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第三話 異世界

「神の遣わし勇者達よ、私はこの国の王オルケウスである。色々と言わねばならぬことも多いが、其方らも混乱していることだろう。今日の所は休むと良い」

 髭の生えた如何にもという威厳のある王様は俺達を気遣ってか、早々に休みをくれた。


「お気遣い感謝致します、王様」

 暁君がそう言ってお辞儀をすると、王様も満足そうに頷いて、家臣に俺達を案内するように指示を出す。

 俺達はそれに従ってついて行く。


「なぁ、響輝君に水無月君」

 後ろからいきなり話しかけてきたのは、関西弁の双葉京(ふたばみやこ)

 いつも通りポニーのシッポの様な髪をブラブラさせていた。


「双葉か、どうしたんだ」

「単刀直入に言うと、どっちが巫女騎士なん?」


 巫女というから女だと分かってはいたが、女は特に苦手だ。

 双葉を目の前にしていつもは意識しないものに触れて、体が震える。


 しかし、誰かの手が俺の肩に触れ、ピタリと震えが止まる。触れられたからではない、安心したからだ。やはりというように横を見れば、ニカッと笑う響輝がいた。

 大丈夫。響輝は一番信用出来る人間だ。その響輝が付いている、怖がる必要はないと自分に言い聞かせる。


「巫女騎士はこいつだけど、いきなりのことだし親友(あおい)と一緒に居たいんだけど大丈夫か?」


「ええよ。どうなるかは分からへんけど、響輝君が居てくれると心強いわ」


「それでもう一人の巫女騎士は?」


「もう一人は天守龍之介(あまもりりゅうのすけ)君や」

 と言って後ろに視線を動かす。そこには190センチ近い巨体の男がいる。確か、柔道部の強い人だった気がする。

 不意に目が合って直ぐに逸らす。

 もう一度ちらっと見るとぺこりとお辞儀をしてくるので、反射的に俺もぺこっとする。俺と同じ普段から大人しく目立たないような人間だ。何考えているか分からないが、必要な時以外話しかけてくる事もないだろうし、まだマシだ。


 高級ホテルの様な部屋が個々に当てられ、当然俺達は三部屋並んで使う事になった。

 響輝も俺の隣の部屋になった。

 心配の種でもあった距離だが、スペースは限られるが部屋は分けることが出来た。

 この日はクラス全員で集まり、一度個人個人考える時間にしようということで解散となった。

 俺としては非常に助かった。


 ついでとばかりに双葉さんに引き留められ、三十メートル離れるとどうなるなどの実験もした。結果としては離れた両者は激しい痛みに襲われ、近づくと治り更に離れようとすると痛みが増し、それを耐えることは出来ないと判断した。正しく三位一体、離れることは断念するしかなかった。


