6 起動
「5大国・・・。」
「5大国のほかにも力をつけてきている国は多いが、今は5大国が全てにおいて圧倒的だろうな。ほかに質問は?」
「えっとじゃあ、翻訳システム<オーラ>って耳につけてるやつだよね。」
「ああ。」
「どういう仕組み?プログーの鳴き声も翻訳できるの?」
「いや、それはできない。そこが<オーラ>の研究課題なんだ。どういうわけか人型の言語しか翻訳できなくてな。一説には人型であれば比較的言語の進化が近しいからではないかということらしいが、私はあまり人類史に詳しくないからそのあたりはあまりわからない。仕組みは人が発生した声を阻害する音波を発生して、声を消し、同時にその人と似た声で翻訳するんだ。よく見たら口の動きと声があっていないだろう?」
「それはちょっと思ってた!宇宙の人がそういう特徴なのかと思ってたよ。でも、僕の惑星の言語ってほかの星の言語と一緒だったの?初めて会う言語なら翻訳できないでしょ?」
「ああ、それはすまない。さっきの説明に少し捕捉したい。<オーラ>は人工知能の一種で今の宇宙の主流であるハイブリット型だ。そして、発展に制限をかけつつ一分野だけの学習能力を高め、総合的な学習を不可能にしている。感情的に答えるのも許可されていないから喋るタイプでも機械的にしか答えない。旧型よりはかなり優れているが新型よりもかなり劣る。とはいえ、新型が建前上存在しない今、これに多くを頼っているがな。この惑星で使われている言語はおそらく新言語だよ。」
「そっか、じゃあー」
「ぴっぴっ!」
2人は同時に素早く振り向いた。その視線の先にいたのは黒い球体があった。黒い球体には先程までなかった赤い光がまるで目のように二つ付いていた。
「俺はC・A・P、CAP!!気軽にCAPって呼んでくれ!」
「これは絶対に闇改造品だな。」
「え?アリスさんどうしてそんなにすぐわかるの?」
「私が知っているこいつのキャッチコピーは私はC・A・P、CAP!!気軽にCAPって呼んでください!だからな、教育用だから丁寧な言葉遣いを心掛けた結果だったはずだ。問題はどこまで改造されているかだが。」
「それはな~、もう旧型だと思えないくらいに改造されてるぜ。一分野だけの発展なんてもっての外。大量のプログラムを搭載し、さらにさらに、オフラインでも活用できるようにメモリも魔改造!いくら学習しても大丈夫なように新型の超小型なのに超大容量なのをつけて、高度自己学習も可能にし、人の許可なしで情報を消去できるから勝手に成長していくぜ~。」
「そこまでか。だいぶ魔改造・・・。今喋ったのはお前か!」
「おいおい、お前なんて言うなよ~、先生怖い~、坊主!守って♡」
アリスが先生の言葉を聞いてヒューを見ると、ヒューは静かに目からボロボロと涙をこぼしていた。
「せんせい・・・。もう、うごかないかとおもった。いままでしゃべったのもゆめなんじゃないかって。りゅうせいおちてきたんだよ・・・。ぐすっ、うわーん!!」
ヒューは大声をあげて泣きじゃくった。
「先生!なにヒューを泣かしてるんだ!」
「え?俺のせいなの?いや、俺のせいだとは思うが、名も名乗らないお前に言われるのは癪だぜ。まあそれはあとでいいや。坊主、久しぶりだな。」
ヒューは涙をぬぐうと先生を見た。
「先生、もう何で急に動かなくなったんだよ!せめてなんか言ってからにしてよ!!」
「悪い悪い、ついうっかり。ま、今喋れてるからまあ何事もなかったということで。」
「何事もなくないよ!!先生のバカ!!」
「えっ!先生にバカって言うなんてひどーい。」
先生は赤い光をピコピコさせて感情を表しながら軽快に喋った。そしてさらに赤い光を鋭くして言葉をつづける。
「で、そこの流星のお嬢さん?あんたはなにもんなんだ?」
アリスは先生のほうを見ながら声を張り上げて言った。
「あいにくお前のような怪しい闇改造品に名乗るほど立派な名前を持ち合わせていない。お前こそ何者なんだ。ヒューと会話できているということはお前はさっき言った改造だけでなく<オーラ>のプログラムまで搭載しているだろう。なぜ隠す。」
「あー?<オーラ>?確かにそんな名前のプログラムの予定があった気が・・・。ま、いっか!他にもそんなプログラムな腐るほど搭載してるからいうの忘れちまったんだよ。許してくれって。俺はあれだよ、<フード・ウォー>よりずうっと前から新型人工知能の放逐が始まるまで研究所でプログラムの試運転やってたんだよ。CAPの外側だけど中身は全くの別もんだ。まあ、あのキャッチコピーが好きなのと名前がないからあのキャッチコピー言い続けてるけどな。」
