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第75話 長崎旅行その6

静羽と遊理香が言ったことを思い出す。


僕は、2人のどちらかに返事をすれば、もう一方を傷つけることになる。


しかしこのままではいけないことも分かっている。


そう考えていると朝になったみたいだ。


気づくと美明がもう起きてキッチンでお湯を沸かしている。


僕が美明の元へ行く。


「おはよう。早いね」


「隼人君、酷い顔。眠れなかった?」


「うん。まあ」


「そりゃそうだね。こんなに楽しいもんね」


「そうだね。ところでなんで長崎にしたんだい?やっぱり夜景がいいから?」


「それもあるけど、私旅行は食べ物で決める派なんだ」


頭をガツンと殴られたような衝撃だった。


それはアネモネのセリフだ。


彼女は旅行のことをそう語っていた。


まさかと思った。


振り返ってみた。


ちょくちょくアネモネのような発言をしていたこともあった。


アネモネは赤色が好きだ。


今も美明のパジャマは赤色だ。


普段着も水着もほとんど赤色だった。


間違いない。


美明がアネモネだ。


僕は美明をじっと見る。


美明はキョトンとした顔で僕を見ていた。


僕はどうにかなりそうだった。


頭の中がぐちゃぐちゃだ。


昨日の静羽と遊理香の発言の後に、アネモネの正体が発覚したのだ。


「隼人君もコーヒー飲む?」美明が聞いてきた。


何か答えたのだろう。


僕の前にコーヒーが差し出されていた。


僕は今すぐにでも聞こうかと思った。


「君がアネモネだったんだね」と


しかしそれはアネモネが嫌がることもわかっていた。


過去の私ではなく今の私を見て欲しいのだから。


そうしていると静羽が起きてきた。


僕の横に座る。


美明が静羽に「コーヒー飲む?」と聞く。


静羽が「いただきます」と言い砂糖とミルクを入れる。


「隼人さんおはよう」と笑顔で言う。


「おはよう」と答えたが上手く笑えただろうか。


この混乱を顔に出していないだろうか。


それだけが心配だった。


遊理香も起きた。


遊理香は僕の正面に座る。


遊理香も美明に入れてもらったコーヒーを飲む。


僕の顔を見つめながら。


「みんなパンでいい?」と美明が聞く。


美明がパンを用意し、自分の分のコーヒーを持って席に座る。


「今日が最終日だね。最後は滞在時間短いけど温泉だね」と美明が言う。


しかし3人とも返事をしない。


美明が不思議そうに僕を見て「隼人君また女の子と温泉だよ」


僕が気乗りしない返事をしたのだろう、美明が不満顔になった。


しかし、僕の顔を見直して「体調ちょっと悪そうだもんね。やめておく?」


「いや。行こう」となんとか僕は言った。


「では準備が終わったら行きましょう」と美明が言う。


片付けをしてホテルを出る準備をする。


早めに終わった静羽が僕に「手伝います」と言ってきた。


僕がぼうっとしてあまり進まなかったからだ。


準備が済んだのでホテルを出た。


出る時に精算して、その後バス乗り場へ。


バスが来て、それに乗ると、隣が美明だった。


静羽と遊理香は前の席だ。


僕は外の景色を見るふりをして、窓側の美明を見る。


アネモネはずっと側にいてくれた。


そして部活立ち上げに真っ先に来てくれた。


そして僕に好意を見せてくれた。


これからアネモネと交際できると思った。


その時前の席から静羽と遊理香が僕に言う。


「最後楽しみたいね」と。


アネモネばかりだった思考に、再び静羽と遊理香が入り込んできた。


美明が僕の方に振り向いた。


3人の視線が僕に向いた。

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