6話 買い物2
駅まで戻ると咲ともう1人がジュース片手に待っていた。
「遅い!着いたって言ったじゃん」
決して怒っているわけではなく、待ちきれなくてウズウズしてた感丸出しの咲。
「ごめんって。こいつが歩くの遅いから」
「いや、お前がスキー板見たいって言うから」
「咲ちゃん。この子誰?」
咲の友達が奏の視線を送る。
「え、知らない。それより服買ってくれる条件って何?」
「こいつの服選び。俺は車に荷物置いてそこのカフェで休んでるから」
「楽器も持ってって。あ、千尋ちゃんのも」
「いいんですか? 」
「大丈夫。預かるね」
拓也は両手に楽器、肩にはさっき買った奏の服をかけてスタスタ歩いていく。
あいつ逃げた??
「あ!そういえばお金もらってないよ」
奏が気になりチロチロ見てた咲だが、お金がないと気付いたら瞬間拓也が逃げた方を注視した。
しかし、時すでに遅し。
「大丈夫です。私がもらってます」
ポケットから財布を出すと咲はホット胸を撫で下ろした。
「なるほど。うーん。名前は?」
「えーっと、奏って言います」
「おー!奏ちゃんね。私は咲でこっちは部活仲間の千尋ちゃん」
「よろしくね」
「よろしくお願いします。さっそくで申し訳ないのですが、トイレ行ってきてもいいですか?」
「オッケー。じゃあここで待ってるね」
待て待て。
ほったらかしにされるとは聞いてない。
足早にトイレに向かい個室に入ってポケットからスマホを取り出す。
電話をかけると拓也は割とすぐに出た。
【「ねえ、今どこ?」
「今車着いたところ。どうした?」
「どうしたじゃない。咲ちゃんは楽しそうにしてるけど、もう1人の子にめっちゃ怪しまれてる」
「普通に有馬だーって言えばいいじゃん」
「もっと気まずくなるだけだって」
「じゃあ誤魔化すのか?そんな必要ないだろ」
「確かにそうだけど...。どうなっても知らないよ」
「どうなっても?」
「お前の社会的立場が危うくなるかもしれない」
「...。おいやめr」】
通話終了
普通は友達のお父さんが全く知らない女の子連れてきたらビビるだろう。千尋さんに変に思われても仕方がない。
「ごめんなさい。お待たせしました」
「いいよいいよ。今日はどんな服をご所望ですか?」
目が輝いている...。
「咲ちゃんこの子...。」
「あ、私、そのー、有馬です」
「有馬ちゃん!?へー。あの人娘さんいたんだ」
そうきたか。
「あの人?」
「えーっと、お父さんの友達の有馬さん。うちのお母さんと結婚する前から仲良かったんだって。私も何回か会ったことあるの」
「意外!私の事覚えててくれたんですか?」
「ん?でも有馬さん私と同い年の子供なんていたのかな?」
やべ。そもそも私なんか存在したはずがない。
「じゃあ全く知らない子じゃないんだよね。よかった....」
「びっくりさせちゃってすみません」
「いやいや、私こそ変なこと考えちゃった」
千尋は手をブンブン振る。
「あれでも有馬さん結婚してたのかな?」
咲め。勝手に娘の存在作り出して、勝手にその存在疑ってやがる。
「まあいいや!それよりどんな服?」
いいんかい。苦笑
「そ、そうですね。さっき行った店で外で着る服買ったので、次は部屋着が見たいです」
「じゃああの店だね」
「あそこ一択だね」
「じゃあそこ行きましょ。どっちですか?」
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連れていかれたのは、ふわふわした心地いい香りのする寝具屋さん。ピンクや水色、白と色がとにかく可愛い。
「どれにする?ちょうど私もこの可愛いやつ欲しかったんだよね」
咲はハンガーにかかった綿でできた前びらきのピンクと白を基調にしたパジャマを手に取る。
「え! めっちゃ可愛いし肌触り良」
「でしょでしょ。奏ちゃんもこれどう?可愛いでしょ」
咲はパジャマを奏の体に重ねる。
「いいじゃん。サイズ感も多分バッチリ」
奏は重ねられたパジャマをハンガーごと受け取り、値札を見る。
「mサイズ...は!....」
8900円?! ビビりすぎて声に出かけた。
「い、いいんじゃないですか」
「見て見て! こっちのも可愛いよ」
あー、これ終わらないやつだ。
色々見て回ったものの、最初に目に入ったパジャマを購入。
咲はピンク×白、千尋は水色×白。そして奏はオレンジ×白。
買ってしまいました。
次回からお仕事です。