春水
下ネタあり。
「いらっしゃいませ~」
休日、弥生のおもちゃを買うために、弥生と未桜とペットショップに来ていた。
「弥生、どれがいい?」
「ん~とね……」
俺と弥生は今おもちゃコーナーで、ボールやフリスビーを選んでいる最中。未桜は店長と話があると言って奥へ行ってしまった。
「ん~と……、これ!これがいい!」
しばらく迷った後、弥生は赤色のボールを両手で持って、こちらに見せてくる。
「弥生は本当に赤色が好きだな。ボールはこれな、じゃあ次は……」
「お兄ちゃ~ん!」
フリスビー選んでもらおうと思ったら、未桜に呼ばれた。
「ん?なんだ?」
呼ばれた方に振り返ってみると……。
「店長と……、ニーナ!」
「久しぶり!」
ニーナが元気よく手を挙げる。
ニーナこと、ジョセフィーヌは、ペットショップ埴原の看板娘だ。看板娘と言っても店長の娘と言う訳ではない。ニーナは店長が飼ってる猫仁だ。だから、看板猫?まぁ、ややこしいから看板娘でいいや。店長もそう言ってるし。
「本当に久しぶりだな!半年ぶりくらいか?」
「そうね。それくらいね♡」
「あ、店長、こんにちは」
「こんにちは♡春ちゃん♡」
「ニーナ、元気してたか?」
「うん。少し前から元気だったんだけど、慎ちゃんが家から出してくれんかったんだわ」
ニーナは約半年前から家で療養生活を送っていた。生まれつき体があまり強くなく、病気がちだったようだ。成長していくにつれ、体調を崩すことは減ってきていたようだが、半年前に大きく体調を崩してしまった。
ちなみに、慎ちゃんは店長のあだ名だ。
「それは、またジョセフィーヌちゃんが体調を崩さないかって心配だったからよん」
「わか……っ!」
「あ、そうだ!」
ニーナが喋ろうとしてるのを遮って、未桜が胸の前で手を合わせながら大きな声を出した。
「ニーナちゃんに紹介したい子がいるの!」
「……え?」
「新しい家族の弥生ちゃん!」
「どうも、こんにちは……」
弥生が小さな声で挨拶をする。
「おみゃ~さんが弥生か!慎ちゃんから聞いとったもんで知っとるよ。うちはジョセフィーヌ。気軽にニーナって呼んで~」
「うん……。よろしくね、ニーナ」
「それで店長、ニーナの体調はもう大丈夫なんですか?」
「もう元気もりもりよん♡」
「ーーあ、いけない。ちょっと、失礼するわね。未桜ちゃんも、ちょっといいかしら」
「はい!お兄ちゃん、ニーナちゃんよろしくね」
そう言い、店長と未桜はまた奥の方へ。
「そういえば、店には何を買いにきたの?」
ニーナが俺たちに質問を投げかける。
「弥生のおもちゃを買いにきたんだ」
そう言うとニーナは、弥生が手に持っている赤いボールを見てーー
「え~と、ボールだけ?」
「いや、フリスビーも買おうと思ってるよ」
それなら良いのがあるよと、ニーナはフリスビーを1つ手に取った。
「これどう?うちのおすすめ。うちって言っても店じゃなくて、うち……私のね」
「ーーこれはね~、当たっても痛くない柔らかい素材でできてるし、よく飛ぶんだわ~」
「いいな、弥生はどうだ?」
さっきから俺の服の裾を握っている弥生に確認する。
「うん。これがいい」
俺の顔を見ながらそう答えた。初対面のニーナがいるからか、表情がやや硬い。
「じゃあこのボールとフリスビー買って、公園で早速遊ぶか!」
「うん!」
お会計をしようと思ったらニーナがーー
「あの2人まだ戻ってきてないし、弥生ちゃん少しお話しない?」
と、弥生に話しかけた。
「うん……」
弥生は小さく頷いた。
「弥生ちゃんは、春といて楽しい?」
「うん……」
「春のこと好き?」
「……好き」
少し間があったのが気になるけど、照れるな……。
「そうか、なら春のこと大事にしいや~」
「うん」
「弥生ちゃん、春の顔見てみぃ~、顔でら赤くなっとる」
「おい!見るなよ!」
「ふふっ」
「笑うな~!」
「あはははは!」
「なになに?楽しそうじゃん」
未桜と店長が戻ってきた。
「なんでもない!店長!お会計!」
そそくさと会計を済ませ、俺は弥生を連れて店を出た。その後ろを未桜が追いかけてくる。
「ね~ね~、お兄ちゃん何で?何で笑ってたの?」
「俺は笑ってないし!教えない!」
「いいも~ん、後でこっそり弥生ちゃんに訊くから~」
……
この後公園で、買ったばかりのボールとフリスビーで遊び、夕方にスーパーで買い物をしてから帰宅した。
「疲れた~」
先日ほどではないが、疲れた。こうやって遊び疲れるのって子供のとき以来だよな~。と、湯舟に浸かりながら今日の出来事を振り返る。
ニーナ、元気そうで良かったな。弥生は、ひと見知りで少し緊張してたみたいだったけど、ニーナとならすぐ仲良くなれるだろう。
ニーナがおすすめしてくれたフリスビー、柔らかいから弥生と安心して遊べるし、よく飛ぶから投げてて俺も楽しかった。弥生も楽しそうに遊んでたしな。
がらがら……。
脱衣所のドアが開く音……弥生か?ドアの向こうでうっすらと誰かが動いているのが見える。
シルエットが……2つ? まさかな……。
がらがら!
