どうする、次の冒険
「で、今日はなんかしたいこととか決まってる?」
アリハナは笑いすぎて出てきた涙を拭いながら聞いてくる。
「んー、そうだな。ダンジョンに潜ってみるか?最近のダンジョンは無理にしても昔のやつなら大丈夫だろ。レベル上げにもなるしな。」
ほんとは最新のダンジョンも気になるが、昨日の緑翠竜の件もある。無理に新しいダンジョンに挑んでも痛い目に合うのは明らかだろう。
「うん、ダンジョンいいね。でも……。」
アリハナは何かを言いかけて途中でやめてしまう。
「なんかあるのか?全ダンジョンの敵レベルが底上げされてるとかか?」
「いや、ダンジョンみたいな狭いところだとドローンで活躍しにくいんじゃない?ぷぷっ。」
アリハナは口元を押さえて必死に笑いを堪えようとしていた。
「絶対使わねぇから安心しろ。」
「ごめんごめん。うん、ダンジョン行ってみようか!昔のなら敵は変わってないはずだから当時の感じのまま行けると思うし!」
それを聞いて少し安心した。ダンジョンの醍醐味はバトルよりもダンジョンそのものの攻略にあるから本音を言えばあまりバトルに気を取られたくはない。
それに、みんなで色んなダンジョンを攻略したんだ。バトルばっかせずに少しぐらいは思い出に浸りながらダンジョン散歩でもしたい。
「よし、じゃあどのダンジョンにするか決めないとな。」
「うーん、ダンジョンだったらクリート地下迷宮とかグラキエス氷墓廟とか懐かしくない?」
どちらも懐かしいダンジョンだ。
「クリート地下迷宮ってアリハナが何回も一人で迷子になったとこだよな!その度みんなで探したっけなぁ。」
「そうだよ、その度Yukoさんが壁破壊してダンジョンの形変わっちゃったんだよね。」
そんなこともあったな。Yukoはアリハナと同じ魔法職だったがいわゆる脳筋系で困ったらすぐ目の前のものを爆破する恐ろしい習性があった。
「グラキエス氷墓廟だって重装備のシャチ兄が何度も氷の床破って床にハマってたよなぁ。」
「ははは、あったあった!最後には装備全部はずしてシャチ兄だけすごい寒そうだったよね!」
ダンジョンを適当に二つピックアップしただけでも思い出話が止まらなくなりそうだ。
「懐かしいね。みんな色々とあったけどあの時は一番まともだったのってデルタΔだったのかもね。壁壊すYukoさんのことずっとお説教してたし、迷子になったり床壊したりしなかったもんね。」
「はは、間違いないな。って、俺だってまともだったろ。」
「何言ってんの。eRavnだって……。あっ!」
話の途中でアリハナが何かを思い出す。
「いきなりなんだよ、びっくりするなぁ。」
アリハナはとびきり明るい表情で俺を指差す。
「インシディアエ遺跡!」
インシディアエ遺跡というワードに俺も思わず反応してしまう。
「おぉ!あそこか!いいな!」
「eRavn、あそこのトラップに何回も引っかかってデルタΔにこっぴどく怒られたもんね。思い出に残らないわけないよね!」
そうだ、いくら記憶を探してもあれほどゲーム内で怒られた記憶はインシディアエ遺跡をおいて他にはない。
美しい思い出ではないのかもしれないが、そのワードを聞いてしまった瞬間から俺はもうそこに行きたくなってしまった。
「よし、決まりだ!今日はインシディアエ遺跡に行く!」
俺は胸の前で力強く拳を握った。
「うん、じゃあ最低限準備は整えないとね。十五分後、またここに集合でいい?」
「あぁ、今回は二人しかいないしな。回復アイテムとか揃えとかないとな。」
と言いつつ実際はアリハナがいればクリア自体はそう難しいことではないのだろう。しかし、できるだけアリハナに頼らずにダンジョンを踏破したいというのが俺のささやかなプライドなのだろう。
そうして俺たちは一時解散する。
「ドローンは一台で十分だよー!!」
去り際、俺の背中に向かってアリハナが大声で言っていたが、俺は振り返らないまま手をヒラヒラとさせる。




