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オンリープラネッツ  作者: 星塚もぐら
第1章 新惑星
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5 先生


次の日アリスが目を覚ましたのは突然だった。


「メケッ!メケッ!メケケッ!!」

「なんだ!!?敵襲か!?」


アリスが急いで部屋から出るとそこにはのんびりと座っているミハイルとソフィアがいた。


「あら、そんなに慌てて、まさか、何かあった?」

「いえ!なにかあったというよりこの声は?野生動物から襲われているのではないのですか?」


するとソフィアは少しきょとんとした後口を大きく開けて笑い出した。


「もしかして、この鳴き声のことかしら?ごめんなさいね。説明してなかったわ。あら?でもあなたはこの鳴き声の持ち主にあったことあるのではないかしら?」

「あったことがある、ということはもしかしてあの羊とカンガルーが混ざったような生き物のことですか?夜は全く泣かなかったのですが朝はここまで鳴くのですね。あまりに鳴くので家が攻撃されているのかと思いました。」


アリスは少し頬を染め恥ずかしげにつぶやいた。しかし、その声色は安心から少し軽やかであった。


「羊もカンガルーもわからないけれど多分正解よ。この惑星で鳴くのは今はもう一種類しかいないもの。プログーというのよ。良い狩りの友になるのだけれど縄張り意識が強くて彼らに素手で勝たないと縄張りに入れてもらえないの。おもしろいでしょう?」


ソフィアがアリスに笑いかけた。アリスは見て緩やかに笑い返した。


「そんな動物がいるのですね。私がこの惑星についてから質問したいことが多すぎてワクワクしてばかりです。そんな感情は本当に久しぶりなんですよ。だって、もうこの宇宙についての9割は知られ尽くされているのですから。それなのに、この惑星のようにまだ同盟から未発見かつ、寿命、形、その他において等しい人類がみつかるなんて。」

「昨日も聞いたけれどこの空が宇宙のほんの一部なのでしょう?それなのに、9割も知られているなんてあなたが来たところはすごいところなのね。もう、ミハイルさんは来たところについて全然話してくれないんだから。」


2人がミハイルを見る。ミハイルは2人の視線にものともせずにゆっくり口を開いた。


「・・・。私の時は宇宙についてほとんどわかることはなかった。惑星についても話すことはない。人間の醜さが現れたような惑星だっただけだ。」


あたりは静まり返った。このときアリスはミハイルは空気を凍らすのが得意な人なのだなと場違いにも思ったが、話すべきことがあるのを思い出して話し始めた。


「少年はどこに?昨日のお礼と質問について答えてあげたいのですが。あと、ミハイルさんについてはどこまで話していいのでしょうか。」

「お前さんが墜落した場所を見に行くと言っていた。お前さんが乗ってた期待には何も触るなとは言ったが。私のことはなにも喋るな。あの子は私のことをただの森の番人としか思ってない。」

「わかりました。ついでに先生についても詳しくきいてみますね。それでは、そこに行ってきます。外に出てもプログーにおそわれたりしませんよね?」

「あいつらの縄張りは森だけだ。それより外にいるならこちらから襲わない限り襲ってこない。だが、お前さんなら勝てるように見えるが。」


ミハイルが鋭い目つきでアリスを見つめる。その視線を受けてもアリスは涼しい顔で飄々と答えた。


「なんとも。私は彼らの強さを知らないので用心に越したことはないのですよ。」


そういって、アリスは立ち上がった。昨日墜落した場所は覚えている。扉を開けて奇妙な動物が大量にいるのはわかっていても驚いたが、星のない夜のような見たことのない空を見ながらゆっくりと少年のもとへ歩いて行った。


