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第三王子に求婚されていますが、私には「好き」が分かりません  作者: ユミグ
第一章

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4


「メル」

「知らない!ママなんて知らないんだから!」


アムに怒って、私にも怒ってるメルは余程気に入らないのか、また目の前から消えた代わりにあの子の伴侶が来てくれた。


「ライ、メルはどうしたの?」

「うん…」


今日は獣の姿でいたいのか黒の毛をふさふさとさせて金の瞳をより一層まん丸くさせている。


「言えないこと?」

「うん…言わないでってお母さんから言われてる」

「へ?」


私から言われてる?


「なに言ったっけ?」

「…お母さんは覚えてないよ」

「そうなの?」


子ども達とのことは忘れないようにしてるんだけどな。


「じゃぁ、私が許すから言って?」

「………ううん、言えない」


一体どんな約束をしたんだろう?

というより約束なら覚えてるはずなのに。


「メルのことはどうしたらいい?」

「俺の気持ちを伝えてもいい?」

「もちろん」

「運命のこと、ちゃんと知って欲しい」

「分かった」

「好きになったら……うん、好きになったら傍にいて?」

「分かった」

「それがきっと俺たちへの答えになるから」


言っている意味は分からないけれど…


「うん、分かった」

「メルは俺に任せて」

「お願いね」

「愛してる」

「私も愛してるわ、可愛い我が子」


その日は早めにお店を閉めてゆっくりとお風呂に浸かった。


♢


次の日は朝から領主様のお屋敷に向かった。

ライの言う通りにしてみようと思ったから。

アムのことを知る努力をしなくちゃね。


「あ、おはようございます」


アムを護衛していた一人が門前で警護をしていた。


「殿下に御用でしょうか」

「アムのことを知る為に訪ねてきました」

「お待ちください」


バスケットを持ったまま待っているとアムが走って来てくれた。


「ご、ごめっ、はぁっ、はぁっ、来てくれて、あり、がと」

「こちらこそ突然来てごめんなさい」

「ううん、嬉しいよ!どうしたの?」

「息子に」

「あ、話は部屋でしよう」

「分かりました」


門を開けてもらい、お城のようなお屋敷に招かれた。

部屋に着くのも大変だなと10分は歩いた道中で思う。


応接間のような場所に通され、数名の護衛も居る中、アムと向き合った。


「ん?いい匂いがする」

「迷惑かと思ったんですが、朝食を作ってきました」

「え!?」


きっと検査が必要だろうと護衛の人にバスケットを渡すと受け取ってくれた。


「嬉しい…まだ食べてないんだ」

「サンドイッチにしました」

「好きだよ、サンドイッチ」


ここで食べるのか、毒見を終えた後アムの前にサンドイッチが置かれた。


「それで、どうしたの?」

「息子に言われたんです」

「む、息子…?」

「はい、運命と向き合って欲しいと」

「むすこ………」


どこか放心状態のままサンドイッチを一口かじった。


「け、結婚してたの?」

「いいえ」

「じゃ、じゃぁ…えっと…どうして?」

「なにがですか?」

「ん、と、どうして子どもがいるの?」


そういえばそうだった。

子どもがいるという偽装はしていないんだ。

なんて言おう…。


「…そうですね、子どもが欲しかったので授かりました」

「そ、そうなんだ」

「はい」


呆然としてるアムは器用にサンドイッチを食べ進めている。


「えっと、うん、分かった、かな?」

「そうですか」


にしても…どう知っていけばいいんだろう。

あ、アムがしてくれたみたいに質問していけばいいのかな。


「アムは討伐が終われば帰るのですか?」

「迷ってるんだ」

「どうしてか聞いても?」

「ラナがここにいるから」

「私?」

「離れたくなくて…」


私がいるから帰りたくない?


「迷ってるということは帰らなくてはならない事情があるんですか?」

「これでも第三王子だから、仕事はたくさんあるんだ」


仕事の為に帰らなくてはならない。

けれど、王都とここはあまりにも遠い。

移動手段を考えると気軽に来れるところではないだろう。

アムが帰るのは私も困る。

私は知らなければならないんだ、我が子たちの為に。


「でしたら私が王都に行くのはどうでしょう」

「え!?い、いいの!?」

「薬師などどこでもできますから」


ここは魔物が活発に動いていた。

けれど、もう活発に動くことはないだろう。当分は。


「嫁いできてくれるの?」


どうやら勘違いをさせてしまったようだ。


「いえ、私はアムのことを知らなければならないのです。離れていては知ることも出来ませんから」

「知ってくれるの?」

「はい、知りたいです」

「ありがとう…」


そうと決まればお店を畳み、王都で出すお店について考えないとならない。


「忙しくなりましたので私はこれで」

「え!?」

「王都に行くには色々と準備がありますから」

「そっか…そうだよね。……本当にありがとう。環境を変えるのは大変なのに」

「大丈夫ですよ、それでは失礼します」


その日、お店に戻ったら早速店じまいの支度を始めた。

すぐに終わるかと思っていたけれど、5日もかかってしまった。

家賃に関しては前払いしてあるので、問題ない。

あと3か月は住めるけれど、あの後アムの遣いの方がいらして伝言を預かった。

10日後に帰ると。

私はそれより先に王都へ行き、まずは宿屋を探さなければならないのでアムを残して出た。

隣人達には挨拶をし、薬師たちには事情を話しあとは任せた。

私が扱う魔法陣が欲しいと言われたけれどそれは断り、街を出た。


王都には7日かけて着いた。

居場所やお金についてアムから出すと言われたけれど、自分一人でどうにか出来ると伝えたので居場所が出来たらアムに手紙を渡す手筈になっている。

平民からでも届くよう専用の便せんを頂いたので連絡はいつでも取れる。


我が子たちにも居場所の変更は一方的だけれど伝えた。

ライからは返事がきたけど、メルからはない。

まだ私にも怒ってるんだろう。

話し合いたい気持ちはあるけど、避けられていては話もできない。

少し悶々としながらお店の場所を探している私は今、困っている。

なにに困っているかというと資金だ。

割高だったから生活には困らなかったけど、新たなお店を出すとしたら別だ。

しかも王都。

家賃が高すぎて住める場所が一つもない。


「ここも高いですね」

「お客様のご要望には応えられません」


不動産に行っても門前払いされる日々。

一体どうしたらお店を開けるんだと路頭に迷っていた時に入った不動産でやっと物件を見つけられた。


「本当にあんたみたいな弱っ子がここに住むのかい?」

「安いので」

「それにしても治安が悪いよ?」

「構いません」


治安が悪く、一軒家の造りもボロボロだけどようやく私でも出せる金額のお店を出すことが出来て安堵した。

路地裏の入り組んでいる場所でお店を開くのでお客様が来てくれるかどうかは謎だけれど、とりあえずの目標は達成したと、久しぶりに疲れてる体で新しい我が家で眠った。


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