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Scene45, -愛の終わり-


泣きわめきながら世界に爆破をまき散らしていたナナトが。

ぼくを振り返り、叫んだ。


「お前!!」

「お前だよ坂井!!」

「お前が現れてからぼくの計画は全て狂ったんだ!!」


「番町と生徒会長が潰し合うのも!」

「意思のない愛玩式に俺を守るよう能力を使わせる事も!」

「嫌われ者共を集めて世界を破壊する計画も!!!」


「全部お前のせいでめちゃくちゃだ!!」


奴は怒りのままにぼくに言葉を投げつけて来る。


「お前はぼくと同じ種類の人間だったろ!!?」

「わかってんだぞ坂井!!」


「世界に希望も絶望も持てず!」

「愛も憎しみも後悔もないカラっぽな人生!!」

「そんな人生に!!この世界に飽き飽きしていた!!」

「お前もぼくと同じだったはずだ!!!」


「だからぼくはお前を味方に引き入れたんだ!!」

「それなのにお前は!!」

「お前はぁぁぁぁぁ!!!」


「キライだ!キライだ!!」

「お前なんてキライだ!!坂井ぃぃ!!!」


ぼくの体から何発もの爆発が起こる。

痛みはないがズンズンと響く爆発の衝動に

なんとか耐え、愛玩式さんをかばうのが精いっぱいだ。


「キライだキライだキライだキライだぁぁぁ・・・!!!!」


その言葉を繰り返すナナトの足を。

番長さんがガシリと掴んだ。


ナナトが涙でぐちゃぐちゃの顔を番長さんに向ける。

番長さんはボロボロの体で横たわりながら

苦悶の顔でナナトをにらみつける。


「・・・きさんが坂井と同類じゃと・・?」

「ハッ!笑わせおるわい・・。」


「坂井ときさまの大きな違いはのう。」

「きさんが他人を信じられなくなったその時から」

「取り返しのつかないほど開いとるんじゃよ・・!!」


「たとえきさんが人から愛され信頼される事がなくとも。」

「きさん自身が人を信じ。人を守り。人を愛す。」

「それすらも諦めた時から・・!!」

「きさんの人生は苦も楽もない煉獄へと落ち果てとるんじゃ!!!」


番長さんのその言葉にも

ナナトは涙にまみれた顔でフと冷笑し返した。


「・・・キライだ。」


その言葉に番長さんはグッと身を縮める。


・・・だけど爆発は起きない。


気が付けば、ぼくの腕の中で愛玩式さんが

ナナトのやつに向けて両手を伸ばしていた。


愛玩式さんが声を絞り出す。


「・・ごめんね。」

「わたしバカだから・・・。」

「はじめから、こうすれば良かったんだよね。」


愛玩式さんの【鳥かごの中の(トリカゴノナカノムクロ)】が。ナナトを捕えていた。


誰にも傷つけられなくなるけど、誰も傷つける事ができなくなる能力。

その能力でナナトのちからが無効化される。


愛玩式さんがゲホゲホと咳込みながら立ち上がると

能力を封じ込められたナナトがゆっくりと愛玩式さんへ顔を向けた。


「愛玩式・・愛・・・」


番長さんが最後の力を振り絞り

ナナトの体を這い上がるようにしがみついた。


「ナナト・・。こうなればきさんも手も足も出まい・・。」

「幕を引け・・。」


番長さんがナナトの脇を押さえ込む。


それでも・・やつは泣きながら笑い。言った。


「愛玩式・・・。」

「俺はもう。お前なんかキライだ・・。」

「お前も!ぼくがキライだろぅ・・!!?」


その言葉と同時に。

愛玩式さんのお腹が破裂する。


ボウン!という爆発音。

炎と爆煙が立ち登り。


愛玩式さんはお腹からも口からも

おびただしい血を噴き出し。


ぼくの目の前でゆっくりと崩れ落ちていく。


「愛玩式さん!!!」


ぼくは叫び。

愛玩式さんを抱きかかえた。


番長さんが叫ぶ。


「愛玩式ぃぃぃ!!!」


「ナナト!!!きさまなにをした!!?」


ナナトは。

ヘラヘラと笑いながら答えた。


「ああ。悪いな。」

「ダンゲロスでは、名乗るのが礼儀だったよな・・。」


「このぼく【名無渡世難無途(ナナトセナナト)】の能力【キライダ】は・・」

「ぼくが嫌ったものを破壊し。」

「ぼくを嫌った者に逃れられぬ死を科す爆弾を植え付ける能力・・!」


「お前らがここに来るその前からもう!!」

「そいつは死んでんだよ!!!」

「ぼくを嫌ったその時からなぁぁぁ!!!」


ヒャハハハと。難無途の笑う声が響き渡る。


でも。

ぼくにはもう。

その声すら遠く薄らいでいた。

ぼくの腕の中で

血にまみれながらハアハアと息を漏らす

愛玩式さんしか目に映っていなかった。


愛玩式さんがゆっくりと目を開き

ぼくの顔を見上げ。

ヒューヒューと息を漏らしながら声を振り絞る。


「坂井・・くん・・。」

「また・・守りに・・来てくれた・・。」


苦しそうな顔を隠すように

にこりと笑って見せてくれる愛玩式さん。


「わたしね・・。」

「・・頭悪いから。」

「・・みんなの言ってる事ぜんぜんわかんない事ばっかりで・・。」


「でもね・・。」

「わたしでも・・わかった事があるんだ・・。」


「パパ・・ママ・・円ちゃんも・・」

「いつもわたしの事を考えて・・・」

「わたしを守ってくれてた・・・。」

「わたしに・・幸せになってほしいって・・・」


「これが・・愛されるって事なんだよね・・。」


愛玩式さんの声がだんだんかすれていく。

それでも。愛玩式さんは声を絞り出す。


「坂井くんも・・。」

「いつも・・わたしを守ってくれる・・。」


「わたしね・・。」

「難しい事・・わかんないけど・・・。」


「ひとつだけわかる・・。」


愛玩式さんが。

震える手をぼくに伸ばす。

ぼくはその手をしっかりと握り返す。


「この気持ち・・。」


「わたし・・・」

「坂井くんの事が・・・・。」




「好き・・なんだ・・・。」



愛玩式さんは。

笑顔のまま目を閉じた。

一筋の涙を残して。


背後から難無途の笑い声が聞こえる。


ぼくは。

眠るように力の抜けた愛玩式さんの体を腕に抱きながら

その手を強く握り続けることしかできなかった。


【転校生 愛玩式愛(アガシキアイ) 死亡】


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