再開、再会
ワールドの読み込みが終わりに近づくと荘厳なBGMが聞こえてくる。当時と変わっていなくて少し安心した。
『読み込み完了』
そう表示されると目の前が一瞬白い光に包まれ、次の瞬間には石畳の街並みに変わっていた。
「帰ってきた……。」
その場で懐かしい街並みを一つ一つ記憶と照らし合わせるように辺りを見渡す。
俺が拠点として設定していたオリゴーの街。
ここでギルドを立ち上げ、仲間と出会った俺の全てが詰まった街だ。
それにしても全盛期にはプレイヤーでごった返していたこの街も今やずいぶんと寂しいものだ。
行き交うのは数人のプレイヤーと、いつも通りの生活を繰り返すNPCたちだけ。
だがそんなの関係ない。
俺は独りだとしてもサ終までこのゲームに、いや、あの時代に浸ると決めた。
そう決めたからにはまずは何をしようか。
やりたいことは山ほどある。
しかし、ログインしてからずっと視界の右上にある赤いポッチが気になる。
きっと十年分の通知が溜まっているのだろう。
「ステータスオープン。」
その声とともに目の前にステータスやアイテム、チャット、通知を操作することができるUIが開く。
『通知999+』
まぁ、こうなるよなぁ。
なんて思いながら一括で既読にする。
フレンド申請もチャットもこの調子で通知を消していく。
順々に通知を消していく途中、ギルドチャットで一瞬手が止まる。
『銀翼の烏 ログイン1名』
銀翼の烏というこれまた黒歴史に近いネーミングはまた後にしよう。
確かログイン人数の表示に自分は含まれていないはずだ。
メンバーの誰かがログインしている。
心臓が大きく脈打った気がした。
ギルドチャットを開けば誰がいるかすぐ分かるはずだ。
そう思いチャットを開こうとすると。
『ピロン』
通知音とともに全て消した通知が再び『1』となる。
今まさに開こうとしていたギルドチャットだ。
この感情が緊張なのかワクワクなのかは分からないが、胸を高鳴らせながらチャットを開く。
『アリハナ:そこで待ってて。』
アリハナ。
ギルドで最年少の女の子だ。当時はまだ中学生だった。
彼女がいるのか。
十年ぶりの再会に少し緊張してきた。
目の前の噴水広場を軽く見渡すがそれらしい姿はまだ見えなかった。
待てということはこれからここに来てくれるのだろうか。
それにしても一番最初に再会するのがシャチ兄でも他のメンバーでもなくアリハナとは少し意外だ。
シャチ兄とはこのゲームで意気投合し、共にギルドを立ち上げて大きくしてきた。
シャチ兄ならサ終のニュースを見たら真っ先にログインすると思ったんだけどな。
そんなことを考えながらその場でぼんやりとアリハナを待った。
……。
…………。
噴水広場をうろうろするNPCを眺めながら気付けば三十分ほど経っただろうか。まだアリハナが現れる気配はなかった。
「ステータスオープン。」
再びチャット画面を開きアリハナへメッセージを送る。
『eRavn:アリハナ?何かあったか?』
当時のアリハナならメッセージを送れば誰よりも早く返信していた。だが、少し待ってみても既読すら付かない。
本当に何かあったのだろうか。
こちらから迎えに行きたいがどういうわけかアリハナはステルスモードになっているらしく他プレイヤーからは干渉できないようになっている。
こちらが動くわけにいかないのでソワソワしながらアリハナを待ち続ける。
何度もチャット画面を開いては既読確認をするが一向に既読は付かない。
そしてとうとう一時間ほど経過してしまった。
もし街の中にいるのならこっちも探してみようか。
そう思いその場を離れようとした瞬間、後ろから肩をポンポンと叩かれる。
「お待たせ、eRavn。」
ハッと声の方に振り返ると、当時の姿のままのアリハナが立っていた。




