前進か、撤退か
「で、この先シーフもなしにダンジョンをクリアするのは難しいんじゃない?私は一旦諦めるのもアリだと思うけど。」
「んー、諦めるってのもなぁ。」
アップデートされたとはいえ、ダンジョン自体は中級程度のダンジョン。シーフを欠いただけでクリアできないというのはやはり俺の沽券に関わる。
そんなことを考えてる俺を、アリハナがなにやらジッと見てくる。
「どうせここで諦めたらプライドがどうこうって考えてるんでしょ?」
「うっ。」
図星だった。心の内を見透かされているようで俺はなにも言えなかった。
「まぁ、eRavnならそう言うとは思ってたけどね。そしたら私が先に歩いてトラップを全部受けながらクリアしちゃうのは?」
なんかすごいことを言っている気がするがアリハナはいたって真剣な様子だ。
「全部受けるって……。そんなことしたらアリハナが危ないだろ?」
「魔法使いの上位スキルの高度魔力耐性持ってるし、このレベルのダンジョンのトラップはほとんどダメージないんじゃないかな?天井が落ちてくるとか物理的なのは普通に防御できるし。」
「うーん、たしかにその作戦なら"ゴールにたどり着く"ことはできるだろうな。でもただ、"ゴールにたどり着く"こととダンジョンを"クリア"するってのは違うんだよ。ここは俺に行かせてくれ。」
するとアリハナは少しだけ笑った。
「なにそれ、めんどくさ。でもeRavnってそういう人だったね。なんか攻略のためのアテはあるの?」
「ある。」
アリハナは少し驚いたようだった。まさか俺に攻略のアテがあるとは思っていなかったのが丸分かりだった。
俺はUIを開き装備を変える。新たに装備したのはそう、例のドローンだ。
「こいつを先に飛ばしてトラップを起動させて、その都度トラップを破壊するんだ。良い作戦だろ?」
自分では分からないがきっとこの時俺は渾身のドヤ顔をしていたに違いない。
「……私の作戦とたいして変わらないじゃん。今思い付いたんでしょ。」
またもや図星だ。
「い、いいんだよ。ダンジョンだってアップデートされてるんだから、この時代の道具使って攻略するのは普通だろ?それに、タンクのシャチ兄ならともかくお前にトラップを受けさせるのは見た目が良くない!」
「でもドローンすぐ壊れちゃうんじゃない?」
アリハナの指摘はいちいち的を射ていた。
「た……たしかに。」
俺は腕組みをして少し考える。ドローンの耐久についてはまったく考えていなかったことだ。
考えた結果、一つの結論にたどり着く。
「よし、アリハナ!ドローンに付加魔法を頼む!」
「いいけど、これは結局私の力じゃないの?」
「協力だよ協力。俺一人でやってるわけじゃないんだ、ゲームの醍醐味だろ?協力プレイは。」
それで納得したのかどうかは分からないが、アリハナはドローンに物理耐性、魔力耐性の魔法をかけてくれた。
「はい、これで大丈夫。」
「サンキュー。」
俺はドローンを飛ばすと一度、前後左右に動かしてみる。このドローンにコントローラーは無い。魔力でリンクしてあり、俺の意思によって動く。だから案外思っていたより操縦は楽で助かった。
「うん、これなら行けるな。」
俺はドローンを前方に飛ばし、それの数メートル距離を保ちながら着いていく。
アリハナも俺に続いて着いてきた。
「ねぇ、今思ったんだけど、たしかに魔力とか物質に反応して起動するトラップならこれで行けるけど、何かを踏んだり触ったりとか物理的なトリガーがあるトラップはこれじゃ難しいんじゃない?」
またアリハナは的のど真ん中を射る指摘をする。だがこれに関して俺には、どうにかなる自信があった。
「それはたぶん大丈夫だと思う。俺の考えてる通りならな。」
自信たっぷりに言う俺に対して、アリハナは怪訝そうな顔でこちらを見ていた。




