chapter4
さて、俺が説得されてから一時間が経過した。何をしていたか?現実にサヨナラしてたんだよ。漫画、ゲームたちときっぱり別れたんだよ!
「さぁ、なにしよう。」
神様のモウダメ宣言以降<神話>のスキルは切れている。そういえばだが<神話>はMP消費の無いスキルなので使いホーダイである。とはいえど、さっきの会話からしても暫く使いたくない。
神様は俺を説得するのに必死だったし、俺はただひたすら手の平に怒り続けて、散々わめき散らしていたのだ。なんかものすごい羞恥心と罪悪感が・・・。
だが、終わった事は仕方が無い。あまり深刻に考えるのは柄じゃない。
よくよく考えればリアルが充実していない俺にとって現実世界への未練は漫画とゲームぐらいしかない。これは人生の転機だと考えると不運でもないように感じる。
いや、むしろ幸運なんだ。俺にとっては。
現実世界でありとあらゆるパラメターが欠落していて、華の学園生活とは程遠い生活を送っていた俺にとって、戦闘という過程のみでほとんど必要な力は手に入るし、生きてもいける。寧ろ俺にとっては幸運以外の何者でもない。
いや、漫画とゲームを捨てるのは悔しいけど。
いかんいかん。マイナス思考に陥ってしまってはだめだ。
とりあえずこんな森の中でずっと居るわけにもいかない。その辺に落ちていた手頃な木の枝を拾い、振り心地を確認してから腰に挿す。一応これでも武器として機能する木の枝である。
このゲームでは武器になりそうなものなら何でも武器になる。石ころだって<投擲>のスキルさえあれば武器に成り得るし、装備品のはずの指輪なんかを弾丸にする<銃>のスキルもあるらしい。
今の状況で言うならば、この木の枝で<短剣>スキルが使用できる。木の枝はどういったわけか武器としての種類が刀剣類と杖類の二つの種類を持つ初心者バッチコイ武器なのだ。攻撃力は1なのであまり期待はできないが。
とりあえず目的地は説明書で見た【始まりの街】である。いくら異世界だからといっても基となっているのはただのゲーム。そのあたりの設定はそのままであって欲しい。
そんなことを考えながら当てずっぽうな方向に歩みを進めていると、
「ん?」
「がるるぅぅ。」
ちっちゃな狼に出くわした。確か説明書にも載っていた雑魚のモンスター、【ガルウ】だろう。
大きさはそこらに居る野良犬ぐらい。狼に見えないし、ってか犬ぐらいの強さなので、小手調べ程度に屠ってみよう。ちなみにレベルは言わずともがなLV1である。
警戒心をこちらに向けて唸るガウルを眼でしっかりと捉え、腰に挿した木の枝に手をかけて一気に抜き放ちながらオーダーする。
「<突>!」
短剣第一次スキル<突>。熟練度が無くても使える技で、名前の通りただ武器を突き出すだけ。シンプルすぎて見栄えが良くないが、初心者慣れのためのスキルってことだと思う。スキル選択の時にスキルでの技を確認しておいて正解だった。先手を取れる。
俺が抜き放った木の枝はスキルが発動すると同時にガウルに向かって突き出される。風を切る音が鳴り、ガウルへと迫っていく。
ガウルはそれを避けようとするが避けれない。なんせ俺は初期状態から<短剣>と<双剣>の二つ押しの敏捷上昇効果が掛かっているので、突き出される木の枝はかなり早い。・・・はずだ。
「キャゥン!」
狼が悲鳴を上げる。額に当たったが、攻撃力が皆無な木の枝に俺のLV1の力じゃ一撃では無理。判断は間違っては居ないはず。ならば畳み掛けるのみ!
「<突>!<突>!<突>!!!」
三連続でスキルを行使する。狼の右足、胴、顔面と次々に当たっていき、顔面に当たった瞬間、赤い血が噴き出す。どうやら目玉に当たったようだ。異世界っていうだけにリアルなのね。なんかバ○オハザードに出てきそうな感じになってる
「ガァァ!!」
ガウルがもだえ苦しんでる間にもう一度目玉の部分に<突>を入れて止めを刺す。なぜか戸惑いは感じない。クリティカルのエフェクトが発生し、ガウルは息絶えた。
「ふぅ。」
一気にスキルのみで畳み掛けたせいでステータスを見るとMPが著しく減っている。もう半分を切った。自動回復はあるものの、しっかり温存していきたい。
ってかこの狼もどきみたいのモンスターの死骸はどうしよう。やっぱり某ハンターゲームのように剥ぎ取りとかするんだろうか。
元々ゲームなのでドロップとかの扱いでアイテムが手に入るはずなんだが、ゲームが現実になることで、死亡したモンスターの死骸は残ってしまうようだ。
とりあえずガウルを丸ごと腰のポーチにしまう。このちっさい袋がアイテムボックスである。アイテムを取り出す時は取り出したいアイテムを思い浮かべるだけで腰にあるポーチから取り出せるらしい。
とりあえずポーチからガウルの死骸を取り出したり、しまったりする練習を繰り返し、スムーズな出し入れを身につけ、先に進む。
そして出発から二時間。途中で数匹ガルウが居たが大半をポーチに収め、逃げていった奴はあえて追わなかった。今はポーチに五匹分の死骸が入っている。今、俺の目の前には横に向かって円の弧を描くように三メートルほどの塀が立っていて、小規模ではあるが屋敷がその塀からちょこっと頭を出している。
入り口らしきところに居る門番に確認し、今一度実感する。
ついに到着。【始まりの街】。