 そうして、話し合いが終わり俺達は自室へと戻った。


 自室に戻った俺はスキルを試すことにした。

 俺のスキルは巫女の加護、刀剣術、霊力、融合、神の加護、ストレス耐性、水刃、妖術の8つだ。

 巫女の加護、神の加護、ストレス耐性、刀剣術は試すことが出来なかったり必要がないもので残りの四つを試してみる。


 とりあえず、霊力から行くか。

 霊力っていうスキルは霊や妖怪、精霊が見えると書いてあった。今まで発動していなかったが、試しに発動してみる。


「うわっ!」


 すると周りには、何色もの光が蛍のように動いて視界のあちこちに広がっている。


「これは、精霊か?」

 幽霊とか妖怪ではないだろうから、多分会っているだろう。

 ステータスを見れば魔力値が八十プラスされている。付属効果もちゃんと発動しているようだ。

 少し邪魔だなと思いスキルを非常時発動にして、他のスキルも試してみる。


 先ずは水刃。

 テーブルの上にあった果物ナイフを手に取って窓を開ける。流石に室内に向けて放つわけにもいかない。幸い外には緑しか見えない。


「水刃」

 小さく唱えてみると果物ナイフを覆うように水が出てくる。

 それを外に向かって振ると、鋭さを帯びた水の刃が放たれた。


「まじで魔法だ」

 俺は一人感動した。有り得ないはずの事が目の前で俺が起こした。興奮しないわけが無い。


 更にステータスを見ても魔力の消費は二とコスパが良い。かっこいいし、俺の魔力では六二十回使える。素晴らしいスキルだと一人頷く。


 次に妖術。

 テーブルの上の果物に狙いをつけて浮けと念じる。


 するとぷわぷわと上下に揺れながら浮いている。


「すげー! マジで浮いてる!」

 これぞ、THE魔法という感じだ。こっちに来いと念じれば、こっちに来る。試しにもう一度離して、出来る限りの速度で再度念じる。

 ビュンッとさっきとは比べ物にならない速度で来るリンゴ? をキャッチする。


 周囲のものという書き方をしてあったから、上手くすれば飛行も出来るかもしれない。


「単純に岩とか浮かして、壁にもできるしこっちとって正解だな」


 刀剣術が果物ナイフにも反映されるかもと思い、それっぽい構えをとって振ってみるが完全に素人のそれだった。やはり、ナイフは刀剣という扱いにならないのだろう。


 最後は待ちに待ったユニークスキルの融合。

 試しに巫女の加護と神の加護をくっ付けようとする。

 しかし『融合の対象外です』と言われてしまう。流石に神の加護は無理そうだと分かっていた。

 そんな感じで片っ端から融合させていった。

 先ず、分かったことは一度に融合出来るのは二つまでで、融合は同時には出来ない。


 そして、組み合わせられないものもあるということ。加護はどれにも融合出来ないということ。

 他にも、ストレス耐性と水刃、ストレス耐性と刀剣術は融合出来なかった。

 確かにどうやって組み合わせるのか想像出来ないとは思ってたからむしろ出来たら驚く所だった。


 出来たスキルはこんな感じだ。


 霊力+刀剣術→精霊刀剣術……周囲の精霊の力を借り、精霊の力を刀剣に込める。


 霊力+ストレス耐性→霊耐性……霊や霊力を宿す攻撃に対しての耐性を得る。


 霊力+妖術→霊術……対象に自身の霊力、魔力を宿すことで操作できる。


 妖術+水刃→水術……水を生み出し操る。水に関するスキル、魔法の扱いが大幅に向上する。


 刀剣術+水刃→水の太刀......刀剣に水を纏わせる。刀剣の水は枯れることなく、自在に操れる。


 刀剣術+妖術→妖刀剣術……刀剣での攻撃に霊や妖怪、精霊に対して特効効果を持つ。妖刀の扱いが向上する。


 妖術+水刃→霊刃……霊や妖怪、精霊に対して特効の刃を刃物に纏わせ放つ。

     →癒しの刃……簡易的な治癒の効果を持つ刃を刃物に纏わせ放つ。


 合計8つのスキルを融合によって作り出せた。

 しかしこれで魔力を700程持っていかれた。解除は出来るもののバカスカ使う訳にもいかないが、有用なスキルであることには変わらない。

 試せていないものもが多いが、水術は便利だ。飲み水も困らないし、水刃のように攻撃手段としても使える。矢の形やなんなら動物だって形作れる自由度がある。使い道は無限大だ。


 一方で、精霊やら、妖刀やら色々と調べなくてはならないことが多い。正直スキルの強さもピンとこない。図書館などがあれば調べにいきたいところだ。


「流石に疲れたな」

 色々とあり過ぎた。魔力を多く使ったのもあるのだろうが、とにかく今日は寝ようと高級そうなベッドに入る。疲れが溜まっていたから俺は直ぐに眠りについた。


 そしてこういう時に見る夢は決まって思い出したくもない出来事の回想。


 中学生の時のこと、クラスにはいじめられていた女子が居た。なんてことはない、よくある話だ。初めは女子グループ内でのいじめだった。初めは女子の世界のことなんて分からず、いじられキャラぐらいの認識でいじめに気付いていなかった。しかし、気付けばクラスメイト大半から虐められるようになった。俺は、ようやくその女子がいじめられているということを知った。裏ではもっと酷いことが行われているということも。

