土砂降りのままだね…甲板には出ない方が良さそう」
闇商人「そうだね…」
女盗賊「こんなに降ったら洪水になっちゃわないかな?」
闇商人「可能性有る…まぁ風が無いだけマシさ」
スタタタ
賢者「カゲミさん!装備品が乾きました…どうぞ」
闇商人「お?早いね…」
賢者「ボイラーの熱で温かいので直ぐに乾きました」
女盗賊「ボロキレが役に立ってるみたいだね?」
賢者「はい…縫い合わせて羽織りにしました…ゴワゴワしていますが雨除けに丁度良いです」
闇商人「それ…ソルの分も用意出来るかい?」
賢者「カゲミさん…ソルには優しいのですね」ジトー
闇商人「なんだヤキモチでも焼いて居るのかな?」
賢者「はい…なんだか悔しいです」
闇商人「まぁそう言うのじゃない…仲間としてちゃんと扱いたいだけさ…機械だと思って雑に接するのは良くないと思った」
女盗賊「ポチの事も丁寧に扱ってね~」
闇商人「ハハ…そうだね…ポチ用の小屋でも作ろうか」
女盗賊「お!!?空いてる木箱あるよ?」
機械の犬「ワンワン!」トコトコ クルクル
闇商人「どういう知能を持ってるのか知らないけど…一応こちらの意図は理解しているね」チラリ
ズドーン! ズドーン! ズドーン! ズドーン!
闇商人「むむ!!大砲の音だ…着弾の音は無い…」
女盗賊「側壁に窓があるよ…内側に倒せばガラス越しに外が見える」
闇商人「これだね?」ダダ ガチャ
女盗賊「これドワーフの船大工が改造してくれたんだ…荷室からでも外の様子が確認できる」
闇商人「大砲を何処から撃ったのか分かるかな?」
ズドーン! ズドーン! ズドーン! ズドーン!
女盗賊「見えた!!例のガレオン船!!」
闇商人「海側に撃ってる…どういう事だ?」
女盗賊「海賊でも居るのかな?反対側も見なきゃ…」スタタ
闇商人「こんな視界が悪くて遠方を狙って当たる訳無いのに…」
女盗賊「あ!!!沖の方に大きな船が居る!!」
ズドーン! ズドーン! ズドーン! ズドーン!
闇商人「そっちか…」ドタドタ
女盗賊「何あの船…帆が無い…」
闇商人「くそう!僕じゃ裸眼で見えない…何色の船かな?」
女盗賊「灰色…え!?もしかしてアランと一緒に見たキ・カイの船?」
闇商人「なんだって!?まさか行方不明になってるキ・カイの戦艦か?」
ズドーン! ズドーン! ズドーン! ズドーン!
女盗賊「これ退避した方が良いのかな?」
闇商人「あ!!キ・カイの戦艦が何か発射した…真上に飛んでく…」
ガバッ ウィーン プシュー
人造ロボ「高熱源探知…M142高機動ロケット…目標補足…着弾まで8秒」ダダ シュタ
闇商人「うわ…直角に軌道が変わった…なんだアレ…」アゼン
人造ロボ「迎撃手段無し!伏せて!!」
女盗賊「え?え?え?」オロオロ
闇商人「こ…こっちに飛んで来る!!」
シュゴーーーーーーー ボボボボボ ドカーーーーーーン!!
闇商人「うわぁ!!」タジ
人造ロボ「2射目…6発同時発射…目標は陸上の建造物…何も出来ないから見守って」
女盗賊「カ…カゲミさん…光が6つ同時に向かって来る…怖い!!」
機工士「なななな…何が起きてる!?」ドタドタ
闇商人「ココア!!ジャミング装置はどうした!!?」
機工士「まだ何も手を付けてな…」
シュゴーーーーーーー ボボボボボ ドドーン!! ドカン!ドカーーン!! ズドドーン!!
闇商人「あ…圧倒的じゃないか…一瞬で町が破壊されて…」ボーゼン
女盗賊「見て!!ガレオン船の胴体に穴が開いてる!!」
闇商人「くそう…機械は強引に人間を間引きに動いてるな?」
人造ロボ「3射目…また6発同時発射…」
女盗賊「これゲスとフーガがマズいかも…」
人造ロボ「何も出来ないから見守って…それがあなた達を守る最善手だから…」
シュゴーーーーーーー ボボボボボ ドドーン!! ドカン!ドカーーン!! ズドドーン!!
