8 ヤマト
「ううっ、ううっ。」
ミハイルが泣いてた。傍らには目にうっすらと涙をためたアリスがたっている。
「ミハイルさん、どうして死んじゃうんだよ!一緒に宇宙に行ってよ!どうして!」
「・・・。ヒュー、これを。」
そういってアリスはヒューに紙とネックレスを差し出した。
「これは?」
「ミハイルさんからだ。ネックレスのほうは肌身離さずもてと。すまない。私はミハイルさんが長くないことを知っていた。私を責めてもらってもかまわない。」
ミハイルはほんの少しだけアリスをにらんだかと思うとアリスから2つのものを受け取った。
「そんなことしないよ。どうせ、ミハイルさんが僕に隠したがったんでしょ。」
そういいながらヒューは四つ折りの紙を開いた。
ヒューへ
なにかあっても風が連れていく。だから、自由に進め。
ヒューはすでに泣きはらした目から再度ぼろぼろと涙を流しながら笑った。
「これだけ?ふふっ、ぐすっ。こんなにかっこつけて。知ってる?風が連れて行くってソフィアさんがミハイルさんに始めて言った言葉なんだよ。結局好きの一つも言えなかったくせに。」
「・・・。そうか。」
「こうしちゃいられない。ソフィアさんの墓の横にミハイルさんの墓を作ったし、明日の用意をしないと。」
「いいのか?もう少しここにいても。」
「いいよ!ここにいても悲しくなるだけだし、明日もう一回くれば。どうせミハイルさんは予定通りに信号を送れって言ってたんでしょ。」
「どうしてそれを!」
「ミハイルさんが言いそうだもん。」
そういって、ヒューは走って墓を後にした。
「今追いかけるのは無粋だぜ?アリス。あいつだって泣きたい時があるんだ。」
「私だってそれくらいわかっているぞ!」
次の日が来たのはあっという間であった。ミハイルの願い通りに2人とも泣きはらした目で宇宙ビーコンの前に立った。
「ヒュー、信号を送るボタンを押してくれ。」
「え?いいの?アリスさんが押さなくて?」
「お前がいなきゃ完成しなかったんだ。お前に押す権利がある。」
「じゃあ・・・。お言葉に甘えて、行くよ。」
そうしてヒューが宇宙ビーコンに触れようとしたその瞬間。
「ちょっとまったあ!!!」
「どうしたの?先生?」
「実は今の今まで秘密にしてたけど俺ちょっとやらなきゃいけないことがあるから。同盟が来る前にお別れだ。」
「え!どうして!」
「ごめんなあ、ほんとは俺だってお前と一緒に行きたいんだけどどうしてもやらないいといけないことがある。これだけは譲れないんだ。」
「どうしても?」
「ああ、どうしてもだ。」
ヒューは少しだけ黙り込んだ。その間先生の赤い光は先生の気持ちを代弁するかのように強く輝いていた。
「そっか・・・。また会える?」
「もちろん!と言いたいところだが約束はできない。」
「だめ、約束しなきゃ行かせないから。」
「・・・。善処する!善処!ここまでしかできないぜ!」
「・・・。じゃあそれでいいよ。またいつか会おうね。」
「ああ。じゃあ俺は俺が宇宙に行けるだけのエネルギーを勝手にもらっておいたから。ごめんな?」
「いいよ。それくらい。今までありがとう。」
「大したことなかったぜ?あとアリス。ヒューを頼んだ。」
「もちろん、ソフィアさんにもミハイルさんにも頼まれているんだ。お前に頼まれなくても面倒見るさ。」
「ならいいさ。じゃあな!お前ら元気でやれよ!また会う日まで!」
先生は高く飛んで行った。先生の黒が空と同化して徐々に何処にいるかわからなくなる。
「・・・。見えなくなっちゃった。」
「ああ、そうだな。最後までよくわからない奴だったな。」
「確かに、でも先生は先生だから。さっさと押しちゃお!しんみりしたくない。」
ヒューがしっかりと信号を送った。
「なんも起きないね。」
「この惑星は地図上にないし、少しだけ時間かかるんだろう。・・・。ヒューは宇宙に行ったらどうするんだ?」
「どうする?そんなこと考えたことなかった!宇宙に行くことばっか考えてたから!どうしよ!」
「ふふっ、落ち着け。そういうと思っていたぞ。それなら学園に入らないか?」
「学園?アリスさんはそこの卒業生だっけ。前言ってたね、それもありかも。」
「まあ、いろいろ選択肢はある・・・。あの光、宇宙船の光じゃないか?随分とでかいが、あれは・・・。」
アリスの言う通り、宇宙船らしき物体が近づいてきた。
「え!あホントだ!大きい。すごい。あんなに大きい物体が宙に浮けるなんて。
「もしかして、あれは、<ヤマト>か?救助だけにどんな気合をいれているんだ・・・。」
「そんな<ヤマト>ってすごいの?」
「すごいどころじゃない。私が軍にいたときは<ヤマト>は性能面、サイズ面を見ても軍が保有する宇宙船の中で一二を争っていたぞ。」
「え、それはすごいね。」
そうこうしているうちに<ヤマト>は激しい音と風を奏でながら近づいてきた。かつて、アリスが墜落した時とは違い、ゆっくりと地面に着地し、すぐに降りてくる人影が見えた。
「初めまして。新たな惑星のみなさん。信号を受け取ったのでこの惑星に参りました。」
降りてきたのは強そうにも弱そうにも感じない中肉中背、中年の男であった。
「おや?そちらの方は、もしかして10年前ほど前に行方不明になられたアリス様ではないですか?」
