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Scene38, -乱闘③-


ぼくが体育館へ飛び込むと、

そこではすでにもうひとつの戦いが始まっていたようだった。


賽仰寺さんの姿は見えず

番長さんは一人の男に馬乗りになり

何もせずににらみ合っていた。

番長さんと対峙するその男は・・

転校生のリーダー、ナナト。ではない。

見た事もない男が、口元から血をこぼしながら

ニヤニヤと笑い、番長さんの顔を見上げていた。


「番長さん!」


ぼくが呼びかけると番長さんが叫び返してくる。


「坂井!こっちに来るでない!!」

「こいつには手を出すな!きさんは賽仰寺を手伝え!!」


番長さんの視線を追うと、体育館の奥へと駆ける賽仰寺さんを見つけた。

賽仰寺さんが向かう先。体育館のステージに愛玩式さんが横たわっている。


「坂井くん!愛ちゃんがここに!!」


賽仰寺さんはステージのふちに手をかけ、

段差を乗り越え愛玩式さんへ駆け寄ろうとしていた。


ぼくは、番長さんの言葉に黙ってうなずくと

賽仰寺さんに続き愛玩式さんの元へ走る。


番長さんが、男に問いかける言葉が耳に入る。

「きさん・・何故なにもやり返して来んのかと思えば・・。」

「まさかおぬし・・・」


そして男に向けて叫んだ。


「言え!!きさんらのリーダーは!!」

「ナナトとかいう男はどこにおる!!」


その言葉でぼくは気付いた。

この場でぼくたちを待ち受けていたのはこの男ひとり。

愛玩式さんもいる。

だけど、奴の姿がない。

転校生のリーダーであるナナトの姿が。


その時。


体育館の外でドゴォォォン!という爆発音が響いてきた。

さらに外では何度も何度も爆発音が響き、

またその度にあちこちから人々の悲鳴が響いてくる。


そして。

爆発音は、だんだんとこの体育館へと近付いてくる。


番長さんがナナトの目論見を察したようで

血相を変えぼくの元へ駆け寄って来る。


「坂井!!」


ぼくが賽仰寺さんを振り返ると

気を失ったまま横たわる愛玩式さんに多いかぶさった。


番長さんもまた。

ぼくの背中に飛びつきぼくをかばうように覆いかぶさって来る。


その時ぼくは見た。

体を起こしたあの男が、寂しそうに、でも嬉しそうにニヤつく顔を。


ドゴォォォォォン!!という音と共に体育館が大きく揺れる。

壁の一部が大きく砕け、破片が飛び散って来る。

さらに数度爆発があり、その度に衝撃と爆風、熱波がぼくたちを襲ってくる。


ぐうぅぅと呻く番長さんの腕の中で、

ぼくもまた爆発の繰り返しに耐えることしかできなかった。


天井がパラパラと音を立て

そして。

倒れ込むぼくの目の前。番長さんの背中めがけて

無数のガレキが降り始める。

そして。

とうとう崩壊に耐えきれなくなった天井全体がぼく達の頭上から崩れ落ちてきた。


ズシィィィンという音と共に。

ぼくたちはガレキの山の中に埋もれる事となった。



【時は少し遡り】


体育館外では

坂井たちを見送った各々が

目の前に対峙する転校生たちとの死闘を繰り広げていた。


元番長グループ特攻隊長の転校生、【豪貫純(ゴカズミ)】は

体育館へと走っていくぼくたちの背中をニヤニヤと笑いながら見送る。


目の前に迎え立つのは番長グループの一団。

その中から2人と男が前へ出た。


「豪貫純先輩~」

「俺たちを裏切って転校生に寝返ったつうウワサはほんとだったんすね~w」

「て事は。俺たちの敵っつう事っすよね?」

「俺らあんたをやっちゃっていいんすよね?w」


ニヤニヤと笑う2人に豪貫純が答える。


「【山鈴木(ヤマスズキ)】と【煩悩鐘(ボンノウガネ)】か。」

「てめえらが元々俺を嫌ってた事は知ってたよ。」

「俺も。お前らの事は嫌いだったぜw」


豪貫純の言葉に2人は答える。


「て事は意見も合致って事でいいすね?」

「ここで俺らがあんたを殺して。」

「特攻隊長の名、俺らがもらいますねw」


「あんたのうるせえ小言を聞くのもこれで最後っつ事か~。」

「遺言あったら聞いてあげますよ。」

「豪貫純先輩。・・いや。童貞先輩ww」


ぶひゃひゃと笑い合う山鈴木と煩悩鐘に。

豪貫純は無関心そうに耳をほじりながら答える。


「・・やっぱわっかんねえなあ。わかんねえよ。」

「童貞ってそんな笑える事なんか?」

「愛し愛され合う運命の相手と。まだ出会えてねえ。」

「ただそんだけの事だろ。」

「それってそんなに恥ずかしい事なんか?」


「・・てめえらみたいによぉ。」

「外見の良い女を見れば片っ端から尻を追いかけまわして。」

