Scene36, -乱闘①-
番長さんの演説によって終結した、打倒転校生およそ100名。
最終決戦を目前にみなが奮い立つ。
先頭に立つ番長さんが叫ぶ。
「我らが敵。」
「転校生は体育館じゃ!!」
「当然。リーダーの元へたどり着くには」
「きゃつの差し向ける刺客と戦わなければならん!!」
「転校生より我らの元へ寝返ってくれた賽仰寺なにがしの情報によれば!」
「きゃつら一人一人が恐ろしい能力を備えてるちう話じゃ!」
「きさんら!!」
「死ぬなよ!!!」
「うちと同志坂井がリーダーの首を取るまで!」
「醜くあがこうとも!」
「生きて!」
「生きて!もがいて生きて!生き残るんじゃ!!!」
「行くぞ!者ども!!!」
番長さんの号令に、うぉぉー!っと喚声を上げる面々。
ぼくたちは、体育館へ向けて一斉に走り出した。
ぼくの隣には番長さん。
少し離れて賽仰寺さん。
架神さんや範馬さん。口舌院さんたちもまた
先頭集団としてぼくたちの背中を追う。
体育館へまっすぐ向かうぼくたちの目の前に現れたのは。
片手に持ったバットをぶらぶらと揺らし気だるそうに立つ、いかつい形相の男。
番長さんがいち早く気付き後方のみんなに大声で呼びかける。
「マズい!!」
「全員!散れ!!奴の正面に立つな!!!」
まだまだ距離は遠いが
男はぼくたちに向けてバットを大きくかざすと、空に向けてフルスイングした。
ぼくたちはいっせいに左右に分かれるが・・・
後方の何人かが勢いよく吹き飛ぶ。
番長さんが男に向けて叫ぶ。
「こうして相まみえるのも久しい気分よの!【豪貫純】!!」
男が返す。
「ああそうだな番長さん!」
「あんたとガチのケンカをする時が来る時!!」
「待ち望んでいた時がようやく来たぜぇ!」
番長さんは走る足を止めず叫び返す。
「きさん!!やはり寝返りおっていたか!!」
「そのケンカ!買ってやりたいところじゃが今ちと急いでいてのぉ!」
「また改めて 文でも送るち!見逃してくれんか!」
番長さんのその言葉で
後方についてきていた番長グループの何人か前に出る。
「番長にケンカふっかけるなんざ100万年早いだよ豪貫純!!」
「番長さんは俺たちみんなの憧れなんだぜ~。」
「番長さんと逢引きしたいなら!俺たち全員に勝ってからものを言いな!!」
「番長さん!坂井なんたら!てめえらはまっすぐ向かいな!」
「ここは俺たちに任せろ!!!」
番長さんはニヤリと笑い、「おう!頼むぞきさんら!!」と叫び豪貫純の横を通り抜ける。
ぼくたちは、番長さんの後に続き、何人かの男たちはぼくたちの行く道を護るように、
豪貫純の目の前に立ちふさがる。
「さあて。隊長。」
「番長さんを裏切ったあなたは。」
「万死に値しますぜw」
豪貫純と番長グループがにらみ合う姿が遠ざかっていき
ぼくたちはさらに進んで行く。
そうしてしばらくすると
走るぼくたちの後方から悲鳴があがった。
「うわああ!!」
「ち、近寄るな!!!」
「ぐあぁ!」
何人もの声。
側方から何者かの奇襲があったんだ!
その悲鳴が、ぼくたちの元へ近づいてくる。
番長さんもぼくたちも足を止め、後ろを振り返った。
「・・ごめんね。」
「・・ごめん。」
次々と倒れていく人々。
その、倒れる人ひとりひとりに謝り、無表情で涙を流す少女。
あの時の。【路傍雪菜】だ。
路傍は、自分に襲い掛かるものには投げキッスを向け
その投げキッスを受けた者はその場で崩れ倒れる。
逃げようとする者の背中に、腕に触れると、触れられたその者もまた次々と倒れていく。
そうして彼女はとうとうぼく達、先頭集団の前までやって来た。
「ごめんなさい。」
「わたし。汚れてるから・・。」
言い終わる前に、一人の男が路傍に木材を振り上げ襲い掛かる。
路傍は、振り返ると、その男の唇に自分の唇を重ねた。
突然の行動に不意を突かれたその男は。
白目を剝き、膝をつき崩れ落ちていく。
「・・ごめんなさい。」
「私が触れればその人は気を失い。私の口づけは人を死なせちゃう・・。」
「ごめんなさい。・・ごめんなさい。」
路傍は涙をボロボロとこぼす。
触れられただけで気絶。
これは本気でヤバい。
さすがの番長さんも身構える。
その路傍に。
いつのまにか刀を手に持った賽仰寺さんが斬りかかる。
路傍は頭を上げ賽仰寺さんを見ると
その胸に飛び込むように迫って行った。
路傍が賽仰寺さんの体に触れる・・
そう思った瞬間。
路傍は見えない何かに弾かれる。
架神さんが2人の前に立つ。
「賽仰寺さん。この子の能力は君とは相性が良くないんじゃないかな?」
「ここは。ぼくに任せて!」
架神さんが、存在しない刀を手に構える。
その時。
また後方から声が聞こえてきた。
今度は・・・
怒号だ。
「てめえ!俺にメンチきりやがったな!!かかってこいやコラァ!!」
「ああん!!てめえの顔が前から気に食わなかったんだよ!上等だやってやらあ!!」
「てめえ!生徒会のまわしもんだな!なに俺様と肩並べてんだ殺すぞコラァ!!」
「品のないヤンキーくずれが!!ぼくが目にもの見せてやる!!」
そんな言い争う声。声。声。
いままで一致団結していたはずの味方達が。
仲間同士で争い始めている。
転校生の何者かの能力・・?
範馬さんが叫ぶ。
「向こうもちとマズい状況のようだな!」
「俺と口舌院が行く!!」
「番長さん!坂井くん!!賽仰寺!!」
「お前らは振り向かずに先へ進め!!」
ぼくは番長さんに目で合図する。
番長さんもこくりとうなずく。
「賽仰寺さん!ここはみんなに任せよう!」
「君も来てくれ!!」
賽仰寺は架神の顔を見上げて言う。
「死ぬんじゃないよ!あんた!」
「助けてくれた礼も!したいからね!」
賽仰寺さんの顔を見た架神さんが。少し、目を見開いた。
賽仰寺さんは、そんな架神ににこりと笑いかけ。
振り返りその場を離れた。
架神さんが賽仰寺さんの背中を見送る。
フッと少し笑い。路傍へと向き直る。
「さあて。」
「ぼくも死ぬつもりはなくなったよ。」
「かわいい女の子が、ぼくに礼をしたいって言うもんだからさw」
「ここは。」
「なにがなんでも食い止めさせてもらうよ!」




