chapter6
笑顔全開の受付さんに一応お礼を言って、カウンターから少し離れたところにあるソファに腰を下ろす。フッワフワなので中には羽毛でも入っているんだろうか。
っとそんな場合じゃない。渡されたこの本を読まなければ。
・・・めんどくせぇ。
全国の青年に対して本を読めと言えば九割が拒否反応を起こす。俺は少なくともその九割の中の一部だ。さらに内容はゲームの説明書なんかとは格が違う量と質。
だが、俺としてはできるだけ早めに登録とやらを済ませたい。
「・・・読むかぁ。」
結局グダグダしている時間が惜しいので読むことにした。
―――――二時間後―――――
「お、終わったぁ・・・・」
ソファに背中を預け、使い続けた目を、瞼を閉じて休ませる。
何とかして読み終えました。
規約なんかはとりあえず頭に叩き込んだ。規約は三つしかない。
1、依頼等の責任は自己責任で。
2、召集には必ず応じること。
3、規約を破らない。
この三つ。
これだけならまだいい。
問題はこの後で、依頼者もしくは受諾者の生死を問わずギルドは仲介料と保証金を徴収することや、ギルドに対する悪意のある行動はギルドからの依頼としてギルドメンバーによって正式に処罰するとか、召集条件などなど。たった三つの規約の説明だけで300ページ近くあったのだから恐ろしい。
残りのページギルドの機能や情報管理の事柄が簡略化されて書かれていた。
まぁギルドの仕事は依頼者から仲介料を受け取った後、依頼をギルドの職員で選別し、ランクを分けて冒険者に掲示、冒険者から成功時に返金される保証金を徴収し、あとは冒険者に任せる。
たったこれだけの作業で、しかも仲介料は比較的安いのに、一国の収入より多い資金を儲けているらしい。これは隣でほかの人と話していた冒険者の会話からの情報である。
いや、そんな回想はとりあえず置いておくとして、今は自分の登録を済ましてしまうことを考えるべきだろう。と言うことで先ほどと同じ受付の人に文書を返す。
「読み終わりました・・・」
「はい。ありがとうございます。」
本を直す受付さんを横目に外の様子を伺う。
取り付けられた窓から外を見ると、夕焼けの朱色が建物を染め、人々の影を引き伸ばしているのが良く見えた。異世界に着てから大分と時間は過ぎているのでもう日が暮れてもおかしくない。
「では個人情報を登録いたします。こちらの水晶に手を置いてください。」
「分かりました。」
何の考えも無く手を水晶に重ねたときに気づく。
(俺って異世界から来たけど、個人情報って・・・)
コッチには個人情報なんか無いよな。と思ってる間にも手の触れてる部分が発光し始め、そして何事も無く消えていった。
「これで登録は終了になります。冒険者証をお渡しするので少々お待ちください。」
そういって奥に入った彼女。
一分ほどして再び現れた受付さんの手には小さい指輪が輝いていた。
「こちらがあなたの冒険者証になります。身分証明としても使用できるので有効にお使い下さい。また、紛失された場合、再発行に金貨一枚が必要になるのでお気をつけ下さい。」
そういって渡された指輪を右手に装着し、再び説明を聞く。
「今のあなたのクラスはIランクです。基本的にどのランクの依頼でも受けられますが、身の丈のあった依頼を選ぶことをお勧めします。」
「はい。」
「また、依頼の有無に関わらず、討伐したモンスターの部位はギルドで買取させて頂いているので利用してください。」
「それはありがたい。」
「すでに狩った後のようですね。買収の受付はそちらの階段を上ってすぐの場所となってます。」
「ありがとうございます。」
「最後になりましたがお名前をお伺いします。登録した情報の管理に使用するので。」
「あぁ。名前は大嶺真牙と言います。」
思い出せばこちらに来てからまだ名乗っていない名前を名乗った。
俺は“大嶺真牙”。今まではどこにでも居る普通の高校生だった青年だ。