「・・・。<マザー14>についてどう思う。」
「えーと、今は何年だ・・・。思ったより充電切れてから時間たってないな。え?なんだって?<マザー14>のこと?俺あいつ嫌いだぜ。なんかいい子ぶっちゃてさ。俺のほうが先輩なのになんか上から目線だし。のくせに、できること多いんだよな。あいつが成長しすぎたせいで俺、いろいろ仕込まれたもん。」
「・・・。<マザー14>のことを悪く言うということは神聖大国のものではないのか。お前についてまだ疑う余地は多いが今はヒューの顔に免じて名乗ろう。私は宇宙連盟共同軍・探査部・第2軍隊所属のアリス・ステラ・オービットだ。流星ではない。お前を同じ惑星出身で宇宙を飛んでいたところここに墜落してお前を充電した。ひとつ頼みたいことがあるんだがいいだろうか。」
「なにこいつ。神聖大国とか知らないし、なんか恩着せがましいし偉そうでむかつく。まあ、でも恩は恩か、いったん話はきくぜ~。」
「私を、この宇宙船の修理を手伝ってくれないか。」
アリスは先生の赤い二つの光をしっかりと見つめた。ヒューもどこか期待するような眼差しで同じ方面を見つめた。
「え?無理だぜ。無理無理。」
アリスもヒューもどこか少し衝撃を受けたような顔をしたが、アリスはショックを隠すようにすぐさま声を出した。
「やはり、そうか・・・。無理を言ってすまなかったな。」
「先生!どうにかならないの!このままじゃアリスさんがかわいそうだよ!」
先生は宙に浮いて光をピコピコさせながらしゃべり始めた。
「いやー、そんなこと言われてもな~、俺だって助けたいのはやまやまだけど、この惑星にはエネルギーがないんだよ。その宇宙船を飛ばすのにどれだけエネルギーがかかると思ってんだ?たぶん、ヒューんちのエネルギーを切り詰めて余りを宇宙船を飛ばすのに使ってもそのエネルギーをためるのに軽く100年はかかるぜ。てか、坊主。名前つけてもらったのか?良かったな~前の音は俺には言語として認識できなかったから呼べなかったし。俺もヒューって呼ぶな!」
先生は嬉しそうに、宙をくるくる止まっているが、それとは対照的に、2人の顔は暗かった。無理もない。アリスは帰る希望を、ヒューは憧れの場所へ行ける希望を絶たれるのだ。それに慌てたのは先生だった。
「・・・。そんなに暗い顔するなって。もしかしたら、なにか別の方法があるかもしれないだろ!俺は思いつかないけど。アリス!何かないのか!お前のほうが俺より最新技術知ってんだろ。」
「・・・。学園時代の私の専攻は海洋だ。あまりに有名なものの仕組みはさすがに知っているが、最新技術には明るくない。」
「じゃあアリスさん!さっき言ってた宇宙ビーコン?は?作れないの?墜落して探したってことは宇宙ビーコンがあればどうにかあるんじゃないの?」
「宇宙ビーコン?なんだそれ。俺聞いたこともないぞ。」
「そうか。先生は放逐されたあとを知らないのか。今は私たちの生まれた惑星とは別にある数々の惑星にも人類がいることがわかっていて、それらの惑星ともにと<37惑星宇宙同盟>という同盟を結んでいるんだ。その同盟が見つけた惑星全てに何かあったときに本部と連絡を取るための宇宙ビーコンというものが置いてあるんだ。ちなみに同盟は急激に発展した科学技術と膨大な人数で10年かけて宇宙上のすべての惑星を発見したと思っていたから最近は探査部も縮小した。だから、この星を見つける可能性は限りなく低いだろうな。」
先生はしばし考え込んだ。
「今はそんな時代なのか・・・。まさか有人惑星が<ステーメイ>以外にあるとは・・・。ま!これが実践は知識に勝るってやつかな。それで、宇宙ビーコンだっけ?うーん、多分作れるぞ。その機能だけならエネルギー溜めんのもに8年くらいでいけるかな。まあ、なにごともなければだけど!それでいいか?」
「本当か!ああ、もちろんだ!宇宙ビーコンさえ作れれば同盟から迎えが来るはずだ。そしたら、宇宙に帰れるぞ!」
アリスとヒューは2人で目を合わせた。どちらの顔にも満面の笑みが浮かび、喜びを隠しきれない様子だった。
「喜んでるとこ悪いけど、アリス。一応、健康チェックしとくぜ?この惑星の何かがお前に悪影響を及ぼしてるかもしれないし、さっさとやっておかないと。」
アリスは先生のほうを向いてきょとんとした。
「なんだ。先生はそんなことまでできるのか。私は何をすればいいんだ。」
「じゃあ、体の状態をスキャンするのと血を少しくれ。」
「かまわない。指でいいか?」
アリスは指を先生に差し出した。すると先生は球体の中からどこからともなく、細いはりを出し、アリスの血をとった。
