30 宇宙科
「宇宙科の研究室はここか・・・。」
次の日、ヒューは目を真っ赤にはらしたまま、ある部屋の前に立つ。そこは古びた木の扉に「宇宙」とかいてあるだけであった。
「今日から五大国とその他特例以外の生徒とも一緒になるのか・・・。いや、その前に生徒がいますよう」
「あれ?君、ここに突っ立ってどうしたの?」
そこには灰色の髪を持ったヒューよりも年下に見える少女が立っていた。
「え!あ、こんにちは。僕は今年から宇宙科のヒュー・アぺイロンです。もしかして、先輩ですか?」
その言葉を聞いて、少女は最初はきょとんとしていたが、すぐに笑いだした。
「違うよ~。私は今年から編入してきたグレイ。君と同じ3年生で宇宙科だよ。」
「編入生?めったにないって聞いてたから僕以外にいないと思ってたよ。」
「そんなことないよ。そっちの特別棟にいないだけ。」
「特別棟って?」
「そっちの五大国プラスアルファはこの年になるまで私たちと校舎の棟が違うでしょ?こっちではそう呼んでるの。」
「へえ。」
「ま、親交を深めるのは入ってからにしよ。先生を早く見たいし。」
そういってグレイは古ぼけた扉を開けた。
「あっ!」
「初めまして、先生。グレイと呼んでください。」
「・・・。初めまして、グレイさん。今年からの編入生ですよね。よろしくお願いします。」
「僕はヒュー・アぺイロンです。よろしくお願いします。」
「初めまして。ヒューさん。あなたも去年からの編入生ですね。よろしくお願いします。2人ともそこに座ってください。」
先生が指さした先には小さな椅子が2つ置いてあった。2人は指示通りにその椅子に座る。
「私も自己紹介しましょう。私は科学大国<ステーメイ>出身のゼロです。年齢は43歳。宇宙科の教師になって3年目。あなたたちは私が受け持つ初めての生徒です。」
ゼロは細めの眼鏡をかけた神経質そうな男であった。
「要するに僕たちに先輩と先先輩はいないってことですか。」
「そういうことです。」
「ゼロ先生。私たちは今日から何をすればいいんですか?宇宙で知られてないことってもうないですよね?」
「そんなことはありません。」
ゼロは眼鏡を押し上げながら答える。
「え?」
「例えば宇宙スズメ。あれらの生態はいまだ分かっていません。他にも神聖大国の成り立ちや<ゼウス>のプログラムの最終形態はどうなるのか。外野は宇宙について知り終わった。もう宇宙科は終わりだなどと言っている奴はただの間抜けです。」
「まぬけ・・・。」
「先生にしてはちょっと言葉が強すぎましたね。今の言葉を取り消します。」
「ゼロ先生。言葉は取り消せないよ・・・。」
「まあ、そこはあなたたちが何も言わなければいいだけです。あと一週間で研究内容を決めて私のところにもってきてください。決まらないようであれば私に相談に来てもらっても構いません。」
「はーい。」
グレイが手を挙げている。
「何ですか?グレイさん。」
「さっそくだけど相談していいですか。」
「いいですよ。何ですか。」
「それが、」
グレイがヒューの方をちらりと見る。
「ごめんけど恥ずかしいから30分くらい時間もらってもいい?」
「いいよ。じゃあ僕はその間図書室で研究内容考えとくよ。」
「ありがとー!助かる。」
ヒューはそのまま立ち上がって、出て行った。
「はあ。」
正直に言えば、ヒューの頭の中は昨日のアナスタシアの手紙のことでいっぱいであった。昨日のアランとエマの話、ライオネルトの態度、アナスタシアの手紙。すべてを重ねれば何か恐ろしいことが起こり始めている気がした。
「僕は何も知らない・・・。」
アリスに話そうかと思ったがアリスもどうやら最近忙しいようで連絡するのも気が引けた。
「宇宙・・・。僕が憧れていた宇宙は思ったより綺麗なものじゃなかったのかもしれない。」
そうこうしていると図書館に着いた。
「こんにちは、マダム。読むだけだけどいいかな。」
マダムが黙ってうなずく。初対面の時を考えれば頷いてくれただけでかなりの進歩である。
「ありがとう。あんまり長居はしないから。」
紙の本特有の独特なにおいがあたりに立ち込める。
「この匂いはやっぱり何か安心するな。えーと、宇宙関連の本は・・・。」
「調子はどうだ?」
