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ログインするのは、終わる世界  作者: 出水 光希


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6/16

緑翠竜、再び

 その後も俺は感覚を取り戻す——いや、新しい感覚に慣れるためにザコモンスターと何度か対峙した。


 アリハナも戦いに手を出さないこと以外はご機嫌で何も変わりない。


 数回のバトルで分かったことがもう一つある。


「なぁ、もしかしてアップデートで疲労感もなくなったのか?」


 そう、かつてはバトルを繰り返すたびに息が上がっていたものだが今は何度戦闘を繰り返しても息が上がらない。


「あ、気づいた?そう、息は上がらなくなってるけどスタミナが減ると動きは鈍くなるから気をつけてね~。」


 なんだかノリが軽いのは気になるが。


 これは新規プレイヤーのためと言っているが、もしかしたら難易度がかなり上がっているのではないだろうか。


 当時の運営の迷走具合が少し分かった気がした。


 そんなことをしながら俺たちは森林地帯を抜けた。


 視界が開けると目の前には丘陵地帯が広がる。


 そしてこの目の前の丘の上には緑翠竜の巣があるはずだ。


 丘に差し掛かったところで後ろからアリハナが俺を追い抜いた。


「ほら、置いてっちゃうよ?早くしないと緑翠竜も私が倒しちゃうんだから!」


 さっきまでのアリハナとは感じが違うが何か考えが変わったのだろうか。


 俺はアリハナの後を追う。


 この丘でアリハナの後ろ姿を追いかけながら俺は既視感のようなものを感じた。


 ちゃんとは思い出せないのがモヤモヤするがこれがアリハナの言っていた思い出なのだろうか。


 しかし、たしかにアリハナの言う通りこのクエストには何かがある気がしてきた。


 あとは目と鼻の先にいる緑翠竜を倒すまでに思い出せるかどうかだな。


 アリハナが丘の頂上付近で立ち止まる。


 俺もアリハナに追いつく。


 そこに緑翠竜がいた。


 丘の頂上の剥き出しの岩場で堂々と寝ていても平気なほどに緑翠竜はこの辺一帯の生態系を支配している存在なのだろう。


 もちろん、寝込みを襲ってはい、終了というわけにはいかない。


 俺の記憶が正しければ——。


 俺がもう一歩近寄ると緑翠竜は目を覚まし、咆哮する。


 そう、ある程度プレイヤーが近寄ると目を覚ますようになっているのだ。


 ちなみに遠距離からの攻撃もしっかり防御される。


 俺は軽く腰を落とし、剣を構える。


 戦闘準備をするとなんとアリハナが緑翠竜に向かって飛び出していった。


「おい、アリハナ!待て!」


 アリハナは全く聞く耳を持たなかった。


 そもそもアリハナは魔法職であり、近接戦闘なんて向いてない。


 戦闘が始まるとそれは杞憂だったと知る。


 多少苦戦しているようだが、軽やかな身のこなし、攻撃魔法の多彩さ、あの頃のアリハナにはなかったものだ。


 本当に十年間アリハナはこのゲームを続けてたんだな。


 俺も隙をみて戦闘に加わるとしよう。


 俺はアリハナと緑翠竜を凝視する。


 だがここで再び違和感を感じる。


 ブランクのせいか?緑翠竜の動きが全く読めなくなっている。


 いや、きっとそんなもんじゃない。もしかしてモンスターの行動パターンも変わっているのか?


「eRavn、どうしたの?このままじゃ私が倒しちゃうよ?」


 アリハナが緑翠竜と対峙しながら俺に話しかけてくる。


 このまま突っ立ってるのは嫌だし多少攻撃をもらう覚悟で突っ込んでみるか?


 緑翠竜程度ならそれでいける。


 ん?


 そうだ、"緑翠竜程度"だ。


 いくら魔法職とはいえアリハナの実力で緑翠竜程度にてこずるか?


 手を出さないと言ったはずのアリハナの行動といい、俺の頭の中で何かが少しずつ噛み合わなくなっていく。

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