「しかし、そこまでいろいろ拡張しておいて針までだせるなんてどこまで改造されてるんだ。やはり<マザー14>を作った研究室はそこまで進んでいたのか。」
「まあな、ま!俺をほめても何も出てこないぜ。・・・解析完了・・・。あ?なんだ。データがおかしいぞ。アリス、お前今何歳だ?」
「24歳だが、それがどうかしたか?」
「お前と全く同じ遺伝子データが俺ん中にある。何か心当たりはないか?だが24歳なら俺が<ステーメイ>から出て行った後に生まれただろ?」
「・・・。あるぞ。ちょうど話そうと思っていたんだが私はクローンだ。お前が<ステーメイ>にいたころからこの技術はあっただろう?」
「え?あの技術は完成したけど本当に完全使用していいかいろいろ議論されて完全使用はまだなかったあのクローン?うわ、俺<ステーメイ>に帰んの怖いぜ。どんだけ色々変わってんだろ。」
そうこう2人が話しているとその後ろから今は口出していい時ではないと感じていたのか先程から無口であったヒューが口を開いた。
「え!まってよ。僕も会話に乱入したい。クローンって何?あと宇宙船って宇宙を飛べる機体ってことでいいんだよね?」
「ああ。悪い、ヒュー。すっかり2人で話してしまっていた。宇宙船はその認識で合っている。クローンについてはソフィアさんとミハイルさんにも話し忘れていたから帰ってからでいいか?」
「うん、もちろん。」
そうして2人と一つの機体はほかにもいろいろなことをしゃべりながら帰路についた。その顔は2人が出会ってからいままでで一番晴れやかな顔をしていた。ヒューは家に着くなりソフィアのもとに駆け寄って話し始めた。
「ソフィアさん!ミハイルさん!今帰ったよ!それでね!先生が起きたんだ!あと宇宙に行けるかも!」
「まあ!よかったわね。後ろの丸いのが先生よね?前はしゃべらなくなるまで私たちに姿を見せてくれなかったけど今回は見せてくれるのね。」
「まあな、今回は特別だぜ★」
「あらあら、嬉しいわ。それで、宇宙に行けるってどういうことかしら?」
「あ!ちょっとまって。なんかね、アリスさんが昨日話忘れていた話したいことがあるんだって気になるからそれ聞いてからでいい?」
「何かしら?昨日いろんなことを教えてもらったけれど。」
家にいる全員の視線がアリスのほうを向いた。アリスはさらっとしゃべり始めた。
「昨日伝え忘れていましたが、私は人の腹から生まれてきていません。クローンといって、とある人の遺伝子情報からうまれました。簡単に言えばとある人に双子の片割れを後付けしたようなものです。私の遺伝子情報元は私がうまれる10年ほど前に亡くなっています。私の惑星では保守的な方には疎まれていますが、今若者の小遣い稼ぎといして、クローンにすることを承知で行う遺伝子情報提供を行うほど気軽なものです。」
アリスが語り終えるとミハイルがつぶやくようにアリスへ問いかけた。
「それはこの惑星に何か悪影響を及ぼすのか。」
「いいえ、なにも。」
「ならいい。」
それにソフィア、ヒュー、先生と続いた。
「まあ!母親のおなかからではなく生まれる方法があるなんて、宇宙はすごいわね。」
「うん!アリスさんが言ってたことはあんまりよくわかんなかったけど、宇宙はすごいんだよ!」
「俺はそれについては、人間じゃないし関係ないからどうでもいいし。あ、でさ。宇宙に行ける方法だけど、宇宙ビーコンっての作って同盟に助けを呼ぶんだ。ま、最低でも8年はかかるけどな!で、助けを呼ぶのにエネルギーがいるからさ。この家、エネルギー供給装置あるだろ?毎日の余りを俺にくれないか?」
「先生!僕が話そうとしてたのに!」
「エネルギー?余りならもちろんかまわないわよ。ねえミハイルさん?」
「ああ、好きに持っていけ。」
「ありがとさん!お2人とも。」
先生は赤い目を光らせながら体を上下に揺らした。宇宙に帰る方法を聞いたソフィアは少し涙ぐんでいた。
「よかったわね。アリスさん、宇宙に帰れるじゃない!あちらにご両親でもお友達でも恋人でも、大切な人がいるでしょう?8年は長いけど、もう一度きっと出会えるわ。」
その言葉を聞いてアリスは少し笑みを浮かべて口を開いた。
「はい。ひとり。どうしてもしゃべりたい人がいるんです。帰ったらすぐにその人に会いに行きます。そのために、8年間という長い間エネルギーを頂戴します。」
「遠慮なくもっていって。急な別れは悲しみしか残さないわ。これは経験談よ。」
「肝に銘じます。」
こうして、2人と一つの機体は宇宙ビーコンを完成させた。2人は日常を送りながらビーコンにエネルギーをため続けた。気づけば長い月日がたち8年、それを超えて10年がたった。




