誕生
読者のみなさまへ
「ファンタジーの次はSFだ! SFの世界に魔法のチートを持ち込んだ話にするんだ!」と思って書いたのですが、以前書いた「宇宙護衛艦やまと」という小説の後日談になってしまいました。良く言えばコラボレーション、はっきり言えばネタの使い回しです。「宇宙護衛艦やまと」を読んでいないと、話がわからない部分があります。これでは独立した作品とは言えない。そう思って第二部ではなく、第一・五部にしました。虫のいい話ですが、「宇宙護衛艦やまと」も読んでいただければ幸いです。内容はコミカルになりました。誰も死にませんし、傷つきません。登場人物たちの暴走ぶりを楽しんでください。
クイトはオロオロした。まもなく最初の子供が産まれる。こういうとき、父親にできることはほとんどない。せめて出産に立ち会いたいと言ったが、オダダの慣習を理由に許されなかった。医療施設が充実した協会に打診したが、協会にも周囲にも駄目出しされた。更に日本の医療知識を教えようとしたが、協会から止められた。クイトが日本から持ち込んだ電子書籍は没収された。協会の非常勤職員でも特別扱いは許されなかった。協会の基準では、それはチートになるのだ。新生児の死亡率が変われば、人口が大きく変わる。世界のあり方を変えてしまうのだ。
子供の名前を考えたら、オダダでは神託で名前が決められることになっていると教えられた。オダダ人の名前への無頓着さに改めて呆れた。変な名前が付かないことを祈るしかなかった。
義父のクイナはクイトより落ち着いているように見えたが、内心は初孫の誕生に揺れていた。男なら勇ましく育てよう、いや女かもしれない。女だったらどうしようかと、父親のクイトを差し置いて考えていた。クイトの方は、男でも女でもいいから、とにかく無事に産まれてくれと考えていた。
二人の男が、一分が一時間にも思える時間を待っている間、もう一人の男である長老は、普通に待っていた。子供が産まれたときに、神託を授かるのが長老の役割だった。本人も何回か覚えていないくらい、立ち会っていた。長老は何も言わなかった。男たちに落ち着けと言っても無駄だということを、これまでの経験から学んでいた。
そして待ち望んだ瞬間が来た。赤ん坊の大きな泣き声が聞こえた。
まっさきに行動を起こしたのはクイトだった。分娩室に入ろうとしたが、扉を途中で開けたところで、産婆に止められた。
「不浄の者は立ち入ってはいけない」
クイトはカチンと来た。
「父親の俺が、なぜ不浄なんだ?」
「若者よ、慌てるな」
長老が声をかけた。
「まず神託だ。それより先に男が立ち入ることは許されぬ」
そう言って、長老は分娩室に入った。クイトは納得できなかったが、強引な行動はとれなかった。
「おめでとう。だが残念だ」
クイトは全く予想していなかった言葉をかけられた。声がした方向を見ると、紫色の髪を持った紫音がいた。クイトは猛烈に嫌な予感がした。
「ありがとう。久しぶりだな。まさかこのタイミングで仕事じゃないだろうな?」
「そのまさかだ」
「ちょっと待ってくれ。子供の顔を見るくらいの余裕はくれるよな?」
「あいにくない」
紫音はクイトが口を開く前に、クイトの耳元でささやいた。
「最悪の場合、オダダが侵略されるかもしれない」
クイトは緊張した。紫音にジョークのセンスはないが、さすがにこれは冗談ではないだろう。
「事情は途中で話す。来てくれ」
クイトは観念した。




