第53話 スパリゾートその1
テスト明けの休みの日、4人は地元の駅から新宿に向かった。
テスト前に3人で話し合い、箱根の方に決まったのだ。
宿泊や電車の手配はすべて美明が行い、僕は事後報告を受けただけだった。
なんで僕は話に参加させてくれないんですかね。
3人がいろいろ決めていく中で、1つ美明から注意事項が2人に伝えられた。
今後僕に「だって○○じゃん」と言ってはいけないこと。
この言葉を聞くと、僕の様子がおかしくなると伝えられた。
2人とも心当たりがあるのか、すぐに納得した。
もちろん僕はその決め事があったのを知らない。
荷物を持って朝の満員電車に揺られ、新宿駅へたどり着く。
ここからは私鉄の特急で箱根湯本まで1本だ。
まず問題になったのが電車の席だ。
2人ずつ座るタイプで、誰がどの席に座るか。
そして決まったのが、左の2席に美明と遊理香。
そして右に僕と静羽だ。
美明と静羽が窓側になる。
先に奥の席に座った静羽が「隼人さん箱根までよろしくね」と言った。
「こちらこそ」と笑顔で答えた。
心なしか左側からの視線が痛い。
電車が出発をする。
車内アナウンスが流れ、注意事項などのガイダンスが始まった。
左を見ると2人は早くもお菓子を食べながら喋っている。
一方こちらは、特に会話もなく静かだった。
少し経つと、静羽が携帯クーラーボックスを出し「チーズ、食べますか?」と聞いてきた。
まさかチーズを持参しているとは思わなかったので驚いた。
僕はやんわりと断ったが、静羽はシュンとしてしまった。
そこで「やっぱりもらうよ」と言うと静羽が笑顔になって「どのチーズがいいですか」と言ってくる。
1つじゃないんかいと思った。
電車は多摩川を過ぎ、神奈川県に入った。
すると富士山が見えてきた。
いつか富士山を登ってみたいなと思ったが、美明の体力のなさでは無理だろうと即断念。
大きな川を通過する。
相模川との標識が。
外はのどかな景色に変わっていく。
何か喋らなきゃと思い「静羽テストどうだった?」と聞く。
「まずまずだったと思います。隼人さんはどうでした?」
「僕はダメだった。ちょっとテスト勉強に集中出来なくてね」と正直に答えた。
「そうなんですか。今日はテストを忘れて楽しみましょう」
「そうだね」
そうなのだ。
テストの話なんてどうでもいい。
今日はスパリゾートなのだ。
水着姿が楽しみだ。
顔に出てしまったのだろうか。
静羽が「なにか変な事考えていません?」と聞いてくる。
「考えていないよ。なんで?」
「顔がニヤついていました」
「こ・これはコーヒー風呂とかワイン風呂とか、ウォータースライダーとかが楽しみだなあって」
「ならいいんですけどね」
どうやら誤魔化せたようだ。
外の景色を見ると富士山が近くなってきた。
開成駅を過ぎるともうすぐ小田原だ。
小田原を出発。
左手にお城が見える。
小田原城だ。
城が見えたことで、美明のテンションが上がった。
意外と近くを通ったしね。
そしてここまで来ると箱根湯本までは15分ぐらいだ。
箱根の山々を通って行く。
静羽が窓の外の景色を見ている。
横顔かわいい。
視線に気づいたのか「もうすぐですね」と声を掛けてくる。
「そうだね。流石特急早いよね」と僕が言う。
車内アナウンスが流れ、終点箱根湯本駅が間近なのを告げる。
「お出口は右側です。この先も気をつけていってらっしゃいませ。またのご利用をお待ちいたしております」
新宿から1時間40分ほどで箱根湯本駅に到着。
この後はバスに乗り換え。
駅から5分ほど歩いてバス停へ行き乗車。
隣には美明が座った。
平日なのに結構車内は混んでいる。
バスに揺られながら20分ほどで小涌園の停留所に着いた。
10時30分を少しすぎたぐらい。
目的地は目の前だった。




