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親も国も人権も、全てを失った私たちが、ご主人様に救われるまで  作者: 平元桜央
役立たずの王女

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12/15

真実


「違う、世界……?」


「う、うん……」


彼は、この世界とは違う世界から来たのだという。


こちらへ来る際、元の世界で働いて貯めたお金を、こちらの通貨に換えて持ち込んだらしい。


あまりにも意味不明な話に、私は呆然としていた。


そんな私を見て、彼は「証明にはならないかもしれないけど……」と前置きし、自分のいた世界について語り始めた。


馬車とは比べものにならない速度で走る、自動車という乗り物。


遠く離れた場所の映像を映し出すことができる、テレビという箱。


鳥のように空を飛ぶ、飛行機という鉄の塊。


携帯電話、インターネット……。


「ほかにはそうだな……ロケットとか、宇宙旅行の話でも……」


「……もう、お話は結構です」


荒唐無稽な話の数々に、私は頭が痛くなってきた。


「ほ、ほら、信じられないでしょ? だから話したくなかったんだって……」


「もういいです。信じます」


「へ?」


信じられるはずがない。


けれど、今はそう言うしかなかった。


そもそも、私には彼の話が真実かどうかを確かめる手段がないのだ。信じるにせよ、疑うにせよ、今のところは何も変わらない。


「というより、信じることにします。よく考えれば、貴方のお金がどこから来たのか、貴方が何者で、どこの出身なのか……今の私にとっては、それほど重要なことではありません」


「えぇ……じゃあ、なんで聞いたの……?」


「今の私にとって大切なのは、貴方が……その異世界から来たという平民の貴方が、なぜ私たちを大金を叩いてまで買ったのか、ということです」


私が知りたいのは、彼の出自そのものではない。


彼が何を考え、何を目的として、私たちを買ったのか。


それだけだった。


「だ、だから、理由なんてないって。君たちをただ助けたかっただけで……」


また、同じ答えだった。


私はため息をついた。


「貴方の出自まで聞いたのです。もう、私たちの間に隠し事はなしではありませんか?」


「いや、隠してなんてないって……僕は本当に、君たちを……」


「金貨40万枚ですよ?」


私は彼の言葉を遮った。


「大切な人を助けるためなら、まだわかります。ですが、顔を合わせたことすらない人間、それも、もともとは別の世界にいたという人間を助けるために、そんな大金を払う人がいたら……大馬鹿者だと思いませんか?」


「ば、馬鹿って言わないでよ……! 僕だって、君たちを助けるのに必死で……!」


「……あくまで、しらを切るのですね……!」


胸の奥から、苛立ちが込み上げてくる。


なぜ、そこまでして、ただ助けたかっただけだと言い張るのだろう。


「そんな話、あまりにも荒唐無稽だと言っているんです! 見ず知らずの人間から、『貴方を助けるためだけに金貨40万枚を払いました』なんて言われたら、信じられますか!? 何か裏があると思うのは当然でしょう!?」


「荒唐無稽って、そんなこと言ったら、さっきの異世界の話だってそうだったでしょ! なんで異世界から来たことは信じて、僕が君たちを助けたかったって理由は信じてくれないの!?」


「異世界の話だって、まだ半信半疑ですよ!!」


「さっき信じるって言ったじゃん! 言ってることが支離滅裂だよ! じゃあ、何を言っても無駄じゃないか! 嘘でも君が納得するような答えを言わないと、信じてくれないの!?」


……そうだ。


自分でも、言っていることが矛盾しているのはわかっていた。


彼の言うとおり、私の主張は支離滅裂なのかもしれない。


それでも、どうしても納得できなかった。


──あぁ……どうして、この人を見ていると、こんなにも心が苛立つのでしょう。


「そんなお人好しが、どこにいると言うのですか!」


「ほっといてよ! 僕だよ!」


「……っ!」


私らしくなかった。


どうして、こんなにも声を荒らげてまで、この人を否定しようとしているのだろう。


わからない。


けれど、口を閉ざすことができなかった。


「では、なぜほかの奴隷は助けようとしないのですか!? なぜ、私たち10人だけを助けたのですか!?」


胸の内に溜まった感情を、私は彼にぶつけた。


そして、次の瞬間。


彼の口から、思いもよらない言葉が飛び出した。








「それは、君たちを助けるために、ほぼ全財産を使っちゃったからで……!!」









「……え?」


一瞬、何を言われたのかわからなかった。


彼にとっては、無意識に口をついて出た言葉だったのだろう。


けれど、私にとっては聞き逃せない一言だった。


「全財産を……使って……?」


「……あ!」


彼は慌てて口を押さえた。


けれど、もう遅い。


私は彼の目をまっすぐに見つめた。


「……詳しく、説明をお願いします」


もう、脅す必要などなかった。


彼は青ざめた顔でうなだれ、ついに観念したようだった。


そして、これまで隠していた事情を、すべて話し始めた。

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