機体が見えたかと思うと直ぐそばで少年がうずくまっているのが見えた。


「おーい、ヒュー!!!」

「アリスさん!」


少年はぱっと振り向いて嬉しそうな笑顔を見せた。


「アリスさん、ソフィアさんたちと何話したの?秘密?いまから僕の質問に答えてくれるよね?あ!昨日なんで僕の名前呼んでくれなかったの!!少年ってよんでたでしょ!」


少年はアリスのそばで頬を少し赤らめ、興奮した様子で家でのアリスの態度に抗議した。


「ああ、それは私が悪かったから落ち着いてくれ。昨日は家まで案内してくれてありがとう。・・・ただ仕方がないだろう。さすがにまじめに話すときにあだ名を使うのはどうかと思ったんだ。質問には答えるよ。ソフィアさんたちとの話も少しだけなら。でもその前に一つ。先生について知りたい。今どこにいるのか?なにものなのか?そしてどこからきたのか。今私は宇宙に帰る手段がない。だが、かすかな可能性ではあるが先生がてがかりを持っているかもしれないんだ。」


アリスはまたも真剣なまなざしでヒューを見つめた。ヒューは昨日とは違いふてくされた様子で小さくつぶやいた。


「・・・。先生は自分のこと<CAP《キャップ》>って名乗ってた。拾ったのはこことほとんど同じ場所。そして今が僕が持ってる。」


「CAP?もしかして先生はC・A・P(シー・エー・ピー)、CAP(キャップ)!!とか言っていたか?」

「あ!言ってた!言ってた!なんでわかるの?もしかしてアリスさんと同じ所からきたの?」


少年は先ほど少し不貞腐れていたのが嘘のように再度興奮してアリスに詰め寄った。


「ああ、そうだ。といっても私が生まれる前のものだがな。ただ、C・A・P(シー・エー・ピー)、CAP(キャップ)!!という宣伝がとてつもなく流行ってな、私まで知っているというわけだ。はあ、しかし先生の正体は旧型か・・・。しかもCAPなら聞いても宇宙に帰る方法はわからないだろうな。」

「え!アリスさん宇宙に帰れないの?どうして?」

「ああ、そうか。ヒューには言ってなかったか。私は~。」


アリスは、<37惑星宇宙同盟>について、この惑星について、自身を取り巻く状況についてせつめいした。その話を聞きながらヒューは胸の高鳴りを止めることができなかった。


「というわけでな、もう機体も壊れ、同盟もこの惑星について知らないから連絡を取ることもできないだろう。もしかしたら、先生が宇宙について知っている人だったらと思ったが、CAPは子供向け学習補助装置だから宇宙について詳しい知識を持っていないだろう。」


その言葉を聞いてヒューは途端に興奮が収まり、アリスが宇宙に帰れないことを思い出した。自分がその立場だったらと考えるとアリスの気持ちは計り知れない。自分に協力できることならとアリスに協力する気持ちをより強く固めた。


「人工知能はあれだよね、人間もどきのすごい脳みそみたいな?でも旧型って?」

「ヒューは人工知能まで知っているのか、すごいな。旧型というのは<フード・ウォー>という大規模な戦争以前に作られた人工知能のことを指すんだ。新型というのは汎用人工知能だ。旧型は自律的に動かず人間の力を借りて成長していくんだ。だから、インターネットに繋がらないと知らないことには対応できない。その点新型はインターネットがなくとも初めてのことにも対応できる、旧型よりさらに人間に近い、いやそれ以上の存在といえるほどだろうな。そのせいで今は新型は人工知能として宇宙に存在していない。あまりに人類の脅威となったんだ。」

「へえ!人工知能にもそんな違いがあるんだ!先生は僕にとっていろんなことを教えてくれたけど、宇宙にとっては昔のものなんだね。」

「旧型といえどもCAPは学習補助装置だからな。旧型といっても知識が豊富だ。おそらく私ですらCAPから学べることはたくさんあるよ。」


自慢の先生を宇宙から来た自分より知識のある人に褒められたのがよほどうれしかったのであろう。ヒューは先程抑まった胸の高まりが復活し、幼子らしく先生のことをもっと自慢したくなった。


「やっぱり!?CAPはすごいんだよ!僕に宇宙のことたくさん教えてくれたんだ!ここで拾ってね、さわったらさっきのあのC・A・P(シー・エー・ピー)、CAP(キャップ)!!っていいだして、そのあと勝手に喋りだしたんだ。で、僕にいろんな事聞いてくるからこの惑星について話したらの惑星にはあまりに自分が来たところと共通点が多いから元からその宇宙上のいろんなものが流されやすい場所じゃないかって!あとは、星についてとかを教えてくれて!それを聞いて僕、流星がみてみたくて毎日ここにきてたんだ!そこにアリスさんが落ちてきたの!」

