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あの火災以降、来店する方が増えた。
それが今の困り事。
「薬師、これはどんな薬だ?」
「秘密です」
「これは?」
「秘密です」
なんというのでしょう、こういう人達は。
ああ、野次馬ですね。
店内を見渡し、時に質問しては帰っていく。
怪我も病もしていなさそうな人達ばかりやって来る。
薬に関して答えてしまうと今後盗まれてしまう可能性があるので答えていない。
ボロ屋は簡単に侵入出来てしまうだろうから。
「今日も人気だね」
アムがやってくることを最近は期待してしまう。
だって…
「じゃ、じゃぁここらで」
店内に居た人達が帰ってくれるから。
「上がりますか?」
「ううん、今日はお誘いに来たんだ」
そう言うと1枚の封筒を差し出してきた。
開いてみるとお茶会の誘いだった。
「ご両親とですか?」
「うん、兄たちとも」
そういえばどんな幼少期を過ごしていたのか気になっていたんだった。
「お受けします」
「ありがとう」
5日後にあるお茶会は王城で開催されるらしい。
「あとこれも」
護衛の人から受け取った大きな荷物をテーブルの上に置いたアムは楽しそうに笑う。
「似合いのドレスを作ったんだ」
「ご丁寧にありがとうございます」
「良ければお子さんたちも」
「え?」
ライとメルも?
「家族の顔合わせになるのかな」
ちょっと緊張してるアムに聞きたいことがあったんだと思い出す。
「そういえばあの火災はどうなりました?」
「ああ、あれは冒険者の男が人為的に炎を出したらしい、あと魔物も」
やっぱり作為的だったのか。
あの炎は魔法が使われていたから。
「痴情の縺れらしい」
なんともくだらない理由だった。
「今日はここで」
「はい、お茶会楽しみにしてます」
「僕も」
アムが去った後、閉店の札を表にしてメルたちに声をかけるとすぐにやってきた。
「お茶会だって」
「行くの?」
「メルもライも招待されてる、行く?」
「行って確かめる」
メルは一体なにを確かめたいんだろう。
「俺、お茶会久しぶり。楽しみだね」
「なんであんたってそう呑気なのよ」
「ええ?そうかなぁ?」
アムが置いていった箱を叩くと不思議そうに開くメルはふんっと鼻を鳴らした。
「まぁまぁじゃない?」
「こっちはメル宛てかな?似合うと思うよ」
「ふんっ!」
どうやら気に入ってくれたらしい。
尻尾がぶんぶんと動いてる。
「礼儀作法が乗ってる本」
「「ありがと」」
本を読みだした二人は移動手段が気になるみたい。
「ここからこのドレスで城まで行くの?」
「転移したいんだけど…」
「だあめ、転移はこの国じゃ珍しいでしょ」
「「ええー?」」
「馬でも借りる?」
「ドレスしわくちゃにしたくないもん」
「じゃぁ歩こうね」
♢
お茶会当日、私は赤いドレスを身にまとっていた。
メルとライは黒のドレスと正装。
「綺麗だよ」
「ふんっ!」
ライの尻尾がぶんぶんと揺れてるけど、綺麗だと言われたメルの尻尾も負けじとぶんぶん振ってる。
「そういえば二人は子どもなんだから夫婦としての会話は控えてね」
「分かってる」
「そうだった!」
「馬鹿な男」
「俺は馬鹿から卒業しただろ!」
また口論が始まりそうだったから二人の手を繋いでお店から出ると外には護衛の方がたくさん居た。
「お迎えに上がりました」
「「「…」」」
最も私を警戒してる紫色の髪に瞳のバートンが挨拶をした。
湖での出来事は二人に話してある、バートンが目を光らせているとも。
「馬車を用意しましたがいかがなさいましょう」
「歩いていきます」
「かしこまりました」
20分ほどかかる道を歩くと周囲から驚きの目で見られる。
それもそうか、ドレスだもんね。
にしても………不穏な視線ですね、バートン。
「失礼、少し話をしてもよろしいですか」
「構いませんよ」
私の横に立つバートンは私にというより、私たちに用があるようだ。
「殿下に近付くのはやめて頂きたい」
まさかの正攻法。
「あっちから近付いてきてるんじゃん」
メルの反論は正しいけれど、正しくない。
今は私も歩み寄ってるんだから。
「あなたが離れてくれたらいいのでは?」
「運命から引き離そうとしてんの?」
「…」
「運命がどれほど大切な存在か分かってないとは言わせないわよ」
「…」
メルとライは運命の相手だ。
だからこその言葉だ、私が言うよりも重みが違う。
「あなたはどうお考えですか」
私の気持ち…。
今更だけど私の気持ちに初めて向き合う。
そうだなぁ…アムに対する気持ちか。
「次はどんな驚いた顔が見れるのだろうと思っています」
「…なんです?」
「私のことを知れた時、どんな顔をするのか楽しみです」
「…」
思わずくすくすと笑ってしまう。
だってアムの顔を想像したら笑えてきてしまうんだもん。
「ママ…」
「だから言っただろ、様子見だって」
アムは未熟。
まだ人生を積み重ねていない。
だからこそ楽しみなんだ。
成長した時、どんな対応をするのか。
「離れるつもりがないのですね」
「どうでしょう、メルが嫌がったらやめますよ」
「…」
「「…」」
そんな話をしていたらあっという間に到着した。
城内は広いのは見て取れる。
だからここからも長いだろうと案内される道を歩いていた。
「メル、見て。綺麗だね」
「今度花かんむり作ろ」
「うん!」
見てみると確かに綺麗な庭園だ。
人の手が加わってる不自然な自然な美。
花の匂いが漂ってきて少し酔ってしまう私は鼻をきゅっと抑えて匂いを遮断する。
二人は慣れているのか、匂いに対して思うことはないみたい。
「そっくりだね…」
「ほんと」
私にはまだ見えないけど、どうやらアムが居るみたい。
庭園でお茶をするらしい私たちが近付くと確かに似た顔があった。
だけど色味だけは異なる人たちが。
あと10歩ほどで対面する時、私たちは一斉にしゃがんだ。
「「「この度は国王陛下、王妃様、王子様方にお会い出来光栄でございます」」」
この国の挨拶をして声をかけられるのを待った。
「まぁ、なんて綺麗な所作なんでしょう」
女性の声が聞こえて、続けて男性の声が聞こえた。
「気にせず楽にしてくれ、今日は無礼講だ」
その言葉に同時に顔を上げると確かに優しいけど厳しそうな人たちと目が合った。
アムのご両親と兄たちは柔らかな笑みを浮かべているのを見て、警戒しているのはバートンくらいだと認識した。
「座りましょう」
案内された席にはすぐに座らず、みなさんが座ったのを確認してから座り出した私たちを関心するように見つめているのは母親である王妃様だろう。
「平民と聞いていたけれど…元は貴族だったのかしら?」
「いいえ、平民でございます」
「それにしては動作も作法も素晴らしいわ」
「付け焼刃ですが練習しましたので」
「素晴らしいご家族ね」
「「「ありがとうございます」」」
楽しいお茶会が始まると信じていた。
予期せぬ乱入者が現れるまでは。




