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5 ミハイル


ソフィアはさらに言葉をつづけた。


「今の話から分かるとは思うけど、もうこの惑星に将来はないわ。新しい人間の命が誕生することもないし、私たちももう長くない。私たちが死んだら、あの子は死ぬまでこの広大な惑星で独りぼっち。あなたには本当に悪いけれど、私はあなたが来て心の底から安心した。あの子が独りぼっちになるまでの期間が長くなったと。でも、私はあの子にはいろんなことを見てほしい。いろんな人と出会い、別れ、成長していってほしい。そのためにはこの惑星からあの子がでていくしかないの。あなたが来る前から考えてた。あなたが言うようにもう宇宙に帰る手段はないのかもしれないけれど、もし、もし宇宙に行けるのであれば、あの子と一緒に行ってちょうだい・・・!」


最後のほうはかろうじてでたような声であった。ソフィアが言葉を言い終えるとあたりは静寂に包まれた。言葉を返すべき人物であるアリスは何も言わなかった、いや、あまりの重さに何も言えなかった。自身でさえ帰れないかもしれない身で軽々しく何か言えるような話ではなかったからだ。しかし、本人の性格であろうか。長い沈黙と期待するような眼差しに耐え切れず、すぐにゆっくりと口を開いた。


「その話については、私個人がおいそれとは簡単にうなずける話ではありません。しかし、この惑星の存在を私が軍に報告すれば、この星は同盟の管理下におかれ、住民は宇宙上における自由が確立されます。その時に本人の望むのであればこの惑星外に居住することも可能と思われます。そして、私もその時が来れば、できるかぎり彼の力になることを約束いたします。」


ソフィアはその言葉を聞いて今までこらえてきたものが噴き出すかのようにわっと泣き崩れた。


「ありがとう・・・!その言葉だけで十分よ・・・!」


そして、ソフィアは涙をぬぐった。


「ごめんなさいね、急に取り乱してしまって。さっきの言葉を聞けて安心してしまったの。先程の宿の話はアリスさんは泊まるところを探しているのよね?だったら、私たちの家に住んではどうかしら。ミハイルさんもいろいろとアリスさんと今の宇宙について話したくてたまらないでしょう?まあ!でもよくよく考えればこの建物以外今はないのだからしばらくは住むしか選択肢がないわね。」

「それはありがたいのですが・・・、今の宇宙について話したいとは?あなたがたは宇宙を知らないのでは?」


その質問に答えたのはミハイルだった。


「宇宙について知らないのは確かだ。・・・。お前さんはさっきこの惑星に墜落してきたのか、と聞いたな?それは少しだけ正しい。落ちてきたのは私だけだ。42年前にな。」

「42年前?そのときは同盟すらなかった・・・。そしたら、なぜ?この惑星にたどりつくことに?宇宙探査はまだきちんと行われていないはずです!あの帝国すらまだできるまえで・・・。まさか!」

「ああ、そのまさかだ。当時宇宙、いやあの時は宙海(ちゅうかい)と呼んでいたが、そこに行くには一つしか方法がなかった。」

「<氷刑(ひょうけい)>ですか・・・。確かに、当時の帝国成立前のあの国では多くの<氷刑>がなされたとは聞きましたが、まさか惑星に生きてにたどり着くことがあるとは。では、不躾な質問ですがあなたは当時やんごとない身分だったのでは?<氷刑>は人を全身凍らし、単独ポットにいれて宇宙に流す性質上、はっきり死刑にできない方々に行われていたはずです。」

「・・・。大した身分でもなかったさ。ただ、少し事情が複雑だっただけだ。」

「そうですか。だからですね。先程から全自動翻訳システムにあまり齟齬が感じられなかったのは。あなた方の言語にとっておそらく初めてでるであろう言葉を多く使ったのに今回はそれがあまりありませんでしたし、ソフィアさんがほかの惑星の存在を知っていたような口ぶりでしたので、少し違和感を感じていたところではありました。」

「今はそんなものがあるなんて便利なものだな。・・・そうか、帝国はできたのか。お前さんにいくつか聞きたいことがある。いくつか聞いてもいいか。」

「もちろんです。わたしこそ当時について聞きたいことがたくさんあります。」


それからはどこか夜特有の何かにじみ出るような温かさの中で話が続いた。2人は多くのことを質問しあい、ときどきそれにソフィアが加わった。そして、大方聞きたいことが聞き終わると3人の話し合いはお開きになった。ソフィアはアリスを部屋に案内し、アリスはその部屋にあった温かみのある小さなベッドに横になった。そのときには、もうアリスには不時着したばかりの時の恐怖や焦りがほとんどなくなっていた。アリスは穏やかで安心する気持ちに包まれて夢の中に旅立っていった。


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