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Scene46, -転校生の最期-


とても信じられない。

たった1日ではあったけど

話をして。笑い合って。

ずっと一緒に歩いてきた愛玩式さんが


今。ぼくのうでの中で

眠るように死んでいった。


現実を受け入れる事が出来ない。

空虚だ。

思考が止まる。

愛玩式さんとの思い出だけが

ひとつひとつ鮮明に思い出される。

ぼくは。

涙を流しながら

意識のない愛玩式さんの体を抱きしめる事しかできなかった。



番長さんが叫んでいる。


「難無途ぉぉぉ!!」

「きさまだけは!!」

「きさまだけは断じて許せん!!!!」

「殺してやる!!!!!」


難無途に馬乗りになり涙をボロボロとこぼす番長。

難無途もまた涙をあふれさせながら。ヘラヘラと笑って言う。


「そうさ!殺せよ!!!」

「ぼくは!」

「愛玩式も!お前の恋人のド正義も!」

「この学園の生徒も大勢殺して来た!!」


「どうだ憎いだろ!」

「ぼくの事が嫌いになっただろ!!!」

「なら殺せよ!!」


「誰にも愛されない!誰からも憎まれない!!」

「そんな世界もうまっぴらなんだよ!!!」


「それならもう!ぼくを嫌って!」

「ぼくを殺してくれよ!!!!」


泣くように笑いながら叫ぶ難無途。

それは悲痛な叫びだった。


番長の拳が振り上げられる。

その拳がまっすぐと振り下ろされ・・


難無途の顔の横、地面に突き刺さる。

番長が悲痛な声を上げる。


「くそぅ・・・!!」

「難無途ぉ。」

「うちはきさんが憎い。殺したいほど憎い!!!」


「だが。」

「きさんの言葉を理解ってしまうところもある。」


「きさんのような人間が救われぬ・・!」

「そんな世界を憎んでしまう気持ちがのう・・!!!」


番長のその言葉に。

難無途の表情から笑いが消えた。


「なんだよ!!」

「なんだよ!!!!」


「なんでそんな事言うんだよ!!!!」


「ぼくが救われる世界なんてあるわけないだろ!」

「あっちゃいけないんだよ!!!!」


涙をボロボロとこぼしながらにらみ合う2人。


やがて難無途が絞り出すように声を出す。


「愛されない人間が愛されない世界・・」

「こんな世界もううんざりなんだよ・・」



「わかったよ・・」

「こんなクソみたいな世界・・」


「ぼくの方からこの世界を退場してやるさ・・。」


「ぼくが!」

「ぼくが本当に嫌いなのは!!」


「ぼく自身のこの人生なんだからなああ!!!!」


難無途が。

ありったけの声を振り絞り叫ぶ。


「こんな人生!!!」

「大っっっっキライだあああああああ!!!」


ふたたび、閃光のような光。

遅れて聞こえる爆音。

ドォォォォォン!!という音がぼくの背後から響き

爆風がぼくの体を痛いほど叩きつけてくる。


でもぼくには、それすらももう何も感じる事はできなかった。



・・それからどのくらいの時間が経ったのだろう。


爆煙はすっかりと消え

静寂の中。

ぼくは愛玩式さんを抱きしめ声もなく泣いていた。


ぼくの真横でザッと足音は聞こえ。

ぼくは力なくその足音の主を見上げた。


番長さんが、物言わず立っていた。


「終わったぞ。坂井。すべてがな・・。」


ぼくの横にしゃがみ込む番長さん。

真剣な面持ちで続ける。


「じゃがの坂井。」

「やつはとんでもない置き土産を置いて逝きおった。」


ほれっ。と番長さんは自分の服をめくって見せてきた。

番長さんの腰のあたりに、大きなふくらみができていた。

時計の円盤のようなものが小さくついたそれに

なんとなく察しが付く。


・・逃れられない死の爆弾。


「・・お前の・・肩にものう。」


そう言われて初めて気付いた。

ぼくの肩にもまた同じものが付いている。


そうか。ぼくたちは死ぬのか。

この爆弾で。


ぼんやりとそんな事を考えていると、

番長さんがふうと大きな息をついてぼくの横に座った。


疲れ切った表情で目をつぶり天を見上げる番長さん。ゆっくりと目を開き


「星がきれいじゃのう。気付かんかったわい。」


そんな事をつぶやく。


でもぼくは、空の星なんて気にもならなかった。


番長さんが横に来て初めて気付く。

何度もやつの爆発をくらい

ボロボロに破けた番長さんの制服。

その隙間から見えるこの人の体。


無数の傷。傷。傷。

ヤケドの痕。でこぼこと歪んだ肉。


これはケンカなんかでつくような傷じゃない。

とても人の物とは思えない痛々しい傷痕が

彼女の体全身を覆いつくしていた。


ぼくの視線に気付き

番長さんがフッと笑う。


「見苦しいもんを見せてすまんの。」


体の傷痕を隠すように服を引っ張るがとても隠れきるものじゃない。


「そういえば。」

「この戦いが終わったらきさんに」

「うちの過去を話すなんちう約束をしとったの。」


「死に際の一時としては」

「ふさわしくない話じゃが・・」

「聞いてくれるか?」

「うちの昔話を。」


ぼくは愛玩式さんをそっと横たわらせ。

黙って番長さんの横に座り直した。


番長さんは宙を見つめながら

ぽつぽつと話し始めてくれた。


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