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点滴の再利用

 非常に恐ろしいことが起こった。


 今日も午後からは看護師さんがいないため、薮医院では薮が自ら点滴などの処置を行っていた。

 いつも来ている常連の患者さんが風邪で抗生物質の点滴をすることになったのだ。抗生物質の適正使用の手引の公表にも関わらず馬鹿みたいに使い続けていることもツッコミどころだ。

 薮によるとこの患者さんは血管が出にくいらしく(看護師さんは一発で注射しているが)、何度も注射し直した挙句仕方がないので一休みすることとなった。


 その間溜まりに溜まった患者さんを診察することとなったのだが、あまりにも長時間放置することになったためその患者さん帰らなくてはならなくなったのである。

 仕方がないので残った点滴は廃棄するために別の場所に置いておいたのだが、驚くべきことに薮がいつの間にかその点滴を回収して別の風邪の患者さんに使用してしまったのだ。


 発覚したのは患者さんがひとまず落ち着いたあとで廃棄ノートに点滴の名称と量を記入し、現物を処理しようとしたときにその点滴がないというのが分かったときだった。薮や他の従業員にここに置いておいた点滴を知らないかと問うと


 「逆流しないからまだ使える」


という恐ろしいセリフが薮の口から出てきたのである。

 正式に調べてはいないが、普通針を指した点滴は使用済みの廃棄物じゃないのか?


 何年も前のアンプルを注射していたことが発覚して以来の恐ろしさを味わった。注射薬は私がわかる範囲ではすべて隔離したのだが、この調子ではどれだけ頑張っても無駄だと思えてきた。


 こんなところで勤務していると自分の感性がおかしくなっていく気がしてしょうがない。本気で転職する決意を新たにした瞬間だった。

 経歴的には3年は務める予定だったんだけど流石にもうこれ以上は無理。


 実際には期限切れの薬も全部廃棄したかったのだが、薮が病院のものを勝手に捨てる不届きな人間と言いふらしたりするので、ほとんどのものは実際に使えないように箱にしまうのが精一杯だった。まぁ、アンプル類は把握している範囲では流石に全部廃棄させてもらったが。


 この前も1歳の赤ちゃんの母親に


「もっといい薬があったけど全部捨ててしまった。残っていたらただであげたのに」


 と説明していた。たとえ無料でも期限切れの薬を喜んで赤ちゃんに使う人は少ないと思う。自分に使うんだったらまだしもね。


 箱に残した薬もうるさく言う私が辞めたら、こっそり患者さんに使うんじゃないかと心配はしている。

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