10-2、治療魔法とその勉強2
二人は、そろそろ受付終了の冒険者ギルドに戻ってきた。
飲食スペースでは今日も冒険者達が盛り上がっている。
かなり冒険者の多い街のようで、人数自体は数十人でも、いつ見ても違う奴らが飲んでいる。
ギルドは冒険者を受け入れるため、ある程度遅い時間まで開いているようだ。
本来的には一晩中受付していてもおかしくないギルドが受付を終了するのは、街の門が閉じているのにギルドだけ開いていても仕方ないため、らしい。これはアコルテから聞き出したことだ。さまざまな事情で門がない街のギルドは、二十四時間受付しているところもあるとか。
(……あれ?)
受付スペースには、アコルテはいない。珍しいことだった。
そのアコルテを当てにして来たルトナは肩透かしに合う。
ユノの知識で聞ける限りのことは聞いた。
もっと情報を得るためには、図書館の有無についても含めて、冒険者と接するのが仕事のアコルテに相談するべきだ。
遅い夜であれば、仕事の邪魔になるようなこともない。
それどころか、受付嬢同士で雑談をしている手持ち無沙汰の状態であれば、むしろアコルテの暇潰しになるだろう。
そういう感じの魂胆だったわけだが、当の彼女は不在である。
(……まあ、一応この人に聞くだけ聞いてみるか。無理なら、アコルテさんに取り次いで貰えばいいし)「すいません」
配置が今日のこの時間は一人だけなのか、非常に退屈そうにしている受付嬢に話しかける。
すると、やはり暇だったようで、ものすごく嬉しそうな受け答えが返ってくる。
「あらあらどうしましたかルトナさん。何かご用ですか? ……手続きですか? 依頼の受注ですか完遂ですか? サービスですか? 同伴ですか? 同伴ですか?」
この受付嬢は、明るい、緑がかった青色の髪の毛で、胸が非常に大きい。受付嬢の清楚な感じの制服の上からでも目立っており、男の頃だったらルトナは目がいっていたかもしれない。
たまにアコルテをくだらない話でからかっていて、なので多分アコルテの友人で。
ルトナにとっては、混じって三人で会話したことがあるくらいの間柄だ。
「同伴……? 何言ってるかわからないけど、くだらないことってわかるのがすごく残念。ちょっと、アドバイスが欲しいんだ」
言うと、あら残念、と受付嬢は残念がった。
「それは、アコルテの仕事ですから、取るわけにはいきませんね。今呼んできます、休憩中なので」
休憩中といわれ、ルトナは予想を外された。何か裏で作業をしているのだと思っていたのだ。
「もうだいぶ遅いってか、閉店三十分前みたいな感じでしょう。そんな時間に、休憩?」
「ええ、今日は忙しかったんですよ、彼女。今日も、ですかね。あれだけ優秀で、物腰も良ければねえ。ミナちゃんとかも結構個人的には優秀だと思うのに、あの子は無表情だから……。ともかく、休憩が取れなかった分の休憩で、奥に引っ込んでるの」
「なるほど。じゃあすいません、アコルテさんがいるなら、呼んでもらうの、お願いしようかな。別にお姉さんでもいいですけど」
聞くと、受付嬢は少し咎めるような顔を作る。
「それ、アコルテに直接言わないでくださいね。私じゃダメですよ。仕事を取っちゃいますから」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
そこまで話すと、受付嬢はユノのほうを向いた。
「奴隷ですか?」
「はい。この子はユノって言います」
「ご紹介に預かりました、ユノ・ステファニエです。ご主人様にお仕えしております」
ルトナの紹介を引き継いだ、ユノの名乗りを聞いて、受付嬢は身悶えした。アコルテには劣るがこの人も美人なので、気持ち悪くはないが、無難な表現をすれば表情豊かだなとルトナは思った。
「きゃ~~~っ! 可愛い~~~! 敬語がたどたどしくて最高に滾る……よろしくね。私はリーフレッタって言います。周りからはリーフと呼ばれているわ」
「よろしくお願いします」
「人の奴隷に滾るな。というか、リーフさんって名前だったんですね。思えば名前を聞いてなかった。失礼だったでしょうか?」
「いえいえ、ちょっと会話してただけですからね。ユノちゃんには名乗られたから名乗り返しただけ。……ユノちゃんはどのくらい強いの、ルトナさん? 駆け出しの冒険者の奴隷なんだから、戦闘奴隷よね?」
「うーん、わかんないです。でも、これからどんどん強くなりますよ。私の奴隷なのでね」
ぎゅっと抱きしめてみると、ユノがルトナに肌をすり合わせながら自分でも答えを返す。
「ご主人様の奴隷です」
リーフは涙を流す素振りをしながら感動している。
「ううっ……鼻血が出そう……冒険者の奴隷って大体ひどい扱いだからね……しょうがないんだけど……ましてやこんな可愛らしい二人がまだぎこちなくも麗しい主従をやっているなんて、……受付嬢やっててよかった」
「そいつはどうも。……すいません、アコルテさんをお願いします」
「あっあっ、すいませんね。では呼んできますね。アコ~っ!」
アコルテに呼びかけながら奥に引っ込むリーフを見ながら、ユノがぽつりとつぶやいた。
「ピコさん二号でしょうか?」
「ちょっとノリが違うけど、確かにああいう系だね……」
ピコのほうはもう少し侵略的である。そして、外見もあわせると、総合的にはリーフのほうが少し落ち着いているというか、大人びている感じがある。
あるいはそれはルトナが相手だからかもしれないが。
アコルテはすぐに姿を見せた。




