12
丁寧に整えられたテーブル上にはこの国のデザートと紅茶が置かれている。
お皿も一つ一つ、吟味された物だと分かるのはメルもだろう。
ライは尻尾が揺れてる、早く食べたくなったんだろうね。
そんなライの尻尾をメルが尻尾で叩いてる。
「それにしても二人とも大きいから驚いてしまったわ」
水色の髪に瞳の王妃様がメルとライを見て言う、そうなんだよねぇ。二人とも2メートルはあるから大きいんだ、私が凄くちっちゃく見えるくらいには。
「であれば王妃様の前ではいつも屈んでいましょう」
「まぁ、ふふっ、それは楽しそうね」
ライはお茶会自体を楽しんでるらしい。
「よく似た二人だわ」
「「…」」
その言葉で私とライはつい目を合わせた。
メルはライと似てると言われるのが嫌いなんだよねぇ…。
「似てないもん」
「「…」」
どうやら大人しくしようとはしてるみたい。
静かな抵抗をしてる。
「あら、気に障ってしまったかしら?ごめんなさい」
「いーよ」
「ふふっ、ありがとう」
緑色の髪と瞳の陛下がデザートを口に含んだのを見て、やっと食べられると喜びながらデザートを口にしてるライ。
「名を聞いても良いか」
陛下が私たちに声をかける。
鋭い声は確かに施政者として存在している者だ。
「ラナ・サールビーと申します」
「メル・サールビー」
「ライ・サールビーと申します」
紅茶を飲んだメルは顔をしかめた。
美味しくないんだな。
「陛下、メルが紅茶淹れてもいい?」
「む?良いぞ?」
従者から茶器を受け取ったメルは紅茶を人数分淹れていくから私は紅茶を飲まないでメルの紅茶を待とうとカップから手を離した。
「薬師だと聞いた」
「はい」
「息子の傷を治してくれてありがとう」
「お代を頂いていますから、お礼は結構ですよ」
「ふっ、そうであったか」
アムの兄たちはずっと楽しそうだ。
アムに話しかけては嬉しそうにしてる。
「アムの幼少期はどんな子でしたか?」
「今と変わらんよ」
「そうでしょうか?最近は顔付きが大人になってきましたよ」
「そうだな、ちょこまかと動く姿は未だ可愛らしいが」
兄たちはアムの成長が嬉しそう。
「それもそうだな、最近は立派に動いてる」
出来れば最近の行動ではなく、幼い頃を知りたかったんだけど。
「アスカムは昔から誰とでも仲良くなれる才能があるわ」
そうだろうな。
アムは懐に入り込むのが上手い。
「む、茶が出来たか」
毒見を終えたのか紅茶を配ってる。
一口ずつ飲んだ顔は驚愕。
みんなその顔好きだよね。
「これは…」
「美味しいわ…」
ふふんと得意げな顔をしてるメルの頭を撫でたい気分。
「ラナの紅茶も美味しいんだ」
なぜかアムも得意げな顔をしてる。
「ママのどんなところが好きなの」
「努力家なところ、人の為に無意識に考え実行するところ、料理が上手なのも好きだけど…一番は笑顔かな」
「ママの全てを知らないくせに」
「うん、だからこれから知っていきたいんだ」
「…」
笑顔…
アムの笑顔は眩しいくらいに明るい。
その表情はきっと泣き顔よりも美しいのだろう。
「知って絶望したらどうするの」
「絶望…?どうして絶望するの?」
「思い描いていた人物像と違ったら?」
「うーん…でもきっと本質は変わらないでしょ?」
「…」
私のことを知って絶望したら………うん、その時の顔も見てみたいな。
「お母様のことを愛しているのね」
「愛してるに決まってるじゃん」
「私も愛してるよ」
「メルも」
「ライも」
愛を伝え合う今が幸せ。
「ふむ…良き家庭だ」
「ありがとうございます」
「アスカムと家族になる気はあるのか?」
その時、ガタンッ!と音を立てながらメルが立ち上がった。
「どうしたの?」
「ママに子どもができたらどうしよう!?」
「僕との子ども!?」
一体どんな心配をしているんだ、この子は。
「できるかな?」
「できるよ!だって私たちがいるんだもん!」
メルとライがいるから子どもが出来るってどんな道理?
「弟か妹ができるの?」
「なに呑気なこと言ってんのよ!」
「なにが駄目なの?」
「だって…!………しんじゃったらどうすんのよ………」
「…」
メルとライが悲しそうな顔をしたから急いで立ち上がって二人の前でしゃがむ。
「なにが怖いのかな」
「…死んじゃったら怖いから」
「でもそれも選択の一つだよ?」
「っっ~~、そんな選択!私は認めない!」
「メル、落ち着いて」
「ライはうるさい!」
メルを落ち着かせないとマズイ。
空が曇ってきてる。
「メル、落ち着きなさい」
「だって…!だって…!」
「メル」
「ぐすっ、わ、わか、った」
ライがメルを抱きしめるから上から二人を抱きしめた。
メルを慰めることで必死で気配に気づかなかった。
そんな私たちの背後から声が聞こえたんだ、今聞こえてはマズイ声が。
「ねぇー、どこにいい人間がいるのー?」
「「「…」」」
シャキンッ!と音がして、剣が振り下ろされる。
きっとバートンが侵入者である背後の子に振りかざしているんだろう。
「なあに?僕と遊びたいの?」
その剣を軽々しく受け止めた子はニヤリと笑った。
「陛下たちをお守りしろ!」
ああ、非常にマズイ。
「楽しくなさそうだけど、ま、いっか。遊んであげる」
魔力を練る感覚が背後からする。
だから私はその手を握って阻止した。
「邪魔するのー?」
「…」
ここでなんて声をかけていいか分からない。
というか、どう現状を収めよう…。
「やっぱりここって禁止区画ー?」
「そうよ」
「なあんだ、残念」
そう言って目の前から消えていった悪魔。
ここで転移は目立ちすぎるのに…!
シャキン…
私の首元に刃が当たる。
「バートン!やめて!剣を降ろして!」
「聞けません」
背後から剣を伸ばすバートンから気迫を感じる。
「あの禍々しい男はどなたですか」
どう答えるのが正しいのだろうか。
「どうやって侵入し、消えたのか説明を」
他の護衛がメルとライの腕を背後で捻り、無理やり立たせた。
「黙秘は通じません、返答を」
「バートン!やめてよ!」
「殿下をお守りしろ」
「「はっ!」」
「ラナは危害を加えないよ!僕は傷を治してもらったけど傷を受けたことはないだろう!」
ここで回避できる答えはあるのかどうか。
「キラキラ出す?」
ライもそれしかないと思ってるのか私に提案する。
「答えてください、それとも牢屋で話し合いますか」
悪魔の説明ができない。
説明するとなると私自身を説明しなければならない。
「牢屋がお好きなようで」
「バートン!!」
はぁ…とため息を吐いて首に当たってる剣に触れる。
「なっ!?」
剣を消滅させた瞬間、バートンが襲いかかってきた。
「バートン!やめろ!!」
拘束しようとした手を捻り、体をテーブルに落とすと護衛が一斉に私を囲った。
「バートン、あなたもう少し訓練しないとアムを守れそうにないわ」
「っ」
「………ラナ?」
ライとメルに合図すると拘束している護衛を同じようにテーブルへ落とした。
警戒の目が届く。
アム以外はそんな目をしている。
「二人とも」
「「うん」」
無実を証明する為に二人へお願いする。
「キラキラを出して」




