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ログインするのは、終わる世界  作者: 出水 光希


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テスト、失敗?

 俺たちはクエストをクリアするとベースキャンプまで転送される。


 今度は俺の方が若干早かった。


 後から目の前にアリハナが転送されてくるとすぐさまアリハナに声をかける。


「なぁ、もし俺が何も思い出さなかったらどうするつもりだったんだよ?」


「え?そのときは思い出すまで何度でも周回するつもりだったよ?」


 アリハナはあっけらかんと答えた。


 ……最初の一回で思い出せて良かった。


「どうだった?十年ぶりのクエストは?」


「あぁ、確かに懐かしかったんだけど変わったことが多かったな……。」


 だがやはり懐かしい、戻ってこられたという感情の方が大きいのは間違いない。


「確かに変わったよね~。ここ最近のインフレもすごいし……。あっ!」


喋っている途中でアリハナは何かを思い出したように手をポンと叩く。 


「そういえばさっき話した痛覚、疲労カットとかはオンオフできるんだった!eRavnはそういうのあったほうが良いよね?」


「おい、それは早く教えてくれよ。痛みも疲労も感じないなんてなんか物足りなかったんだよ。」


 こういう大事な情報をすぐ後回しにするのも、当時のアリハナから変わってない気がする。


「あはは。ごめんごめん!じゃ、教えてあげるからUI開いて。」


 そうして俺はアリハナに教えてもらい痛覚、疲労カットをオフにした。


「……変わったのか?」


「うん、変わったよ。」


 自分の手で設定したのだからもちろん切り替わったのは理解できるがどうにも実感がなかった。


 俺は何度か自分の顔を叩いてみるが元々、自傷ダメージは入らない仕様のため何も感じない。


「……なぁ、一回俺のこと叩いてくれないか?」


 どうしてもダメージを確認したくてアリハナに頼んでみる。


 だが、アリハナは少し困惑した様子だった。


「え……。いや、それはやめておいた方が良いと思うけど……。」


 これまでのアリハナなら面白がってすぐにやってくれそうなものだが……。


 もしかしたらアリハナは自分が強くなったから俺を傷つけるのを躊躇しているのだろうか?


「あぁ、もちろんアリハナが強くなったのはよく分かったから手加減はしてくれよ?それに多少は俺だって我慢できる。」


 アリハナは少し悩む素振りを見せる。


「うーん……。ちゃんと分かってるならいいんだけど。じゃあ一旦キャンプから出よっか。」


 キャンプでは他プレイヤーへの攻撃が禁止されているため俺たちはキャンプの外に出る。


 アリハナの後についてしばらく歩くと、鬱蒼とした森林の中の少し開けた場所に着いた。


「なぁ、少し叩いてくれるだけでいいんだぞ?こんなとこまで来る必要があるのか?」


 アリハナは立ち止まり呆れたような表情で振り返る。


「はぁ……。あのね、十年でこのゲームがどれだけインフレしたか分かってないでしょ?ま、私は止めたから自己責任でお願いね?」


 アリハナが俺の目の前まで歩み寄る。


 なんとも言えない緊張感にごくりと唾を飲む。


「いくよ?」


「あ、あぁ。」


「……本当に知らないからね?」


 アリハナが右手を上げると、軽く俺の頬に平手で叩いた。


 刹那、大砲にでも撃たれたかのような衝撃が顔面に加わる。


「ふげぇ!!」


 俺は情けない声と共に後方へ吹き飛ぶ。


 次の瞬間にはもう俺は茂みの中だった。


 いろんな場所をぶつけたようで全身が痛む。


 あぁ、これだ。


 この痛みがアスクロなんだよなぁ。


「だ、大丈夫?」


 アリハナが心配そうに駆け寄ってくる。


「……なんとか生きてるみたいだ。おかげでようやくあの頃のアスクロを思い出せた気がしたよ。」


「なんか気持ち悪い……。」


 アリハナの言葉は身体のダメージよりも大きかった気がした。

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