その日…
隕石の様に降り注ぐロケット砲によって
フィン・イッシュの新市街地は壊滅的な被害を受けた
幸い土砂降りの雨が降っていた事もあって火災の被害は免れたが
死者、行方不明者は多く
虫の襲撃に対抗する力も失い
絶望的な状況で更に被害が増えようとしていた
-------------
-------------
-------------
『翌日_瓦礫に埋もれた宿屋の地下』
ううう… ハァハァ
ローグ「ハッ!!ゲスさん?気が付いた?」ダダ
学者「こ…これ…生きてるんすか…ね?」モゾ
ローグ「おいらの賢者の石でどうにか繋いだ…もう少し動かない方が良い」
学者「おえっ…なんか…吐き気が…」
ローグ「出血のせいだと思う」
学者「他のみんなはどうなって居やす?」
ローグ「船は沖で泊ってる…多分無事だよ」
学者「何が起こったのか訳分からんのですけど…」
ローグ「海の方からミサイルが飛んで来た…もう新市街地全体が廃墟だよ」
学者「ま…まじすか…」ボーゼン
ローグ「おいらも急に状況が変わり過ぎて混乱してる」
学者「虫はどうなって居やす?」
ローグ「そこら中を徘徊してる…外に出るなら怪我をしっかり治さないといけない」
学者「こ…このしんどい感じは…内臓がどっかやられて居そうっすね…手足も動かせんす」
ローグ「脇腹に大きな金属片が刺さってた…肝臓かな?」
学者「圧迫処置して賢者の石っすかね?おえっ」ビチャー
ローグ「傷口は一応縫ったよ」
学者「そうっすか…てか…この状況はかなりマズイっすね…どんくらい被害出て居やす?」
ローグ「死んだ人は虫に食い荒らされて酷い事になってる…狙われたのは人間だけみたいだよ」
学者「オークとかは無事なんすね?」
ローグ「うん…赤い鎧を着た兵隊達と一緒に虫と戦ってる」
学者「赤い鎧…そんなん見た事無いっすね」
ローグ「詳しくは分からない…オークと協力している辺り味方なんだと思うよ」
学者「返り血で赤くなってるとかなんすかね?」
ローグ「どうなんだろう?虫の血は赤く無いよね…」
学者「生き残ってる一般人はどんくらい居やす?」
ローグ「おいら達と同じ様にどこかに隠れてしまって全数が分からないよ」
学者「この近辺は?」
ローグ「ドワーフ達はもう居ないね…お陰で物資調達には困らないさ」
学者「略奪し放題っすか…」
ローグ「あとコレ見て…」ゴソリ
学者「杖…もしかして変化の杖?」
ローグ「ビンゴ…ガレオン船の中で割れた容器の傍に落ちてた」
学者「なんかえらいちっこい杖っすねぇ…ほんで液体に浸かってた人は?」
ローグ「残念だけど虫のエサになってる…グチャグチャで燃やせる様な状況じゃ無いよ」
学者「エリクサーに浸かった状態の死体を虫が食い荒らすのは考えにくいっす」
ローグ「アレはエリクサーじゃないね…油だよ」
学者「油…ほんなら燃やせるじゃないすか…」
ローグ「もうそんな状況じゃ無いんだ…雨の水とも混じってグチャグチャなんだよ」
学者「そらしゃぁ無いすね…」
ローグ「とりあえずコレでミルクを元の姿に戻せるかも知れない」
学者「今の状況でここまで辿り着けると思いやす?」
ローグ「厳しい…」
学者「ちっとミルクちゃんとの合流は諦めた方が良いかもっすね…」トーイメ
ローグ「ここでミルクを拾えないともう一生会えない気がする」
学者「…」
ローグ「おいらそんなの嫌だよ」
学者「待ちやすか…俺っちも兄貴に会わせる顔が無くなっちまいやすね…」
ローグ「ふぅ…良かった…」
学者「ほんで…現状をどう打破するかなんすが…」
ローグ「ゲスさんはまず体力の回復が最優先」
学者「どっかで麻薬を入手出来やせんか?」
ローグ「え!?」
学者「戦場だとどんな怪我をしても麻薬使いながら動かん体を動かすんす」
ローグ「ダメだよそんな…それじゃゲスさんの体が悪くなる」
学者「そんな事言ってたら助けられる命が助けられんくなりやす…動けるなら動かんとダメっす…ふんがあ!!」グググ
ローグ「他にどんな怪我してるのか分からない…もう少し回復させて!」
学者「なんか麻酔したみたいに動かんすね…」
ローグ「あ…出血抑えるのにゲスさんが持ってた麻痺毒使ってる」
学者「そういう事っすか…それ知らんで使うと即死するんすよ?」
