第43話 公園
家に着くと美明から連絡が来た。
ちょっと家から出てきなさい、と。
僕は疲れているからと断りの連絡を入れたのだが……
「隼人く~ん。出てきなさ~い」と外から美明の声がした。
近所迷惑になるので、僕は玄関のドアを開けた。
「ちょっとそこまで」と美明が言う。
仕方がなく美明の後をついて行く。
近所の公園にやってきた。
小さな公園だ。
美明がベンチを指さすので、僕はそこに座る。
自販機で缶コーヒーと紅茶のペットボトルを買い、缶コーヒーを僕に渡す。
美明が紅茶を一口飲んで言う。
「帰り、どうしたの。ずっとぼーっとしていて」
「考え事をしていただけだ」と僕が答える。
ふうんと言いながら、目は納得していない様子だ。
「隼人君、たまにぼーっとして心ここにあらずって感じになるよね」と美明が言う。
「そんなことは」
「何か悩みでもあるの?」
「いや大丈夫。美明と話して落ち着いた」
「ならよし」
「ありがとう」
「今日の鎌倉楽しかったね。この前の岐阜もだけど。また泊まりで何処か行きたいな」
「美明は本当に旅行好きだな」
「だって旅行楽しいじゃん」
またもやだって○○じゃん。
今度は美明が言った。
僕は動揺した。
「隼人君?」
答えられなかった。
「隼人君どうしたの?」
呼吸が荒くなる。
気分が悪くなる。
「私なにか変な事言った?」
美明を見られない。
僕は手に持っていた缶コーヒーを落とした。
美明が背中から抱きついてきた。
そして「ごめんねごめんね」と言う。
美明は先ほど自分が言った言葉を思い出す。
そして鎌倉で遊理香が言った言葉も思い出す。
たぶん隼人君は”だって○○じゃん”って言葉に反応するんだ。
美明が抱きついてきてしばらく経った。
美明の体温で、僕はようやく冷静さを取り戻した。
そして「美明、大丈夫だから」と言った。
美明が僕の顔を見て「ほんと?」と聞いた。
「ああ」と僕が答える。
「よかった」
「なんかごめんな」
「私の方こそごめん」と美明が言う。
しばらくお互い沈黙する。
少し経ってから、僕が「また旅行に行きたいね」と言う。
「冬休みにどこかに行きたい」と美明が言う。
「どこに行きたいの?」
「どこか。う~ん、温泉。一緒に入ろう」
「いやそれはまずいでしょ。タオル巻けば平気平気」と笑顔で美明が言う。
僕は温泉はともかく、また遠くへの旅もしたいなと思った。
そして僕のことを心配してくれた美明に感謝したいと思った。
アネモネに過剰反応しすぎだ。
でなきゃ3人に失礼だ。