後ろから背の高い男の影と声が降ってきた。
「ククルカニャン!久しぶり!」
「久しぶりだな。エマから宇宙科に行ったと聞いたぞ。どんな感じなんだ?」
「うーん、そうだね。2人しかいないのと上の学年にもその上の卒業した学年にも宇宙科の人はいなかったみたいで先生が持つ生徒は僕たちが初めてってとこかな。」
「それは大丈夫なのか?」
「よさそうな先生ではあったよ。今はもう一人の生徒が相談したいことがあるらしいから席を外してるんだ。ククルカニャンは?」
「俺はもう研究テーマを決めていたからすぐに先生に提出してその資料を調べに来たんだ。」
「あー、人類の身の回りの物だっけ。」
ククルカニャンはこぶしを握り締め熱弁した。
「そうだ!俺は自分の惑星を離れてこんなに便利なものが世の中に復旧しているんだと感動した!それについてもっと知りたい!」
「そっか、そんなに熱意のあるテーマが決まってるの羨ましいな。」
「ヒューはないのか?宇宙についてあんなに知りたがってたじゃないか。」
「そうだね・・・。そうなんだけど、僕にとって宇宙は何も分かっていない不思議なものだったんだ。それがほとんどもう解明されているっていうとなんかもう残りの不思議は暴いちゃいけないんじゃないかって思っちゃうんだ。傲慢だよね。」
ククルカニャンは黙ってその話を聞いていたが首を横に振る。
「いや、ヒュー。そんなことはない。俺も昔はそうだった。宇宙は不思議なものだと思っていたが、学園に入ると不思議なものでも何でもないといわれる、そのうち、宇宙に興味を亡くし、歴史の方に興味を持ち始めたんだ。」
「そっか。」
「ヒューは宇宙科だろう?なんなら宇宙の歴史とかでもいいんじゃないか?」
「それもいいね・・・。あと一週間あるからもう少し考えてみるよ。相談のってくれてありがとう。」
「ところでヒュー。」
「なに?ククルカニャン。」
「何があったかまでは聞かないでおくが顔が明らかに泣きはらした目をしているから何か言い訳を考えておいた方がいいぞ。」
「ん、ありがと。」
「じゃあ、俺は資料を集めてくるから。またあの店行こうな。」
「うん、楽しみにしておく。僕は少しここらへんで読んで戻るから。」
そのまま互いに手を振り分かれて行った。すると、腕の機器が震える。
「ん?」
そこには一件のメッセージが届いていた。
「ヒュー。今週都合が良ければ私のところへ来ないか?話したいことがある。来るなら迎えに行く。」
「話したいこと・・・?取り合えず行けるって連絡しておこう。・・・はあ、少し読んだらゼロ先生のもとに戻るか・・・。」
少し時間がたち、ゼロのもとへ戻るとグレイはいなくなっていた。
「失礼します。ゼロ先生。・・・あれ?グレイさんは?」
「彼女は今日着いたばかりのようで荷解きをするといって帰りました。伝言でお待たせしました。ありがとう。だそうです。」
「そうですか・・・。」
「彼女が帰ってしまったので図らずとも面談のようになってしまいましたね。少し話して解散しましょうか。」
「はい。」
「もう何を研究したいか決まりましたか?」
「あんまり決まってないです。いろんな人に相談して決めようかと。」
「そう決めるのもいいですね。」
「先生はなんの研究をされているんですか?」
「私は・・・秘密です。」
「なるほど・・・えっ?秘密?」
「機会があったらお教えしますよ。ん?すみません。呼び出されてしまったのでここまででいいですか?」
「もちろんです。今後もよろしくおお願いします。」
「はい、こちらこそ。一週間は決まるまで何を研究したいか探してくるだけでいいので必ずしもこの研究室に顔を出す必要はありません。それではまた今度。」
ゼロはあわただしく去っていった。
「いったん、部屋に戻るか・・・。」
文字数を増やすといっていたのにまったく増やせておらず申し訳ありません。
ですが、区切りが今のままで良さそうなので文字数は今後このままでいくかもしれません。
また、個人的に忙しく次の投稿は14日ごろとなるかもしれません。
余裕があれば予定通り投稿いたします。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。




