34 さよなら?
「えっと、アリスさんが指定してる店は・・・。ここか!」
ヒューはアリスから送られてきたメッセージを読みながらヒューはとある店にたどり着いた。カランコロンという音とともに扉が開く。中にはアリスが座って珈琲を飲んでいた。
「アリスさん!」
「ああ、ヒュー。元気にしていたか?」
「もちろん宇宙科に入って今は研究内容探してるとこ。」
「そうか、私の時は宇宙科は人気だったが・・・今はどうだ?」
「うーん、僕合わせて二人でそんなに人気じゃ・・・。まあ、それはいいの!用事ってなに?今日は家じゃないんだね。」
その言葉を聞いて、アリスは気まずげに目をそらした。
「いや・・・。」
「わかった!どうせ部屋がもう汚くなってるんでしょ?今から掃除しようか?これから僕、時間あるよ。」
「違う・・・。」
「違うってなにが?」
「もう、家は、ない。」
ヒューはアリスが頼んでいた珈琲を自分のカップに注いでいる姿のまま固まった。珈琲がカップから少しあふれた。
「ない、って・・・。」
「・・・言葉の通りだ。」
「どういうこと・・・。」
「私はあと少しで戦場にでる。そのために家はいらない。」
アリスが横に置いてある布巾で零れた珈琲を黙ってふき取った。
「戦場に行く?」
「ああ、今日から家族にだけ言っていいとのことだ。これも同盟軍の倫理感が変わった結果だな・・・。」
「そんなこと聞いてない!!・・・もしかしてあの<アリスト>のことの?」
アリスがヒューをちらりと見る。
「・・・知っているのか?」
「・・・噂くらいなら。あと、一年前の夜会の2人が学園から・・・。」
「ああ、なるほど。」
「なるほどじゃない!!アリスさんなら断れるでしょ!!だって、アリスさんは<宇宙の英雄>なんだから!!」
ヒューは目から大粒の涙を流している。アリスはその様子を黙って見つめた。
「すまない。」
「謝ってほしいわけじゃない!!」
「わかっている。」
「わかってるならなんで!!ソフィアさんも!ミハイルさんも!みんな!僕のところからいなくなる!家もなんで売っちゃったの!!」
アリスが横に置いてあるミルクを珈琲に入れかき混ぜる。目線は会わない。
「すまないな。あの家はお前にとっても実家なようなものだったか。それなら嬉しいものだ。ただ、もしそうならばなおさら悪かったな。」
「違う!!もし・・・戦場に行くしかなくなっても!帰る場所はいるでしょ!!」
「・・・いらない。」
「帰ってこないつもりなの!」
「大丈夫だ。死なない。ただ、もし帰ったとしても旅に出ようと思っているだけだ。」
「・・・どうしても、戦場に行かないといけない?<宇宙の英雄>なのに?」
「<宇宙の英雄>だからこそだ。」
アリスとヒューが見つめ合う。ヒューは必死に泣くのをこらえ、口を開く。
「<宇宙の英雄>にならない方が良かった?」
「どうだろう・・・、そうだな。たしかに、そうかもしれないな。」
アリスが目に手を当て、上を見上げる。
「英雄などならない方がいいのかもしれない。いや、そもそもいない方がいいのかもしれない。英雄となってもいいことばかりじゃない。」
「・・・。」
「今の言葉は忘れてくれ。・・・今日話したかったのはそれだけだ。死ぬことはない。それこそ私は<宇宙の英雄>だからな。最前線に出ることはないんだ。旅に出て落ち着いたら連絡するよ。」
「そっか。」
「ああ。今からは普通の話をしよう。幸い今日は私も時間がある。しばらく会ってなかっただろう?いろいろと話を聞かせてくれ。」
「・・・わかった。」
そのままアリスとヒューの時間は過ぎていく。
「もしかしたら、この戦いの影響で何か困ったことがおきたらこの人物のもとへ訪ねてくれ。」
「この人は・・・。」
「この人は・・・私の古くからの知り合いだ。きっとヒューの頼りになる。」
「ありがとう・・・。」
「さあ、そろそろ別れの時間だ。学園まで送ろう。」
アリスとヒューはともに船着き場へ向かう。そこには懐かしい機体があった。
「これ・・・。」
「懐かしいだろう?」
そこにはアリスがアぺイロンに墜落した時に乗っていた機体とほぼ同じであった。
「もともとオーダー品だったんだが、もう一度頼んだんだ。」
「本当に懐かしい・・・。」
「こいつと旅に出るつもりだ。今度は墜落しないことを願うばかりだな。」
「もう!縁起でもないことをいわないで!」
「悪い悪い。さあ、乗ってくれ。」
2人は機体に乗り込む。機体はゆっくりと飛んで行った。
「そういえば、この機体の前の長い部分って宇宙スズメに止まってほしくて長いんだっけ。」
「ああ、その通りだ。私は宇宙スズメが大好きなんだ。」
アリスが少し恥ずかしそうに言う。
「アリスさんは知ってた?宇宙スズメの生態っていまだ知られていないらしいよ?」
「そうなのか?私はあまり生態などに詳しくなくてな・・・。そういえばヒューと出会った時も宇宙スズメを追いかけていたら墜落したんだった。」
「え?それでも好きなの?」
「宇宙スズメが悪いわけではないしな。相変わらず見ると嬉しい存在だ。」
「そっか。」
機体がゆっくりと学園の船着き場に着く。
「着いたぞ。それじゃあ、ヒュー。」
「アリスさん・・・。」
今日何度目であろうか。アリスとヒューが見つめ合う。
「絶対に無事に帰ってきてね。」
「・・・約束はできない。ただ、」
機体が浮き上がる。
「私もそうあれることを願ってるよ。またな。」
「絶対だよ!絶対!またね!」
機体が空へ浮かぶ。その期待からアリスが手を振るのが見えた。別れはいつでも唐突で短いものである。
申し訳ありません。しばらく忙しく、編集も先日宣言していた期間を過ぎているのに終わっていません。
また、出来る限り更新するつもりではありますが、しばらく更新がとまる可能性があります。10月には必ず更新を行いますので、よろしくお願いいたします。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いいたします。