「ヤれそうな女を見付けりゃ片っ端から声かけて。」

「四六時中、女とヤる事考えてりゃあ」

「そりゃ女を抱く事なんざいくらでもできんだろうよ。」

「でもよ。女とヤった人数って。そんなに誇れるものなんか?」


豪貫純の言葉に2人はさらに笑いながら答える。


「出たよww童貞の言い訳ww」

「みっともないっすよ童貞先輩ww」


「先輩知らないんすか~?」

「生き物ってやつは。みんな子孫を残すために生きてるんすよ。」

「人間だってそう。」

「男は子孫を増やすっていう本能があるから。」

「多くの女とヤるのが俺たち男の本能で。」

「女を抱いた数が男の魅力って大昔から決まってるんすよww」


その言葉に豪貫純は続く。


「・・それってよ。」

「てめえらがそう思いたいだけだろ?」


「言い訳してんのはてめえらの方だろうが。」

「知ってんよ。その言葉を本気で信じてる男が多いっつう事も。」

「それが本当だと信じる方が都合が良いって考えてる男が多い事も。」

「でもよ。お前らは本能に逆らえねえ猿なんか?」

「子孫をばらまくのが男の本能で、その本能に逆らえねえってんならよ。」

「世界はもっと下卑た犯罪であふれかえっちまってんだろ。」


「てめえらの生き方を俺がうだうだ言うつもりはねえけどよ。」

「ムカつくのはよお。」

「二股は本能だとか文化だとかほざく男がいるのはわかったよしかたねえと思ってやるよ。」

「そんな男共の言い訳に騙されて泣く女がいるのも。」

「そんなクソみたいな男共のせいで、男を信じられなくなる女がいる事も、」

「しょうがねえのかなと思うよ。」

「でもよ。」

「浮気はてめえの大事な人への裏切りだ。」

「だから自分は、運命の相手と出会うまで他の女に見向きもしねえ。」

「たった一人の大事な相手と愛し合える日まで、清いままでいたい。」

「そんな考えを、世界が、大人共が小バカにしやがんのが気に食わねえんだよ。」


「女を騙してヤるのも、捨てるのも良くねえってのは誰もが知ってる常識なのによ。」

「でも世界では女とヤった人数が男の魅力っていうのを暗に認めてやがる。」

「あれか?世界ってやつは、大人になったら軽々しく体を重ねんのが常識で」

「一途な心を持ってる事は恥ずかしいってなるもんなんか??」


「俺には。」

「女を抱いた数をてめえの魅力だと思っているてめえらの方が」

「よっぽど恥ずかしい男に見えんだけどなあ。」


豪貫純の言葉に、2人は笑いを止めた。


「・・は?てめえの言ってる事の方が訳わかんねえよ。」

「あー。もうウゼえわ。」

「もういいからよ。とっとと死んじゃえよ。」


その言葉と同時に、2人は臨戦態勢に入る。

おおぉぉぉという雄たけびと共にすさまじい気迫が立ち登り。


山鈴木本気龍(ヤマスズキマジロウ)】の腰から8本の巨大な蛇の頭が生え。

うねうねと動きながら豪貫純を威嚇する。

魔人能力【八股の男浪漫(ハチマタノオロチ)】。


煩悩鐘三度(ボンノウガネミタビ)】は、胸の前で両手を合わせ

むくむくと体が膨れ上がり、顔の左右に一つずつ、2つの顔を浮き上がらせ

背中からは左右二本ずつ、四本の腕が生える。

魔人能力【色欲是喰(シキヨクゼクウ)】だ。


八本の蛇の頭と、煩悩鐘自身の2本の腕を合わせた6本の巨大な腕が

豪貫純を襲う。


「てめえのバットでこの攻撃を全部見切れるかなぁぁ!!」

「吹き飛ばせるもんならやってみろよ!!!」


2人が叫ぶが、豪貫純があいかわらずのんきに耳をほじっている。

そして。

四方八方から迫る蛇と腕を次々にバットで叩き返す。


豪貫純は、フッと鼻で笑いながら答えた。

「・・あんなん能力でもなんでもねえよ。」

「ただの勢いだ。」


豪貫純は少し背後へ飛び2人から距離を取った。


「だがよ・・。そんなに見てえんなら見せてやんよ!」

「俺の能力!!」


豪貫純はスイングの構えを取り、そして叫んだ。


「俺の魔人能力!!」

「【永遠のゼロ(エイエンノゼロ)】をよう!!」


豪貫純がバットをフルスイングすると。

2人の能力で現れた、山鈴木の蛇の頭は消え、煩悩鐘は元の体へと戻っていく。


うろたえる2人に向かって豪貫純が続ける。

「魔人も能力も。カタガキも理屈もいらねえよ。」

「やっぱケンカといやあ、素手(ステゴロ)だよなあw」


「番長グループ特攻隊隊長【豪貫純一徹(ゴカズミイッテツ)】。」

「売られたケンカ。買ってやるよ。」

「いざ。かかってこいやあああ!!!」


こうして、豪貫純と山鈴木、煩悩鐘。

三者の死闘が始まった。


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