36 立場
「え・・・。」
「しっかりして、ヒュー。」
エマが強くヒューの肩をつかむ。
「これは起こってしまったことなの。もう過去なの。」
ヒューがエマの腕をつかみ返す。エマを見上げる目からは涙が流れていた。笑わず、叫びもせず、ただ
、黙って涙を流し続ける。
「ヒューは知らないかもしれないけれどこれまで何度も同盟は虐殺を行ってきた。同盟はもう大きくなりすぎてもはやそうすることでしか延命できないの。歴史をだまして、ここまで来たけど、五大国の一つが五大国をつぶすのなら、もう同盟は終わるかもしれない。」
「お前は名目上であろうと貴族だ。・・・ここからどうする。」
「どうするって・・・。」
アランがヒューと見つめあう。
「今のお前は後ろ盾が何もないただのマトだ。ここに残って大帝国のやつらの友人から恨まれるか?それとも大公のところに向かって飼い殺しになるか?悪いが俺たちは何もできない。そこまでの権力はないぞ。」
「・・・。」
ヒューはなにも言わずただ俯いたままだ。アランはヒューを見て軽く息を吐いた。エマもヒューを心配そうに見つめる。しかし、2人もこれ以上何か言うのは下手な慰めにしかならないと分かっていた。
「まあ、今日はこのまま部屋にこもっとけ。どうなるかわからないし。・・・ちゃんと考えておけよ。」
「ヒュー。アリスさんにはこっちからも連絡取ってみるから。・・・じゃあね。」
2人がドアを開ける。そのドアの前には人だかりができていた。その人だかりの中にいた1人の男が声を上げる。
「あいつは貴族だろ。」
「・・・それがどうかしたか。」
アランが言葉に答えた。その瞬間男がアランの顔を殴る。その場は騒然とした。やめろ!という声やもっとやれという声、さらに殴ろうとする男を羽交い絞めにする人々。
「人の顔を突然殴ってどうした。」
「どうしたじゃないだろ!!あいつを殺せ!そうしなきゃ釣り合いが取れない!!」
場が静まり返る。ここにいるだれもが1人くらい大帝国の友人を持っているし、男の言葉を理性で飲み込んだものも多い。そして、いまだ床に転がる数多の死体。その死体の匂いがさらに彼らをヒートアップさせる。
「なんで、あいつは生きているんだ!ここにいる貴族はあいつだけだ!あいつが仕組んだんだろう!」
「ちょ、お前いったん黙れ。落ち着けよ。」
「でもそいつの言うことも一理あるだろ!!」
「そうよ!!」
「今はそんなん言ってる場合じゃないだろ!」
「じゃあなにするのよ!」
全員が何かをいい、その場はしっちゃかめっちゃかである。アランとエマが何かを言おうとしても誰かの声にかき消され、もはや収集が付かない。
「ねえ!聞いて!」
「だいたい、大帝国が弱ったときに経済的に搾取したのは<ステーメイ>だろ!」
「は?何それ、私たちが悪いってこと?」
「お前ら落ち着け!」
「そんなん言ったら<クレマン>だって、不利な条件で契約しまくってただろ!」
「うるさい!!」
「お母さん・・・。怖いよ・・・。」
ヒューはドア越しにその声を聞いていた。ときどきドアをたたく音や怒号、泣き叫ぶ音が聞こえる。
「・・・。僕は・・・。」
すると突然ドアが開いた。
「は・・・?」
それはただの板一枚でありながら互いを分ける絶対的な境界線であった。ヒューと皆が見つめ合う。誰も動くことができなかった。先程まであれだけヒューに敵意を向けていた人も頭ではそれがいけないことだと分かっている。誰もが心に恐怖を抱いた。なぜ扉が開いたのか。それがわかるのはすぐだった。
「お前が!!」
廊下から走ってくる音が聞こえる。
「やめてください!!!」
遠くから教員が走ってくる。先頭、いや、皆に追いかけられている教員は手にマスターキーを持ち、般若のような表情でヒューの部屋までかけてくる。後ろの教員も血まみれで目が真っ赤なもの、泣いているもの、さまざまである。ついに先頭の教員がヒューの部屋にたどり着く。ヒューはそれを怯えた目で見つめる。
「俺の妻を!!」
「やめて!!!」
ヒューが目をつむった。しかし、衝撃はやってこない。恐る恐る目を開けるとそこにはククルカニャンが立っていた。
「ファン殿に連絡した。もう少しで同盟軍が付く。これは俺たちの間で解決するべき事案じゃない。ひとまず国ごとに別の場所で待機しよう。」
申し訳ありません。投稿遅れました。
今後も2日に1回投稿を頑張りますが、投稿遅れることがあるかもしれません。
ご容赦いただけると幸いです。
文も短文続きで拙いですが今はストーリーを進めます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いいたします。




