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第二話 巫女騎士になる

「魔神を倒してほしい」

 ケノンは笑いながら、真剣な眼で言った。


 そこには三者三様の反応が見えた。


 暁くんはまたも反抗し、オタクは不安の中に期待が見え、未だに理解出来ていない者は今にも吐き出しそうなほど不安を浮かべていた。


「取り敢えず、話を聞いてくれないかい?」

 現状を理解していない者達は話を聞こうと、皆を窘めていく。


「じゃあ先ず何故魔神を倒してほしいと、ここに呼んだかから。今、僕の世界であるユーティユスには世界を滅ぼそうとする魔神が復活しようとしている。魔神は強大な力を持っていて実際、この世界が滅ぼされかけた事もある。そこで、勇者という魔神に対抗出来る世界の仕組みの様なものが作られた。そして勇者はその魔神を倒す力を持って生まれる」


「でも、今回はその勇者がね、居ないんだよユーティユスには。そこで君なんだ」

 そう言って、暁京介を指差す。


「俺が勇者なんだったら! 他の皆は返しても良いだろっ!」

 暁くんは相当怒りを覚えているようだ。彼の性格からして友達やクラスメイトを危険に晒したくないのだろう。自分だけだったら彼はここまで怒っていないと思う。

 ケノンの話を聞いて先ず初めに言うことが、イケメンだなと感心する。何か凄い奴すぎて、イケメンという言葉で彼の言動を全て表せる気がする。


「僕も当初はそのつもりだった。だけど予想外にこれまで魔神復活時に殺したはずの側近達が全て復活したんだよ。だから、戦力が必要になった」


「僕の世界で死んでも、肉体と魂は分離する。でも、僕の出来うる限り君達には力を与えるし、魔神を倒せたら元の世界に返す。その力で世界を救ってほしい」

 その言葉には神としての責任なのかは知らないが確かな感情と圧があった。


 肉体と魂が分離する。つまりは、死。それを理解したクラスメイトが息を呑む様子が伝わってくる。俺はグッと奥歯を噛む。

 神の話を聞き、一つの可能性を考える。与えられる力によっては一人でも生きていけるのではないかということ。クラスメイトには申し訳ないが、クラスメイトが魔神を倒すまで、ひっそりと生きていく。そっちの方が断然良い。


 それから、細かい説明があった。

 ユーティユスはゲームのような魔法もスキルも魔物も亜人もいるファンタジー世界ということ。


 神の代行として俺らを召喚する国は海洋国家であるスラリオス。魔神が作ったとされるダンジョンが国内に四つあり、成長においてこれ程の環境はないという。


 その世界の大陸、国など広く浅く説明された。


 それによってクラスメイトがまたうるさくなる。興味半分、正義感半分でちらほらと肯定的な人が出ている。


 ざわざわとする雰囲気に紛れて、親友である雨月響輝(あまつきひびき)がこちらに近づいて来る。


「葵、これからどうする?」


「どうするって、俺らはあの神の言うことを聞くしかないだろ」

 何となく、あの神は怪しい。自分の出来る最善をする、だから君達も頑張って欲しい。

 みんな頑張っているんだから君も頑張れるだろって言う典型的なクソ上司に近いものを感じる。


「まぁ、主導権はあっちにあるわけだしどう足掻いたって俺達はあいつの掌の上だよな」

 響輝も同じような考えらしく、俺は安堵する。


「……それで僕達はこれからどうすれば良い」


 どうやら話し合いが済んだらしい。暁くんに限って全員に意見を聞かない筈はない。しかし、俺の元に暁くんは来ていない。

 そこで、響輝を見れば、爽やかなイケメンスマイル。流石親友である。俺に意見を聞く前に俺の意見を伝えておいてくれたようだ。

 俺は響輝に向けて親指を上に立てる。


「先ずは自分の職業やスキルを見てくれ。自分の能力を見ようと念じるだけで分かるようになっている」


 言われたままに念じてみると、目の前にゲーム様なウィンドウが出てくる。


 ―――――――――――――――――――――――

 ステータス


 水無月葵 十六歳

 種族 人間

 職業 巫女騎士



 Lv1 スキルポイント30


 体力 【250】

 魔力 【620】

 攻撃力 【530】

 知力 【430】

 幸運 【360】


 職業スキル

 巫女の加護 刀剣術 霊力


 ユニークスキル

 融合Lv1


 スキル

 神の加護 ストレス耐性


 選択可能スキル

 水刃 抜刀術 隠密 妖術


 ―――――――――――――――――――――――


「比較対象として、町人とかの非戦闘員は体力とかの五科目の合計が千前後で、冒険者や騎士の下っ端は三千、中級者で六千、上級者で一万。団長クラスで五万以上だね」

 俺の合計を計算してみると2190と当たり前だが弱い。だが、ユニークスキルという見るからに強そうなスキルもあるし、悪くなさそうだ。


「因みにステータスは念じればもっと細かく見れるし、目の前から消すことも出来るよ」


 ケノンの言う通りに細かく見ることにする。


 先ずは職業の巫女騎士だ。

 詳細を映すように念じる。

 しかし、これを見た時、俺は絶望した。


 巫女騎士……職業巫女の騎士。巫女騎士は巫女とその剣と盾の三位一体。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 自分の血の気が引くのが分かる。魔神を倒すまでどの位の時間を過ごすのか分からない。しかしそんなことはどうでもいい。どうやったって、三十メートル以内に人が居続けるという意識からは逃れられない。それを考えるだけで多少の吐き気がする。


