薫、戸惑う
そして翌日、薫が起きてみると、そこは見知らぬ部屋だった。
おかしい。俺の部屋は和室だ。畳六畳だ。けして、決して畳二十疊もする洋室ではない。断じて。
「また夢遊病かな・・・。」
いや、家にこんな立派な部屋はない。
「誘拐?」
いや、俺をさらったところでメリットはない。|(なんせ家は貧乏だ)
「夢か・・・。」
一縷の望みをかけて頬をつねってみる。
「痛い。」
夢じゃなかった。仕方ない、どうにかして帰ろう。
しかし、部屋から出ようとしても扉に鍵がかかっているようで、開かない。何度かガチャガチャとノブを回してみるが、あかぬものはあかぬ。
「くっそ、一体何だってんだ・・・。」
薫のイライラがさらに積もっていく。
暇なので部屋の中を散策し始めた。散策と言っても所詮十疊されど十疊。家具といえば一人がけの椅子が二つと、小さなテーブル。ソファに薫の背丈|(160cm)ほどの本棚|(空だ)シングルベッドが一つだけだ。
また、壁に埋め込まれる形で鏡と収納スペースがあった。
「おいおい、冗談じゃねぇぞ!」
ふとのぞき込んだ鏡には黒髪をポニーテールにまとめ、メガネをかけた薫ではなく、茶の肩につくかつかない程度のショートヘアで、メガネも消えていた。
自分の顔をぺたぺたと触りまくってみるが、どう触っても自分の顔。
薫は訳も分からず、ベッドに座り直す他なかった。




