緊張感
この取材活動については陽川がフリーランスとして頼まれていたモノだったので、此処に至る事は容易に想像出来た。
しかしながら陽川が盲目にストーカー行為をしている才田廻子に近い人物であり、何かしらの指示があってもおかしくない。
クロノスの目的が未だ何なのか見えてこない。
今回の会見の内容は女性議員のバイセクシャルで、とてもナイーブな問題であり、本来本人だけの問題のところだが、注目が集まり本人は登壇しないと言い続ける。
そんななか注目も減ってきた所で選挙演説で彼女を推した才木道治が完全鎮火を図ろうというものだろう。
タイミングも会見の内容も流石三代続けて政治家という所だった。
特に気になる所もなく、しかしマスコミが使いやすそうなワードを入れてこなす姿は圧巻という所だろう。
終始才木道治氏の心意気を感じ、また彼女の政治活動に対する情熱をあつく語っていた。
若菜はデザートのアイスを頬張り黒川に話しかける。
「当たり前の事を通すのも難しいものですよね」
「貴方の当たり前は多分世間では通らないわよ」
「分かってますよ」
「あっ私が女性蔑視で良いって訳じゃないからね」
「黒川さんも女でしたね」
若菜は掴みどころないなとおもっていると、質問コーナーに入り陽川が質問する様だ。
「彼女を推してきた中で最近不安感も有ったと思いますが、彼女のこれからにどういう役割を担って欲しいですか?」
一息吐いて才木が答える
「彼女と最初に対面した時に感じた。正しさを持ち続けてくれたらと思います。こうなった事は彼女が活かすかどうかを決めるでしょうし、彼女のキャリアより、政策懸案の中で今まで通り活躍してくれればと思っています。」
また若菜がボソッと話す。
「陽川の質問は普通かぁ。。」
「普通で良いのよ。疑いは晴れるのが私たちの仕事において一番良いことよ。まぁ晴れたわけではないけれど、、この会見への緊張感は無くなったわね」
コーヒーを飲み干した黒川は車の鍵を若菜に渡して飲み物を買って来ると言って車から出た。