 当時、正義感の強かった俺は女子グループにいじめられている現場に割り込み、その女子を助けに入った。

 それは入ったら最後、アリジゴクの入り口だった。


 次の日、学校に行くと引き出しの中身が無くなって、ごみがびっしりと入っていた。

 俺の願った通り、その日からその女子はいじめられることはなくなった。いじめの対象はその女の子から俺に移ったからだ。

 いじめなんてくだらない、こんなもの耐えてみせる、とそんな風に思っていた。昨日まで友達だった人にも無視され、避けられるようになった。それすら序章も序章、いじめはどんどんエスカレートしていった。人に伝えるのもはばかられるようなこともされた。それでも、まだ耐えられていた。俺には人を助けた誇りが自尊感情があったからだ。

 だが、俺がいじめから助けたはずのその女子はいじめに加担していた。笑っていた。俺を殴り、蹴りながら笑っていた。


 そして、夢から覚める。

 全身に汗をかいて、体も心も嫌な感じだ。

 最悪な朝でも、二度寝することは許されず、朝食を知らせに来たメイドさんに「は、はい」とオドオドと返事をした後、またドアがノックされる。

 扉を開けると双葉と天守がそこにはいた。


「おはよう、水無月君。朝ご飯呼ばれたから行こ思うんやけど、準備出来てる?」

「う、うす」


「それじゃ、行こか」

 コミュ障全開の俺の受け答えにも笑顔で接する双葉はそりゃ良い人に思えるが、そういう人に限って裏の顔は恐ろしい。まぁ、どんなに良い人だろうと俺の体は勝手に震えるし、勝手に固まる。もはや俺の思いとも関係ない。


 双葉は色々と話題を振っていたが、天守も寡黙で返答はするが、それ以上会話を広げようとはしないし、俺はそもそも話したくない。

 こんな時に響輝が居れば、こんなことにはならないだろうが、結局双葉も段々と口数が減り、会話は弾むことなく食堂に着いた。


「お、葵、遅かったな。双葉に天守も」

先について席に座っていた響輝がこちらに手を振って言う。


「朝から元気だな」


「ちょっとワクワクして早起きしちまった。遠足の朝みたいな感じで」


「ワクワクしたら寝れないものじゃないのか?」


「俺寝る時間になると眠くなるタイプなんで」


「何や、水無月君って響輝君と一緒だとそんな感じなんやね」

双葉は驚いたと言う表情で言う。隣に座った天守も少し驚いた様子だった。先ほどの感じでこれだと流石に心象が悪すぎるかと内心ビビる。


「まぁな、俺相手ならこんな感じだけど、他の人じゃ警戒心というかバリアが固くて分厚いから。おまけに人と話すのが苦手で、嫌ってるわけじゃないからそういうもんだと思っといてくれ」


「よう分からんけど、嫌われてないんなら良かったわ。これから一緒なら仲良い方がええもんな」


「違いない」

二人の会話が盛り上がってきたあたりで朝食が運ばれてくる。異世界の食事とはどんなもんだろうとドキドキ半分ワクワク半分という感じであったが、意外と想像通りのものだった。パンに野菜と肉の入ったスープ、あとはりんごのようなフルーツ。流石に現代日本の食事と比べれば、やはり日本の方が美味しいが、悪くはない。全体的に薄味に感じるが、慣れれば美味いものだろうという感じだ。


さて、食事を終えた俺達は普段は会議などに使われる大広間に集められ、王様直々にこれからの俺達のことを説明された。

 魔神が復活する場所はこの国の真反対である大陸の最北。魔神が復活したら討伐遠征が始まるが、先ずは騎士との訓練を積む。ある程度訓練を終えたところでレベルアップの為にダンジョンに潜るという流れだそうだ。

 まず、指示されたのがダンジョン探索を見据えて、五人一組を作ってくれという話しだった。これは初代勇者パーティーの勇者、騎士、魔法使い、聖職者、弓使いを模した、五人パーティーが冒険者の間で主流だからだそう。

 召喚されたのは全部で二十四人。一つだけ四人パーティーが出来るので、丁度よく俺たちが名乗りを上げた。

 勇者の暁君の所には大勢のクラスメイトが集っていて、早速揉め事になりそうなところを暁君がうまく捌いていた。流石、勇者と騎士や大臣の皆々も感心していた。


なんだかんだで上手く五つのパーティーに分かれた俺たちは武器倉庫へと案内された。



 

 

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