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ログインするのは、終わる世界  作者: 出水 光希


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7/16

クエスト、クリア

 俺はなかなか状況を整理することができず、ただアリハナの戦いを見ていた。


 何をしてるんだ俺は。せっかくアスクロに戻ってきたんだ。できることをやるしかない。


「アリハナ!俺も手伝う!」


 俺が大声を出しアリハナに呼びかけるとアリハナはチラッとこちらを見る。


「もう、遅いよ。」


 はっきりと聞き取れなかったが、微かに微笑んだ口元はなんとなくそう言った気がした。


 俺が決心し飛び出そうとしたその瞬間、緑翠竜の爪がアリハナを襲う。


 アリハナは姿勢を崩した。


「アリハナ!!」


 緑翠竜は既に追撃の準備ができている。


 振り下ろされる鋭い爪が直撃したらアリハナが無事でいる保証はない。


 俺はアリハナを助けようと全力で走る。


 どうにか間に合えと心に余裕は無かった。


 ——無いはずだったのになぜかまた、懐かしさにも似た既視感を感じている。


「おおぉぉぉぉ!!」


 ゾーンというやつだろうか、周囲がゆっくりに見える。もしかしたらこれもゲームの追加要素なのかもな——そんなことを考える余裕すらあった。


「eRavn……。」


 本当に不思議な感覚だ。この状況の中で一瞬、アリハナと目が合った気がした。


 実際に目が合ったのかもしれない。


 そんなことを感じながらも緑翠竜はその爪を振り下ろす。


 皮肉なものでよく見えているからこそ俺の足ではもう間に合いそうにないのがよく分かってしまう。


 どうせ痛覚すらカットされたゲームだ。間に合わないのなら仕方ない。アリハナがやられたとしてもベースキャンプからやり直すだけ——。


 俺は何を考えている?


 当時の俺はやられて仕方ないなんて考えたか?仲間がやられるのを黙っていられない、ノーコンクリアに拘っていた俺は最低限の労力で成果を得ようとする立派な大人になってしまったようだ。


 今ならまだあの頃の俺に戻れる気がする。


 俺は剣を持つ手を思い切り振りかぶる。


 そして狙いを定めると自慢の剣を緑翠竜に向かって思い切りぶん投げる。


 これだ。


 俺は十年以上前にも緑翠竜に向かって剣をぶん投げた。


 何のために?


 ——そうだ、あのときも俺はアリハナを守ろうとしてたんだ。


 俺がぶん投げた剣は緑翠竜の爪を弾き、そのまま地面に突き刺さる。


「アリハナ!思い出したぞ!このクエストは俺とお前が初めて出会ったクエストだ!」


 声の限りアリハナに伝えた。


 アリハナは静かに笑った。


「もう、だから遅いんだってば。」


 俺はそのままアリハナの前に立ち、剣を拾うとなぎ払うように振るわれた緑翠竜の尻尾を剣で受け止める。


 やっぱり正対してしまえばなんということはない。


「アリハナ、このまま一気に倒すぞ!」


「うん、もう終わりでいいよね。」


 アリハナが言うと俺の顔の横を特大の火球が通った。


 次の瞬間には緑翠竜は全身が炎に包まれる。


「へ?」


 何が起こったかよく分からないままクエストクリアのファンファーレが流れる。


「もう、大変だったよ!緑翠竜を倒さないように苦戦してるふりするの。まぁ、eRavnが思い出してくれたから良かったけど。」


 俺は恐る恐るアリハナの方へ振り返る。


「え?じゃあお前、最初っから……。」


「当たり前でしょ?今さら緑翠竜なんか相手にもならないんだから。あの時と同じ状況になれば何か思い出すかと思ったけど、まさかこんなに上手くいくとはね。」


 アリハナは得意気にこたえる。


 全部アリハナのシナリオ通りだったと思うとなんか悔しいような気もしたが、アリハナがこれだけ強くなっていたと思うとそれはそれで嬉しいものだった。

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