「おい、大丈夫か?」

 そう言って俺の肩に手を置いて心配顔をする響輝。

 取り敢えず相談して楽になろうと響輝に話す。


「よし、分かった。出来るだけ俺が傍に付くようにする。そしたら大分マシだろ?」


 そう言って安心させる様に笑う響輝。まじでこいつと友達で良かったと思った。


「ありがとう。ほんとに助かる」


「取り敢えず、今は忘れてスキル見ようぜ」

 響輝も俺と一緒にゲームをすることが多いからゲーム要素が現実にあるのが嬉しいのだろう。


「そうだな」

 と俺は響輝に笑顔を見せる。嫌なことばかり考えるのはやめようと思いながら詳細を開いていく。


 巫女の加護……巫女から三十メートル以内の距離にいる場合、全能力が二倍になる。


 刀剣術……刀剣の熟練度が大幅に上がる。


 霊力……魔力の一種であり、魂の一部。本来視えない霊や妖怪、精霊を視認出来る。常時発動、非常時発動、切り替え可能。魔力が強化される。


 融合Lv1……二つのスキルを融合し一時的に新たなスキルを得られる。一定時間が経つとスキルは二つに戻る。


 ストレス耐性……あらゆるストレスに耐性が付く。


 神の加護……神であるケノンが君の願いを一つだけ叶える券だよ! ただし、新スキルの作成、職業の変更は出来ないので注意ね。君の好きな時好きな場所で使えるから、例えば死にそうになったら使うとかね。もし出来ないことを言ったとしても、これは無くならないので安心してね!


 神の加護を見て一瞬だけ希望が見えたが、職業の変更は出来ない。それが分かった途端、ケノンが書いたであろう、ガキみたいなノリの軽い文章に怒りを覚える。まぁ、期待はしてなかっただけにさっきよりはダメージはない。


 そして、この世界はレベル制&スキル制らしい。

 レベルが上がることでレベルとスキルポイントを貰え、スキルポイントを使ってスキルを取得する方式だ。


 憎悪さえ感じる職業だが、一旦忘れて見れば相当強そうだということが分かる。

 それ以上にユニークスキルの融合。神でも出来ない新スキルを一時的にでも作れるというのは、チートなんじゃないだろうか。


 続けて獲得可能スキルを見る。


 水刃……刃物に水の刃を纏わせ、放つ。

 必要スキルポイント5


 抜刀術……刀を瞬時に抜刀することが可能。また、抜刀した時の威力が大幅に上がる。

 必要スキルポイント15


 隠密……一度闇に紛れると周囲のものから気付かれにくくなる。

 必要スキルポイント3


 妖術……霊や妖怪、精霊に対して特効の術を物体に付与する。周囲のものを浮かすことと簡易的な治療が可能。

 必要スキルポイント20


 強そうなのは抜刀術と妖術か? すぐに抜刀出来るのは強いだろうし、妖術の特攻というのはイマイチ分からないが、治療出来るというだけで取る価値はある。

 スキルポイントは30だから、強そうな抜刀術か妖術はどちらかしか取れない。しかし、俺はどちらを取るか直ぐに決められた。俺のスキル構築はユニークスキルである融合を基準にして考えた方が良いと思ったからだ。

 汎用性が高いスキルを取れば、それだけ融合でのスキルが多くなると考えた。

 俺は妖術、水刃を取る。俺の職業は巫女騎士。他の二人と響輝が隠密を取らない限り、逃げに使えないので、奇襲ぐらいしか使い道がないと判断したから。


 これで俺のスキルポイントは5になった。


「ステータスどうだった?」

 響輝も粗方見終わったのだろう。


「俺は魔力と攻撃力の高くて防御が薄い魔法アタッカーみたいな感じ」

 クラスメイトが聞いている可能性があるので詳細は言わない。


「俺はバランスタイプの戦士って感じで、スキルは雷系があるな」

あからさまに弱そうな感じじゃ無く安堵する。


「さぁ、皆。準備は出来たかい?」

 俺達を含めクラスメイトはケノンの方を向く。

 ケノンは全体を見渡してから、頷く。


「よし、それじゃユーティユスを頼んだよ!」


 ケノンがそう言うと同時に始めと同じ光が俺らを包む。


「っ!」


 眩い光がゆっくりと晴れて目を開ける。


「ようこそお越し下さいました、神の遣わし者達」


 聖堂の様な空間の両脇にズラリと並ぶ騎士と僕らの目の前に立っているこの国の、スラリオスの王がいた。


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