9 8年
「私を、この宇宙船の修理を手伝ってくれないか。」
アリスは先生の赤い二つの光をしっかりと見つめた。ヒューもどこか期待するような眼差しで同じ方面を見つめた。
「え?無理だぜ。無理無理。」
アリスもヒューもどこか少し衝撃を受けたような顔をしたが、アリスはショックを隠すようにすぐさま声を出した。
「やはり、そうか・・・。無理を言ってすまなかったな。」
「先生!どうにかならないの!このままじゃアリスさんがかわいそうだよ!」
先生は宙に浮いて光をピコピコさせながらしゃべり始めた。
「いやー、そんなこと言われてもな~、俺だって助けたいのはやまやまだけど、この惑星にはエネルギーがないんだよ。その宇宙船を飛ばすのにどれだけエネルギーがかかると思ってんだ?たぶん、ヒューんちのエネルギーを切り詰めて余りを宇宙船を飛ばすのに使ってもそのエネルギーをためるのに軽く100年はかかるぜ。てか、坊主。名前つけてもらったのか?良かったな~前の音は俺には言語として認識できなかったから呼べなかったし。俺もヒューって呼ぶな!」
先生は嬉しそうに、宙をくるくる止まっているが、それとは対照的に、2人の顔は暗かった。無理もない。アリスは帰る希望を、ヒューは憧れの場所へ行ける希望を絶たれるのだ。それに慌てたのは先生だった。
「・・・。そんなに暗い顔するなって。もしかしたら、なにか別の方法があるかもしれないだろ!俺は思いつかないけど。アリス!何かないのか!お前のほうが俺より最新技術知ってんだろ。」
「・・・。学園時代の私の専攻は海洋だ。あまりに有名なものの仕組みはさすがに知っているが、最新技術には明るくない。」
「じゃあアリスさん!さっき言ってた宇宙ビーコン?は?作れないの?墜落して探したってことは宇宙ビーコンがあればどうにかあるんじゃないの?」
「宇宙ビーコン?なんだそれ。俺聞いたこともないぞ。」
「そうか。先生は放逐されたあとを知らないのか。今は私たちの生まれた惑星とは別にある数々の惑星にも人類がいることがわかっていて、それらの惑星ともにと<37惑星宇宙同盟>という同盟を結んでいるんだ。その同盟が見つけた惑星全てに何かあったときに本部と連絡を取るための宇宙ビーコンというものが置いてあるんだ。ちなみに同盟は急激に発展した科学技術と膨大な人数で10年かけて宇宙上のすべての惑星を発見したと思っていたから最近は探査部も縮小した。だから、この星を見つける可能性は限りなく低いだろうな。」
先生はしばし考え込んだ。
「今はそんな時代なのか・・・。まさか有人惑星が<ステーメイ>以外にあるとは・・・。ま!これが実践は知識に勝るってやつかな。それで、宇宙ビーコンだっけ?うーん、多分作れるぞ。その機能だけならエネルギー溜めんのもに8年くらいでいけるかな。まあ、なにごともなければだけど!それでいいか?」
「本当か!ああ、もちろんだ!宇宙ビーコンさえ作れれば同盟から迎えが来るはずだ。そしたら、宇宙に帰れるぞ!」
アリスとヒューは2人で目を合わせた。どちらの顔にも満面の笑みが浮かび、喜びを隠しきれない様子だった。
「喜んでるとこ悪いけど、アリス。一応、健康チェックしとくぜ?この惑星の何かがお前に悪影響を及ぼしてるかもしれないし、さっさとやっておかないと。」
アリスは先生のほうを向いてきょとんとした。
「なんだ。先生はそんなことまでできるのか。私は何をすればいいんだ。」
「じゃあ、体の状態をスキャンするのと血を少しくれ。」
「かまわない。指でいいか?」
アリスは指を先生に差し出した。すると先生は球体の中からどこからともなく、細いはりを出し、アリスの血をとった。
「しかし、そこまでいろいろ拡張しておいて針までだせるなんてどこまで改造されてるんだ。やはり<マザー14>を作った研究室はそこまで進んでいたのか。」
「まあな、ま!俺をほめても何も出てこないぜ。・・・解析完了・・・。あ?なんだ。データがおかしいぞ。アリス、お前今何歳だ?」
「24歳だが、それがどうかしたか?」
「お前と全く同じ遺伝子データが俺ん中にある。何か心当たりはないか?だが24歳なら俺が<ステーメイ>からでってた後に生まれただろ?」
「・・・。あるぞ。ちょうど話そうと思っていたんだが私はクローンだ。お前が<ステーメイ>にいたころからこの技術はあっただろう?」
「え?あの技術は完成したけど本当に完全使用していいかいろいろ議論されて完全使用はまだなかったあのクローン?うわ、俺<ステーメイ>に帰んの怖いぜ。どんだけ色々変わってんだろ。」
そうこう2人が話しているとその後ろから今は口出していい時ではないと感じていたのか先程から無口であったヒューが口を開いた。
「え!まってよ。僕も会話に乱入したい。クローンって何?あと宇宙船って宇宙を飛べる機体ってこと?」
「ああ!悪い、ヒュー。すっかり2人で話してしまっていた。宇宙船はその認識で合っている。クローンについてはソフィアさんとミハイルさんにも話し忘れていたから帰ってからでいいか?」
「うん、もちろん。」
そうして2人と一つの機体はほかにもいろいろなことをしゃべりながら帰路についた。その顔は2人が出会ってからいままでで一番晴れやかな顔をしていた。




