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今までとは毛色の違う遣いがやってきた。
「陛下から王城へ来るようにとの命が下っています」
ああ、アムの遣いじゃないのか。
「今、私のお店は注目されすぎています。留守の間、薬が盗まれる可能性があるので家の警護をお願いしたいのですが」
「そちらも手配済みです」
「でしたら薬と薬草を運んでください」
「かしこまりました」
陛下が私を呼ぶ理由はアム関係ではないだろう。
多分…ああ、駄目だ。頭が上手く働かない。
さすがに疲れたな。
「行けます」
久しぶりに外へ出た。
明るい空はまるで隣人達の笑顔のようだと感じた。
日常に戻りつつある隣人達はあの太陽のように明るい。
王城に着くと応接間ではなく玉座の間に通された。
扉が開く前から頭を下げようとして体がふらつく。
こんな体たらくではアムの運命としてみっともないと思い、気力で持ち直した。
扉が開き、歩みを進める先にいるのは陛下と妃様。
「薬師よ」
声をかえられたので止まると言葉が続く。
「此度の活躍、私の耳にも届いている」
「光栄にございます、国王陛下」
「じきに名誉ある勲章を授けると誓おう」
「もったいないお言葉でございます」
「先に願いがある」
「陛下からの願い、必ず叶えてみせましょう」
「城で薬を作ってくれるか、場所も人もこちらで手配した」
「承知いたしました」
陛下は困惑が落ち着いたらしい。
私を一民として扱い、正しく国を機能させようと奮闘しているのは今の会話で理解した。
「連れて行け」
玉座の間から出て連れて行かれた場所は魔法馬鹿が集っていた。
私が到着するとマントを羽織っている人たちが深々と私に礼をし、その後すぐに顔を上げた。
その目は輝いていて一体なにを期待されているのかと少し腰が引けた私を囲う。
「あ、あの!どうやって魔法陣を作り上げたのですか!?」
「本当に素晴らしいですよ!未だ読み取れませんが、あんなに複雑な魔法陣は知らない!」
興奮に当てられた私はげっそりしそう。
「薬草の扱いも!あんな手法があるとは知りませんでした!」
時間と気力があれば相手していただろうけど、今は…
「あなたは薬草を砕いてください、あなたは混ざり合う時の色の違いを横で見ていてください、あなたは魔法陣への魔力の流し方を勉強してください」
答えてもらえなくて寂しそう。
「動く」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
まずは手本を見せていった、次に作り方を教え、横で観察させた。
好奇心旺盛な人達ばかりなのか夜中と呼ばれる時間まで拘束された私は癒しが欲しくなり、与えられた客間から久しぶりに転移した。
「すー…すー…」
「…」
寝室だろう。
アムは疲れた顔で寝ていた。
ベッドに乗り上げ、アムの頭を撫でてみた。
うん、癒される。
ふとベッド横のテーブルを見ると私の髪留めがあった。
もう少し寝顔を見てみたかったけど、仕方ない。
アムも頑張っているなら私も頑張ろうと客間に戻り、部屋の扉を開け護衛に声をかけた。
「治癒薬だけでなく予防薬も作ります。こちらに記載してある薬草を用意してください」
「かしこまりました」
部屋に戻り薬を作り続けた。
眠るのが好きな私は寝たくなったけど、今は眠る時ではないと手を動かし続けた。
王城で薬を作り続けて10日経ったけど、手伝える者はおらず結局一人で作業している。
私の薬草の扱い方、魔法陣への魔力の流し方はこの世界では技術が高すぎるらしい。
なるほど。
「陛下に話があります」
「かしこまりました」
「内密にと」
「…かしこまりました」
陛下は忙しいのか、話ができたのはそれから3日後。
内密という話は伝わっているのか、通されたのは客間ではなく室内庭園だった。
蕾が多い庭園は空気が澄んでいる。
ここは王妃様の居場所なんだろうな。
「此度はお時間を作ってくださり、感謝いたします」
「楽にせよ」
席に座ると護衛の数が目につく。
「早速だが話を聞こう」
「その前に私のことを知る人のみ同席を願います」
「…」
ピクッと動いた眉を見て残念だと思った。
アムならもっと驚いてくれるのにな。
驚いて欲しい訳じゃない、アムの反応が欲しいんだ。
陛下が合図すると数名下がった。
「聞きましょう」
どうやら私自身と話す時は敬うと決めたようだ。
なら私もそれらしく振舞うかな。
「私の存在はイレギュラーだ」
「はい」
「今を生きる人間達が協力して国を発展させていくのはとても自然なこと」
今ある技術で暮らす分には問題ないと思う。
「イレギュラーが新たな技術を持ち込むと時に混乱を引き起こす」
「…はい、おっしゃる通りです」
だけど急な発展は良し悪しがある。
悪に流れるようなことをしたくはない。
「私の技術は公開しないことにした」
「ですが…現状は厳しいかと」
「薬は作る。治癒薬の作り方を教えることも変わらずに」
「懸念事項は」
「これから先、私が作る薬は公開しないことにした」
「難しいかと」
今の私は国で囲われている。
新薬を作れば必ず国の耳に入り、必要とされるだろう。
「私だけが作れる新薬は作らない」
「…」
今回の病で私の力が必要不可欠だと考えているのだろう。
「ここに来て治癒師の技術を正しく理解した。これからは皆が作れる技術だけを渡す」
「なぜそれを伝えるのですか」
「今回の病は私の薬がなければ広がる一方だった」
「仰る通りです」
「だからこそ次代を作りなさい。今こそ人員の底上げを。その為の協力は惜しまない」
国がどこまで動けるか分からない。
だけどこれから先、同じようなことが起こっても私の力に頼らず人間達だけで解決できる力を蓄えなければ潰れてしまう。
それほどこの国の技術は低い。
「すぐには動けません」
「そうね」
「ですがあなた様がいる今を大切にしたいと思っております」
「利用できるうちに利用なさい」
「はい、利用させて頂きます。今は出来なくとも遠くない未来、実現することを誓いましょう」
「ありがとう」
「こちらの台詞ですよ、神様」
私としての話は以上だ。
「頼んでいる薬草が届き次第、予防薬を作ろうと思いますが陛下の意見が聞きたいのです」
「願ってもないことだ、頼む」
「はい、この国の為に尽力することを誓います」
話は終わったけどもう少し庭園を堪能したい。
でも今はそんな時間はないか。
今度アムにお願いしよう。
一緒に庭園を眺めたいと。




