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第三王子に求婚されていますが、私には「好き」が分かりません  作者: ユミグ
第一章

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「あ」

「なにか見つかりましたか!?」


今日も治癒師たちと共に予防薬の試作をしていたら思い立った。

この薬草たちじゃ駄目なんだと。

ここらで生えてる薬草じゃ駄目だ、南にある薬草がいい。

だけど数が少ない物だ、量産できる物でも……


「あ」

「一体なにを見つけたんです!?教えてください」


量産、できるかも。


私付きになっている護衛に声をかける。


「王妃様とお話がしたいです」

「確認して参ります」

「運命様!なにを見つけたんですかあああああああ!」


相変わらず治癒師の人達は魔法馬鹿だ。


王妃様はせっかくだからとアムも呼んで室内庭園でお茶をしようとおっしゃってくださった。

忙しい中、時間を作ってくれた王妃様には申し訳ないけれど働いてもらおう。


「お会い出来、光栄です」

「…え、ええ、私も光栄ですわ」


どうやら陛下とは違い、王妃様は私に対する困惑がまだ続いているようだ。


「アムも」

「うん、ちゃんと休めてる?」

「問題ありませんよ」

「そう…」


席に座った私は室内庭園を見渡す。

ここまで美しい庭園を作れるのはこの国では王妃様かアムくらいだろう。


「しっかりしないとね…」


ぶつぶつと喋り出した王妃様は一生懸命私と向き合おうとしている。

そんな姿を苦笑いして見ているアムは困惑していなさそう。


「伺いますわ」


気をしっかり持った王妃様は私の願いを叶えようとしてくれている。


「予防薬にはキャリーという薬草が必要だと分かりました」

「それがあれば完成するのかしら」

「計算上は」

「どうして私に伝えるの?」

「王妃様にキャリーを量産してもらおうと思っています」

「私に…?」


キャリーは南の辺境にある、育てるのも南でないと向いてない。


だけど…


「加護があれば簡単でしょう」

「「!」」


あれ、どうして二人ともびっくりしてるんだろう。


「秘匿しているはずなのに…」


アムの言葉に頭を傾げる。

なにを秘匿?今の会話に秘匿することなんて…あ。


「失礼しました」


加護持ちだと周りは知らないのか。


「その、かみさ…あなたには分かるのかしら」

「ええ、見えますので」

「「見える…」」


王妃様とアムには精霊の加護が付いている。

どこかで精霊と出会って気に入られでもしたんだろう。

森の精霊の加護が付いている者は花々の扱いが得意になる。

この庭園も王妃様が手ずから世話をしているんだろう、だからこそここまで美しい場所になっている。


「でも薬草なんて育てたことないわ…」

「加護の扱いについては私が教えます」

「そんなことまで出来るのね…」


しばらく考え込んでいた王妃様はキリッとした顔付きになった。


「陛下に相談してからになりますが、私で良ければ引き受けましょう」

「ありがとうございます」


キャリーを南から取り寄せるまで私は休息でも取ろう。


「アム」

「うん?」

「一度家に戻りたいのですが、許可は出ますか?」

「あ、うん。大丈夫だと思うよ」

「今日にでも」

「分かった。僕が伝えてくるよ」

「お願いします」


アムが居なくなり、王妃様と二人きりになったのでせっかくだ、聞きたかったことを聞こう。


「まだお時間はありますか?」

「ええ」

「でしたらアムの幼少期のことを聞きたいのです」


ポカン…とした後、くすくすと笑った。


「あなたでも気になるものなのね」


お茶会の続きをしたかった。


「そうねぇ…王族らしからぬ子だったわ。無邪気で悪意なんて知らないような態度にみんなメロメロだったわ、いえ、今も骨抜きね。あの子の兄たちは特に」


やっと聞けた。


「そうね…不安だったわ。あんなに純粋な子、この世界で生きていけるかどうか」


眉を下げた王妃様は母親の顔付きになった。


「でも、あなたに出会ってから変わったわ。嫌いな者を取り入れ、悪意にまみれる環境に自ら飛びついた。最初は不安だったけれど…ありがとう」


お礼を言われることなどしていない。


「あなたが側にいるからこそ、悪を見ても染まらずにアスカムで居てくれるの。それがどれだけ嬉しいことか」


私がいるから?


「あら、話が逸れてしまったわね」


そう言われて気付く、私もアムがいるから頑張れていることがあることに。


「そうそう、昔庭師と仲良くなった時、「ぼく、にわしになる!」なんて言って周りを困惑させたのよ。ふふっ、とても可愛らしい夢だったわ」


アムの幼少期は眩い話ばかりだった。

私の過去も他者が聞いたらそう思うのかな。

私自身で消した記憶にもそんな話があるのかな…なんて初めて過去を自分の心で取り戻りたいと思った日だった。


♢


【アスカム・ヘザリントン】


母上との雑談を終えた後、家まで送ると言ってお城から出た。

馬車が嫌いなラナで良かった。

だって馬車で送ったらすぐ着いちゃうもん。


「ラナ!」


城門から出たところでラナがふらついた。


「ラナ…」

「大丈夫ですよ、少し傾いただけですから」


今更になってラナの無茶に気付いた。

朝から夜が更けてもずっと研究し、薬を作り続けてたんだ。

疲れないはずがない。


「お城で休もう」

「実を言うと私、寝起きがすこぶる悪いんです」

「ん?」

「人間とは違い、何年でも眠ることができるんですよ」

「それは凄いね」

「キャリーが届くまで寝続けたいです、お城にいると叶いませんから」


確かに朝起きてこなかった心配してしまうだろう。

長く眠りにつかれたら体の不調を疑ってしまう。


「うん、分かった。じゃぁ僕が運ぶ」

「はい?」


この距離でも安らいで欲しいとラナを抱き上げた。


「寝てもいいよ」


キョトンとした顔をした後、ゆっくりと僕の肩に顔を乗せた。


「お言葉に甘えて」

「うん」


限界だったのかすぐに眠ってしまったラナを大切に抱えて家まで歩いた。


「警護は」


ラナを寝室まで送り、下に降りた。


「配置しております」


ラナが長く眠りたいというなら、環境だけでも整えておきたい。


「迎えには僕が来るよ」

「かしこまりました」


予防薬は早く必要だ。

だけど今だけはゆっくりとした時間が流れて欲しい。

その間、僕のできることをしよう。


ラナを酷使しなくていい未来を作るんだ。


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