「そうか・・・。まて、先生は最初この惑星について知らなかったのか?」


アリスはヒューの言葉を柔らかな表情で聞いていたが、途中の言葉にわずかな引っ掛かりを覚えヒューを止めた。


「うん。そうだよ。だからそんな惑星に出会えるなんてって言って僕に根掘り葉掘り。それで自分のことを先生って呼べって言ってきたんだ。」

「待て、ここは未開発の宇宙空間のはずだ。CAPはそこまで高度考えることができないはず・・・。もしかして、闇改造品か!!」


アリスの顔は喜色を隠しきれていなかった。熱い目線を先生に向けた後、ヒューと目を合わせて大声を出した。


「嬉しそうだけど、闇改造品だと何かいいことがあるの?」

「いいことどころじゃない!もしかしたら宇宙に行けるかもしれないぞ!!ヒュー!!闇改造品ならおそらく汎用人工知能に近い性能をしているはずだ。この宇宙船を直す知識を持っているかもしれない!おそらく、先生がしゃべらないのはエネルギー不足だ。機体の中に疑似太陽ライトがあるはずだから、ちょっと待ってくれ。ここは光がなかったから充電できなかったんだな。」


そうしてアリスは地面に突き刺さったままの機体をあさり始めた。


「え!宇宙にも行けるし、先生もまた喋れるようになるの!」

「ああ!そうだ!あったぞ!!ライト!こうして少し光を当てればすぐに動き出すだろう。その間にヒュー、なんでもは言い過ぎだが答えられる限りで質問に答えるぞ。どんどん後回しになってすまなかったな。」


アリスの顔は先ほどよりかなり安心しているのが目に見えて分かった。先程の落胆している様子とは違い、自身と全く違う境遇の少年が何を聞くのか純粋に気になっている様子であった。


「じゃあまず宇宙軍について知りたい!軍は知ってるよ!何かがあったら戦う人のことでしょ!これも先生がこの惑星に軍がないか聞いてきて知らないって言ったら教えてくれたんだ!」

「君は本当にいろんなことを先生から教えてもらったんだな。さっき同盟については話しただろう?主要惑星は37あるといったがあの中でも、特に力を持った惑星が5つある。その惑星5つが戦う目的だけでなく宇宙探索、物資配達などの様々な目的のために共同で軍をもったんだ。まあ共同といっても第何軍かで惑星ごとに分かれているからあまり共同とは言えないんだが。」

「その5つってどんな惑星なの?」


ヒューが首をかしげる。アリスは5本の指を出し、国の名前とともに1つずつ数え始めた。


「1つ目が、科学大国<ステーメイ>。宇宙同盟以前より科学技術が進んでいて、宇宙同盟のリーダー的存在なんだ。私の出身の出身はここだ。たぶんヒューが見たらこの惑星とのあまりの違いに驚くぞ。2つ目が大帝国<アパテイア>。かつて領地を争い常に各地で戦争状態だったが若き帝王が数年で惑星統一を果たし、今は情勢が安定している。有人惑星を本格的にさがしだしたのはこの惑星が最初で、この惑星が<ステーメイ>を見つけたのが、初めての有人惑星同士が出会った瞬間だといわれている。3つ目が貴族大国<アリスト>。身分主義がはっきりとしていて、奴隷はいないものの、貴族第一主義ではある。名前が似ているが、私とは何の関係もないぞ。4つ目が商人大国<クレマン>。ありとあらゆる惑星の人が集まり、主に貿易によって栄えている。華やかで楽しいところだ。5つ目が神聖大国<テオーラ>。ちょっと特殊な成り立ちで長くなるからこの国は今度詳しく説明するよ。さっき言った人工知能とかかわりがあるが、まあ不思議が多い惑星なのは間違いないな。以上5大国だ。」


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