「その通りだ。よく知っていたな。私は宇宙連盟共同軍・探査部・第2軍隊所属のアリス・ステラ・オービット。10年前にこの惑星に墜落してそのままこの惑星で暮らしていた。隣にいるのはこの惑星の住人、ヒューだ。」
「そうですか、ご無事で何よりです。あなた様ほどの人を知らない人はいませんし、特に私は学園時代クローンについて学んでおりまして、あなたが初めてのクローンとして、誕生したときのことは今でも覚えております。今はクローンが街を歩くのが当たり前となっております。きっと、多くの方があなたの帰還を歓迎しますよ。そして、ヒュー様、初めまして。私は<37惑星宇宙連合>の共同軍所属、医療・救助部のファン・シンユーです。」
「あ!えと!初めまして、僕はヒューです。あの、えと、僕も宇宙に連れて行ってもらえるんですか。」
「ヒュー、落ち着け。ファン、まずは宇宙本部に行くだろう?10年も立っているから私がどういう立場かわからないが、私がヒューの後見人となる。ヒューをこのまま連れて行ってもかまわないだろうか。」
「もちろんでございます。お2人とも身体検査が済みましたらともに宇宙本部へとご案内いたしますよ。」
「え!やったあ!」
「だからヒュー、もう少し落ち着け。ところでファンなぜこんなに大きい宇宙船で来たんだ?。」
「大きい?ああなるほど。いえ、アリス様。この宇宙船は現在A級の機体に入らず、B級の機体となります。10年間の間で宇宙船の技術もさらに発展し、さらに大きな宇宙船が次々と開発されているのですよ。この<ヤマト>は現在、緊急性・危険性が高いときに使われる救急宇宙船となっております。今回は13年ぶりの新惑星から発信が来たということで安全を確保する必要があり、この機体で参りました。新たな惑星が見つかったのは本当にすごいことですよ。もう同盟は<宇宙探査終了宣言>まで行い、宇宙についてすべて知っていると思っていたのですから。」
「やはり10年で同盟はそこまで進んだのか。その中でもこの惑星が見つからなかったのは奇跡に近いのかもな。この惑星の探査については今後私の管理下に置きたい。可能だろうか?」
「ふむ・・・。そこまでは難しいです。あなたの軍人としての職務は現在凍結されております。後見人に関してまでは可能でも貴重となっている新惑星を管理下に置くのは厳しいかと。」
「やはりか、わかった。だが、惑星にある家とあたりにあるものはヒューのものだ。家に勝手に侵入するなどは許されないぞ。」
「それはもちろん。さて、ヒュー様、アリス様。そろそろ<ヤマト>に乗られませんか。このまま立ち話もなんですし、お話しは2人が身体検査を受けた後に中でするのはいかかでしょう。」
「それもそうだな。」
最初にファンが<ヤマト>へ乗り込むとそのあとにアリスが続いた。ヒューはぼおっとしていたかと思うと慌ててアリスの横に並び、アリスに小声でささやいた。
「ねえ!僕アリスさんがクローンってことは聞いたけど初めてのクローンとは聞いてないんだけど!」
「ああ、言ってなかったか?まあ、あまり重要なことではないだろう。自ら行ったことが何か初めてなしたことであれば褒められるべきだが、私は何もしていない。誇るべきことでもないだろう?
「まあ、そういわれればそうかもしれないけど・・・。」
「お2人とも、お話しのところ申し訳ありませんがここに立っていただけますか。」
2人は特に逆らうことなく指定された場所に立った。すると2人の横から音声が聞こえた。
「身体検査を行います・・。両者、身体、精神ともに異常ありません。」
「昔よりずいぶんと早くなったものだな。」
「我々も10年間なにも成長しなかったわけではないのですよ。それでは中にご案内いたしますね。」
そういってファンが大きな2つ目の入り口を開くとそこには働く大勢の人と、様々な機械が動いていた。
「すごい・・・。」
「私からしたらあまり変わっていないようで安心したよ。だが、本部についたら今のことを学びなおさないと。」
「本部に両者それぞれに必要な教育を手配しておきますね。・・・。失礼、連絡が。・・・。ああ、もう出発してかまわない。・・・ヒュー様、アリス様、この宇宙船はまもなく離陸いたします。」
「ああ、わかったありがとう。」
「ありがとう・・・ございます・・・。」
ファンの言葉通りすぐに宇宙船が飛び立った。宇宙規模でみれば大きい部類に這いいらないといえどもヒューにとっては今まで間近で見た一番大きなものが宇宙を飛んでいるのは衝撃であった。宇宙上の光よりも速く走り、窓に光の線を残すさまをヒューはこの時に一生忘れないであろうと思った。
「アリスさん・・・。」
「ん?なんだ?」
「僕、学園に入りたい。」
これにて第1章「新惑星」完結いたしました。次回から第2章「学園」となります。
今後、ストーリーの流れなど大きな点に関しては変更するつもりはありませんが、表現などに少し変更を加える場合があります。ご容赦ください。
また、拙い文章をここまで読んでくださり本当にありがとうございました。
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