ローグ「結果オーライ…今こうして生きてる」
学者「とりあえず麻痺抜けるまで動けんすね…」
ローグ「話が変わるんだけど…こんな感じの事が世界中で起きてるのかな?」
学者「あんま考えたく無いっすね…ただ」
状況から察するに容器に入ってた女の人がキーマンだった可能性が高いすね…
機械はそれを取り引きに使うつもりだった
それが上手く行きそうに無いんで破壊した
学者「そう考えると世界中で同時に事件が起きてるとは思えんくなりやす」
ローグ「じゃぁどうしてこんなに町を破壊するんだろう?」
学者「上手く行かなくなった原因はフーガ君が憲兵のアンドロイドを破壊した事に起因してると思いやす」
ローグ「え?どういう事だろう…」
学者「機械からしてみれば俺っち達が何処に潜んでるか分からない訳っすよ…だから丸ごと破壊しようとした…」
ローグ「じゃぁこの災害はおいらが呼び込んだ…と言う事になる」
学者「アンドロイドを破壊しなきゃもっと酷い事になってたのかも分からんすよ?」
ローグ「…」
学者「答えは闇の中なんで考えるだけ無駄っすね…どうやって生き抜くかを考えやしょう」
ローグ「なんか…亡くなった人達を思うと一気に心が重たくなった…」
学者「そういう想いに引っ張られると戦えんくなりやすよ?これは人間と機械が生き残りを掛けた戦争なんす」
ローグ「う…うん…」
学者「もうちょいの辛抱っす…きっと兄貴が残りの衛星を打ち上げて勝利をもぎ取って来やす」
『フリゲート船』
その頃…
新市街地の惨状を目の当たりにしたカゲミは激情してキ・カイの軍艦に対して単騎特攻をしようとして居た
作戦は単純…小舟で至近距離まで近付きプラズマを撃つ作戦だ
持って行くのは数個の魔石だけ…
闇商人「ダメだイッコ!!君は連れて行けない…船に残るんだ!」
賢者「お願いです…私はカゲミさん無しでは生きて行けません」
闇商人「うるさい!何度も言わせるな!!今此処であの船を沈めておかないと必ず同じ事が起こるんだ!」
賢者「うぅぅ…」ガクリ
闇商人「ミファは引き続き陸の方でゲス達が生きていないか探して」
女盗賊「うん…」
闇商人「ソルはイッコが下手な行動を起こさない様に監視するんだ…そしてココア!!」
機工士「は…はい…」ビク
闇商人「上手くソルを導いて船を守って…ミサイルを撃たれる様ならソルが上手くジャミング出来るかが鍵だ」
機工士「分かってる…」
闇商人「じゃぁ行って来る…」バサ スイー
賢者「カゲミさん…」
闇商人「イッコ…僕も死ぬ気は無い…無事に戻って来るのを祈ってて」
カゲミを乗せた小舟は小さな帆をはためかせ静かに進んだ
海上には襲って来る虫から逃れようと小舟で海に出た人々が沢山居た
再び海の向こうからミサイルを撃たれるのを恐れて大きな船には近付けないで居る
なぜなら港に停泊していた大き目の船は残らず破壊されたからだ
女盗賊「行っちゃった…」
賢者「私…お祈りしておきます…」
女盗賊「うん…」
イッコの祈りが通じたのか次第に雨が収まりいつもの静寂な海へと変わって行く
漂流物に混ざりながら進む一隻の小舟…
それが人間による反撃の一手だとは誰も気付かない
『キ・カイの戦艦』
その船は巨大な鉄の塊だ
フィン・イッシュに停泊するガレオン船から撃たれた砲弾によって随所に傷みがある
甲板には錆び付いて動かなくなったキラーマシンが複数横たわり
まるで幽霊船の様な雰囲気が有る
今は動き出す気配無くただ静かに海を漂い
海流によってゆっくりと陸の方へ近づいて居た
そこへカゲミを乗せた小舟が忍び寄る
まさかそんな小舟からプラズマが発射されるとは機械も想定して居なかったのだろう
突然放たれたプラズマは合計36発…
そのすべてが船体に直撃して分厚い鉄を溶かした
そして内部にあるミサイルへ引火したのか
巨大な爆発は船全体へ誘爆を始め黒煙を立ち昇らせる
窮鼠猫を嚙むとはこの事だ
その様子を遠方に控えるフリゲート船から見ていたイッコは
祈り届かずと思ったのか膝を落とした…
なぜなら爆風で吹き飛ばされて散るカゲミの姿が見えて居たからだ
その小さな体は海の中に消え…何処に行ったのか分からなくなった
-------------
-------------
-------------