「お邪魔しま~す!お背中流しにきました~!」
タオルを体に巻いた未桜と、弥生が入ってきた。
「出てけ!」
「いいじゃん~、家族なんだし~」
巻いてるタオルが短くて、何かは言わんが見えそう……。
「早く出てけ!」
「昔はよく一緒に入ってたじゃん~」
「いつの話だ!」
そもそも昔と今じゃ、話が別だろ!
「……あっ!この間ゆかりさんに蹴られたところ、大丈夫~?」
「何だよ……、藪から棒に」
未桜のやつ、めちゃくちゃニヤニヤしてやがる。
「まだ腫れてるんじゃないかな~?弥生ちゃん、見てあげて~」
「うん!」
弥生が湯舟を覗き込む。もちろん手でブロックしているため、見えない。
「春お兄ちゃん、手どかして~」
「嫌だ!どうせ見ても腫れてるかわからんだろ!」
「弥生ちゃんとふたりでお風呂入るときタオル巻いてないんでしょ?なら、わかるんじゃない~?」
「どうしてそれを……」
「弥生ちゃんから聞いたんだよ。お兄ちゃんのお股のところについてるあれは何かって訊かれたもん」
「……未桜、それでお前教えたのか?」
「うん。弥生ちゃん、お兄ちゃんのお股にぶら下がってるのは何?」
「おち……」
「だぁぁぁああああ!!!答えんでいい!」
「……弥生ちゃん、私が腕を押さえるから、その内に見て!」
「うん!」
未桜が手をわきわきさせながら近づいてくる。
「観念しなさ~い」
「やめろ!来るな!俺のそばに近寄るなああ~っ!」
がしっ!
未桜が俺の腕を掴んだ。
「くっ!もちろん俺は抵抗するで!」
「ぐぬぬぬぬぬ……」
必死に腕に力を入れる。
「無駄な抵抗はやめろ~!」
「絶対にどかすもんか!」
その時、未桜が体に巻いていたタオルが床に落ちた。
「あっ……」
「あっ……」
タオルで隠していた部分が露わになる。ほう……、成長したな……。形も綺麗だし、下も……。
その時、俺の股間に何かが触れた……。
「硬い!これって腫れてるってこと~?」
いつもは柔らかそうなのに、と付け足す弥生。
いつの間にか弥生は湯舟の中に入って、俺の股間を……息子を触っていた。
「あら~?私の体見て、おっきしちゃったの~?私も見たい!見せて!」
「見るな!お前はさっさと前隠せ!」
やべっ!と言いながら落ちたタオルを巻きなおす。
「ね~ね~、私の見たんだからいいじゃ~ん」
「だぁ!早く出てけ~!!!!!」
◇
昨日は散々な目にあった……。あの後未桜は、なんとか風呂場から出て行ってくれたが、弥生に説明する言い訳を考えるのが大変だった。本当のことを言う訳にもいかないし……。
結局、蹴られて腫れたということにしたんだけど、そしたら撫でるって言うもんだから、そっとしておけば大丈夫って言ったんだ。そしたら今度は、触っちゃってごめんなさいと謝ってきてくれた。すごく悪いことをした気分になったよ俺は……。
そんなことを思い返しながら俺は今、弥生とフリスビーで遊んでいる。弥生はフリスビーが気に入ったようだ。
未桜は、店長とニーナとベンチで会話をしている。店長とニーナは公園に散歩へ来ていたところを未桜が見つけて連れてきた。
「お兄ちゃ~ん!交代~!」
未桜たちが座っているベンチの方へダッシュ。
「一緒にフリスビーやらないのか?」
「うん。お兄ちゃんは、ニーナちゃんと一緒に見学ね!」
「店長も行きましょ!」
「アタシも?!じゃあ春ちゃん、ジョセフィーヌちゃんをよろしくね♡」
「弥生ちゃ~ん!お待たせ~!」
俺の周りは言うことだけ言って、どっか行くやつらばかりだな……。
「ニーナは遊ばないのか?」
「うちは……、走れんもんで……」
「そっか、病み上がりだもんな」
「……実は」
「ん?なにか言ったか?」
「……。春は、弥生のこと好きかって訊いたんだて」
「うん。好きだよ。弥生と家族になってから毎日、どんどん好きになってる気がする」
遊んでいる弥生を眺めながら、そう答えた。
「そういうニーナは店長のこと、どう思ってるんだよ」
「大好き。飼い主を嫌いになるペットなんてそうそうおらん。逆もそうだで」
「ーー血は繋がってなくても、違う種でも、家族なんだで」
「……そうだな」
……
「うち……走れんもんで、もう少しおしゃべりに付き合ってちょうだい」
そう言いながらニーナは、どこか寂しそうに微笑んだ。




