chapter8
俺は先ほど買った黒くグネグネとした刃の一般にクリスと呼ばれる短剣を腰に挿し、ハリー○ッターに出てきそうな杖を旅人の服の袖口に隠すように入れて、お隣の防具屋に来ている。値切れたとはいえ鈍ではないことは保障してくれたし、銀貨一枚で刃の手入れもしてくれるらしいのでありがたい。
武器屋のおっちゃんは店を出るときに、
「次の機会にはこんなに割引しねぇからな!」
と言っていたが、ここら一帯でも有数の武器屋なので、ここの店には厄介になるだろうからその時にはまた値切ってやろう。そんなビミョーな決意を胸に防具屋に入ったのである。
中には木製のマネキンに鎧が着せてあったり、鎖帷子が幾重にも重ねてあったりと、武器屋とはまた違った興奮と見ていて飽きない光景が店内を覆っていた。
だが、この店でも値切れると思い、これと決めた革製の鎧を値切ろうとと店主に尋ねてみたんだが、これが大間違い。
「この店では隣のおっさんみたいに甘いわけじゃないので悪しからず。で、お買い上げで?」
「・・・」
「まいどありぃ!」
この店では値切りが通用しない。俺より小さいおばちゃんの経営するこの店では甘い考えだったようだ。それどころか一気に買取の話までこじつけ、すかさず購入させるその早業。商売人の才能なんだろうか?
なんにせよ、この世界でも女のほうが気が強いようなので注意しないと。
店から出ると武器屋のショーウィンドウからこちらを見て笑ってやがるおっさんを見つけた。あのおっさん、知ってたな!
まぁ今更恨んでも仕方が無い。俺の所持金は銀貨二枚。これで宿に入れるのだろうか。
とりあえず革鎧をアイテムボックスに収納し、歩き始める。
もう日も落ちて、少し暗さを増し始めた街を歩くのには少なからず危険を感じるので、歩みを速めて宿への道を進む。
宿屋の看板であるベッドの絵の描かれた木の板が見えてきた頃合には、周囲の人通りも少なくなり、道の両端にある朱色の明かりの街灯が灯り出すぐらいに遅い時間帯だった。
宿屋に入ると受付があり、防具屋のおばちゃんより数段ふくよかなおばちゃんが居た。奥のほうが騒がしいので、食堂は奥のほうにあるんだろう。
「すいませ~ん。」
「はいよ!泊まりかい?」
「えぇ、一人です。」
「一泊で銅貨五十枚。三泊なら銀貨一枚だよ。もちろん食事付きでね。あいにく二人部屋しか開いてないがいいかい?」
安ッ!?
これが価値観の違いか?
「構いませんよ。三泊お願いします。」
「まいど!食事は日の出から一時間の間と日の入りから二時間の間だけだよ。にしてもちっさいね。指輪を見るに冒険者かい?」
「ちっさいって言わないで下さい。」
「最近、低年齢化が進んでるらしいけどほんとなんだねぇ。」
「俺は大人ですよ!」
「ははっ!ごめんねぇ。意地悪なおばちゃんで!」
豪快な女将さんだこと。
「もういいですよ。まだ食事って出来ますか?」
「あぁ大丈夫だよ。」
「では先に食堂に向かうことにします。」
「あいよ。これがあんたの部屋の鍵だよ。ゆっくりしていきな。」
「そうさせてもらいます。」
「食堂はあっちだよ。おっさんばかりだが、悪い奴らじゃないから安心して食べておいで。」
「お気遣いありがとうございます。」
お礼を言って受付から離れる。
女将さんが指で指し示した方向に歩いていくに連れて喧騒が大きくなり、さらに歩みを進めてたどり着いた大部屋には、
「ん?新入りかぁ?おい皆ぁ!新入りが着たぞぉ!!」
「「「おぉぉ!!」」」
でっかい三つぐらいの円卓を囲むおっさん達(一部女性)が居た。




